J1リーグ2024シーズン
仲川輝人インタビュー(FC東京/FW)◆後編
前編◆FC東京・仲川輝人が語る「F・マリノスとの違い」>>
――横浜F・マリノスからFC東京へ移籍して2年目となる今季、チームをよりよくしていくために、仲川輝人選手ご自身が意識していることはありますか。「昨年からですが、今年はミスした選手に対して、少し厳しく言うようにしています。
また、ちょっとした意識づけじゃないですけど、パスをどっちの足で受けるかとか、『トラップひとつで、次の動作、次の展開が遅くなるよ』と、目についたことを伝えるようにしています。そういう細部にこわだって個々の質を上げていかないと、チーム力が上がっていかないですし、昨年のように調子の波が大きくなって勝てなくなったりするので」
――「勝利の神様は細部に宿る」とよく言われます。
「細かいことにこだわってプレーしていると、それがすごく試合中に活きてくるんです。試合では、相手のプレッシャーがかかってきて難しくなるので、それは練習から意識してやってできるようにしておくことが大事。
ミスについても、サッカーはミスが起こるスポーツですが、それをできるだけ少なくするのが、プロサッカー選手として重要なところ。
昨シーズン、FC東京は42得点、46失点だった。優勝したヴィッセル神戸は60得点、29失点、2022シーズンに優勝したF・マリノスは70得点、35失点だった。優勝チームと比べて、得点は20点ほど少なく、失点は10点以上多い。結果を出すためには、攻撃よりも守備を整備するほうが確実性は高いが、FC東京は攻撃的なスタイルを標榜している。仲川は攻守のバランスについて、どう考えているのだろうか。
――昨シーズン、FC東京の得点は42、失点は46でした。
「42得点はかなり少ないので、これでは優勝争いはできない。今シーズン、攻撃でいえば、60得点以上が必要でしょう。それで、昨年2位のF・マリノスの得点(63点)と同じぐらいになるので、優勝争いをしていくためには、そのくらいは取らないといけない。
失点も多いので、そこを減らすことは大事ですが、僕は点を取られたら取り返せばいいと考えています。失点については、あまりくよくよ考えず、『まぁいいか』というぐらいの気持ちで、その分、しっかり点を取っていけば試合に勝てますから」
――点を取るために、攻撃の部分で意識していることはありますか。
「ペナルティーエリア内のポケットを攻略することを徹底してやっています。そこをうまく使うことで、チャンスが作れますし、得点の可能性が広がるので、ピーター(・クラモフスキー監督)も口を酸っぱくして言っていますね。
あと、ウイングからクロスを入れる時、3、4人がボックスのなかに入っていきます。その際、逆サイドのウイングも(クロスに)突っ込んで合わせていくのですが、大事なことは絶対に遅れないこと。遅れると、当然ですが、チャンスにならないので、そこも詰めるように言われています」
――クロスに対して、ゴール前に突っ込んでいってタイミングを合わせるのは、決して簡単なことではないと思います。
「逆サイドの選手はスプリントして入っていくのですが、僕はF・マリノスでやっていたので、タイミングがわかるし、(遠藤)渓太もF・マリノスで経験しているので、問題ないです。
――その辺りは、チームのミーティングなどで徹底したりしているのでしょうか。
「クロスに入っていくタイミングをはじめ、(相手の)裏を取るタイミングとか、コンビネーションとか、ピーターが映像で見せてくれています。それをみんなで共有できているので、かなり理解が進んでいます。あとは、試合でやれるかどうか、ですね」
――チームとして、昨年の反省を踏まえて取り組もうとしていることはありますか。
「シーズンを通して、いかにチームの一体感を築いていけるか、それをテーマにしています。
でも、たとえば試合前の紅白戦に出られないでふてくされてしまうとか、ムカついた態度を表に出してしまう選手がいるとします。そうなると、チーム全体によくない雰囲気が広がっていってしまう。
僕もケガをした状態でF・マリノスに入って、最初はほぼ練習に参加できなかったので、そういう選手の気持ちはよくわかるんです。ただ、そこから這い上がっていくには、やっぱり腐らずに練習をすることが大事なんですよ。
――控えの選手の突き上げが選手層を厚くし、チーム力になっていきます。
「そうなんです。紅白戦に出られなくても、練習のなかで自分を表現しつつ、一つひとつのプレーを丁寧に、質を上げてやっていくことが、自分のパフォーマンスの向上につながっていきます。
そうして、試合に出て、勝っていけば(チームも)盛り上がりますし、みんなが自然と同じ目標に向かって戦っていくことができる。そうすることで、(チームに)一体感も生まれてくる。そうなったら、最後にこれまでと違う景色が見えてくるんじゃないかなと、僕は思っています」
今季開幕戦、セレッソ大阪との試合は2-2のドローに終わった。チームは今季、リーグ優勝を目指し、そのために仲川には、MVPを獲得した2019シーズンの33試合15ゴール以上の活躍が期待されている。それにプラスして、ディエゴ・オリヴェイラが昨年並みにゴールを挙げることができれば、目標となる60得点に近づき、優勝争いを展開できる可能性が広がるだろう。
――今シーズン、チームとしての目標を聞かせてください。
「J1リーグ優勝です。そのために僕は来たので。優勝するためには、僕ら前線の選手がしっかりと点を取らないといけない。毎試合2、3点取って、勝ちきれるようにしていきたいですね」
――優勝争いをするにあたって、負けられないチームはありますか。
「どのチームにも負けられないですが、まずはF・マリノスですね。昨年は、ひとつも勝てなかったですし、内容的にも『やられた』という感じでした。
神戸にも負けられない。昨年はアウェーで負けましたし、国立競技場での試合(第25節)はアディショナルタイムにPKで追いつかれたあと、再度突き離したのですが、また最後に追いつかれて引き分け。この試合は、ほぼ勝ちに手が届いていたゲームだったので、本当に悔しかったですし、自分たちの詰めの甘さを感じました。
優勝を争う上位のチームは、そういうところで負けない。そういったキワキワのところでも勝てるチームになっていかないといけないですし、この2チームには昨年の借りを返して勝っていかないと、優勝には届かないと思っています」
――個人的な目標はどこに置いていますか。
「やっぱり2019年以来のふた桁得点ですね。それに今年は、ふた桁のアシストをして"ダブル・ダブル"を目標にしています。1年目がまったくだったので、今年はそのくらいやって、なおかつチームを引っ張っていく。それぐらいの責任感を持ってやらないといけないですし、自分のゴールでひとつでも多くの勝利に貢献したいです」
――神戸の大迫勇也選手、武藤嘉紀選手、F・マリノスのアンデルソン・ロペス選手など、上位の強いチームには点取り屋がいますが、そういった存在を意識していますか。
「神戸は昨年、サコ(大迫)くんとよっち(武藤嘉紀)のふたりで32点取っているんですよね。今年、うちは僕とディエゴを含めた前線の選手で40点以上取っていきたい。そのくらい取れる前線にならないと、相手に脅威を与えられないし、優勝争いにも絡めない。
僕自身は、得点王とMVPを獲りたい。たぶん、みんなもそれを狙っていると思いますが、優勝するために、今シーズンはそのふたつを獲る覚悟で戦っていきたいと思っています」
(おわり)
仲川輝人(なかがわ・てるひと)
1992年7月27日生まれ。神奈川県出身。FC東京所属のFW。2015年、専修大学から横浜F・マリノス入り。2016年にFC町田ゼルビア、2017年にアビスパ福岡と、いずれもシーズン途中に期限付き移籍。2018年、横浜FMに復帰して9ゴールを記録。翌2019年にはレギュラーの座を確保し、ゴールを量産。得点王に輝いてチームのリーグ優勝に貢献。MVPも受賞した。2022年、2度目のリーグ優勝を経験したあと、2023年にFC東京へ完全移籍した。