ヨーロッパリーグ準々決勝第2戦。大会前から大本命に挙げられていたリバプールは、第1戦でアタランタに0-3と敗れていた。
2018-19シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)準決勝バルセロナ戦(第1戦3-0、第2戦4-0)。そしてもうひとつはミランと対戦した2004-05のCL決勝だ。前半を0-3で折り返しながら同点に追いつき、延長PK戦を制した一戦である。
バルサ戦(第2戦)の先制点は開始7分。リバプール戦の1点目は後半9分だった。
逆転の可能性を告げる最初の笛が吹かれたのは開始5分だった。右サイドバック(SB)トレント・アレクサンダー・アーノルドが蹴り込んだセンタリングが、アタランタの右ウイングバック、マッテオ・ルッジェーリ(U-21イタリア代表)の手に当たると、フランス人の主審フランソワ・ルテシエ氏はハンドの判定を下した。モハメド・サラー(エジプト代表)がこれを決めると、差は2点に詰まった。大逆転はあるのか。
アタランタは3-4-1-2で戦うチームだ。
このサイドにおける数的な優劣は、ピッチ全体の流れに波及しやすい。3-4-1-2は、たとえば3-4-2-1に比べて、相手ボールに転じた瞬間、サイドの選手が2人の状態になる5-4-1で構えにくい。サイドで後手を踏みやすい布陣であるため、使用率はかつてに比べ激減した。
リバプールは、サイドで数的優位な状況になりやすい布陣の利点を活かして戦えば、差は詰まる。
【冷静さを欠いたリバプールの攻撃】
一方、スタメンに遠藤航の名前はなかった。不動のスタメンになりつつあったかに見えたが、ユルゲン・クロップ監督は、大逆転を狙うこの一戦に守備的な遠藤はそぐわないと判断したのだろう。実際、遠藤は第1戦で、0-2とされた後の後半31分、ベンチに下がっている。遠藤のポジション=アンカーにはアレクシス・マック・アリスター(アルゼンチン代表)が、インサイドハーフから1列降りる形で座った。
2点差を追いかけようとしたとき、守備と攻撃の比重がざっと7対3の関係にある遠藤をピッチに置いておくと、攻撃に弾みがつかない。0-3で迎えることになったこの第2戦ではなおさらである。この日もアンカーにはマック・アリスターが入った。
遠藤に出場機会が訪れるとすれば、リバプールが同点に追いつくか、逆転した後に限られる。そう考えるのは自然だった。
結論を言ってしまえば、訪れなかった。
アタランタの前の3人(3-4-1-2の「1-2」)が真ん中に固まらず、ワイドに3FWっぽく構えたことも見逃せない。リバプールの両SBはその動きに牽制された。
なかでもセンスが光ったのがトゥーン・コープマイネルス(オランダ代表)だ。表記上は2トップ下だが、実際は左右幅広く動き、持ち前のキープ力、突破力で存在感を発揮。左利きなのに左利きには見えない、懐の深い、進行方向が読まれにくいボール操作術でリバプールDFを慌てさせた。オランダ代表の同僚で欧州ナンバーワンDFの定評もあるフィルジル・ファン・ダイクでさえ、ギリギリの対応を迫られていた。
【元気がなかったサラー】
アタランタの勝因は守備一辺倒にならなかったことだ。ボール支配率はリバプールの64%対アタランタ36%だが、アタランタの反撃には威力があった。
リバプールは攻撃そのものにも迫力を欠いた。なかでもエース、サラーに元気がなかった。決めておかなければならない決定機は前半39分と後半11分の2度訪れたが、いずれも逃し、後半22分という早い段階でベンチに下がっている。
前日、CLの準々決勝で敗れたマンチェスター・シティ、アーセナルのほうが、強そうに見えた。CLという欧州のトップリーグの準々決勝で敗れるのは仕方がない話だが、欧州2部リーグというべきELの準々決勝で、リバプールほどのビッグクラブが人口約12万人のベルガモという小都市のクラブに敗れる姿は情けなく映った。
他の3試合の結果(合計スコア)は以下の通り。
ウェストハム(1-3)レバークーゼン
ローマ(3-1)ミラン
マルセイユ(2-2、PK4-2)ベンフィカ
準決勝の組み合わせは、ローマ対レバークーゼン、マルセイユ対アタランタとなる。内訳はイタリア2、ドイツ、フランス各1となる。CLと合わせた内訳では、ドイツ3、イタリア、フランス2、スペイン1となる。
いわゆる欧州の5大リーグの現在のUEFAにおけるランキングは、1)イングランド、2)スペイン、3)イタリア、4)ドイツ、5)フランスの順だが、上位と下位の関係は来季、接近することが予想される。
今季のCL、ELに出場した日本人選手は今季、14人を数えたが、これをもってすべての選手が姿を消すことになった。
遠藤の課題は、過度に「守備の人」と言われないようにすることだろう。攻撃的に臨むケースでベンチに下がることが常態化しないことを願いたい。