こういう試合は、内容の評価が難しい。結果次第で、まったく異なる解釈が可能になるからだ。

 パリ五輪アジア最終予選を兼ねた、U23アジアカップ。そのグループリーグ初戦で、日本は中国に1-0と勝利した。

 立ち上がりから圧倒的にボールを保持して中国を押し込み続けた日本は、前半8分にして早くも先制。しかも、左サイドのボールを右へと展開→右サイドバックの関根大輝がニアゾーンへ進入→一度相手DFラインを押し下げ、ボールウォッチャーにさせる→山田楓喜のクロスを松木玖生が仕留める、という実に鮮やかな先制ゴールだった。

「(自分が)深い位置に入り込むことを増やしていけば、もっと得点が増えると思う」(関根)

「(インカーブのクロスは)常に狙っていること。それが、最初のチャンスでゴールにつながってよかった」(山田)

「(山田の)カットインのタイミングでうまく(相手DFの)間に入ることできて、いいボールがきたので、あとはGKを見て、しっかりと流し込むことできた」(松木)

 3選手のコメントからもわかるように、先制点はそれぞれの狙いが合致した、完璧な崩しから生まれている。

 日本と中国との間には、技術的にも、戦術的にも大きな差があることは明らか。試合は日本が追加点を重ねながら、このまま危なげなく進むかに思われた。

 ところが前半17分、センターバックの西尾隆矢が相手選手へのヒジ打ちでレッドカードを受け、退場になったことで試合展開は一変する。

U-23日本代表がひとり少ないなかで貴重な勝ち点3をゲットも...の画像はこちら >>

 ひとり少なくなった日本は、完璧にゲームを支配していた序盤がウソのように、ボール保持すらままならなくなり、防戦一方に。その展開は、ハーフタイムを挟んだ後半も概ね変わることがなかった。

 キャプテンの藤田譲瑠チマが「得点して、レッドカードが出るまでは、本当に自分たちがボールを握っていたし、試合が終わったあとにロッカールームでも話したが、『(勝つだけでなく)何点取れるかが勝負』みたいな感じになりそうな展開ではあったなかでのレッドカードだった」と振り返り、「正直、難しいシチュエーションではあった」と語っているとおりだ。

 藤田が続ける。

「(劣勢のなかでも)まずはサイドで時間を作れたらいいなとは思っていたが、そこに持っていくまでが今日は少し難しかったかなと思う」

 ほとんどマイボールの時間を作れなくなった日本は、ただただ中国の攻撃をはね返すだけになり、カウンターの糸口すら見出せない時間が長く続いた。

 結果的に、危ういピンチが数多くあったわけではない。いくつかの決定機は、GKの小久保玲央ブライアンが防いでくれた。すると次第に、中国の攻撃が単調なものになっていったのも確かである。

 とはいえ、あれだけ自陣でプレーする時間が長くなれば、事故が起きる可能性は高まる。

ましてリードは1点のみ。日本がかなり危ない橋を渡っていたことは間違いない。

 特に気になったのは、余裕を持ってボールを奪い、攻撃に転じることができそうな場面でも、パスミスが出たり、互いの意図が合わなかったりして、マイボールの時間を作れなかったことだ。

 ひとり少なくなり、虎の子の1点を守るべく割りきって守備を固めたにしても、あまりにも攻撃に転じる機会が少なすぎた。

 このチームの武器であるハイプレスがハマらない展開になったときの対応という意味で、従来から続く課題がこの試合でもまた表われた、と見ることもできる試合だっただろう。

 もしもどこかで失点して、引き分け、あるいは逆転負けという結果になっていれば、あんなに守備的に戦うからだと批判されかねない試合内容だったはずだ。

最終的に無失点で試合を終えることはできたが、そこには中国の拙攻に救われた、という側面が少なからずあった。

 もちろん、大会初戦で得た勝ち点3の価値が大きいことは、今さら言うまでもない。

「いくつか(相手の)チャンスはあったが、うまく守れていた。勝つことが大事だったので、そういった(苦しい展開が続く)なかでのゲームで、しっかり勝ったのは自分たちにとってデカい」とは、キャプテンの藤田。チームを率いる大岩剛監督もまた、「やれることとやれないことを、選手が明確に判断してくれた」と、10人になっても粘り強く戦った選手たちを称える。

 関根が「すごくいいチームになっているなと思うし、結果もついてきて、こういう大会は勝つことで、次につながっていくと思う」と語るように、こうした短期決戦では初戦の苦戦が良薬となり、その後の好結果につながるケースも珍しくはない。

 しかしその一方で、年明けのアジアカップでは日本代表が初戦からの悪い流れを変えられないまま、結局は準々決勝で敗退してしまったことは、記憶に新しいところである。

 幸先のいい白星スタートも、素直に喜ぶのは難しい。