【MVPトリオのなかで大谷は"安打製造機"に】

「MLB史上最強」との呼び声があるロサンゼルス・ドジャースの1番から3番打者が、開幕から24試合を終えた時点で前評判どおりの活躍を見せている。

大谷翔平がドジャースのMVPトリオのなかで見せる新たな姿 元...の画像はこちら >>
 リードオフマンのムーキー・ベッツは、打率.355(ナショナル・リーグ2位)、6本塁打(リーグ2位タイ)、OPS1.103(リーグ2位)と打撃は絶好調。出塁率(.469)と得点(24)がリーグ1位で、先頭打者としての役割を十二分にこなしている。

 2番打者の大谷翔平も、本塁打こそ5本(リーグ9位タイ)と物足りなさを感じるが、打率(.368)と安打数(35)がリーグトップで、"安打製造機"としての新たな姿を見せている。日本人メジャーリーガーの安打製造機といえば、前人未到の10年連続200安打を達成したイチローの代名詞だが、大谷はイチローとは異なったタイプの安打製造機としてヒットを量産している。

 イチローの安打の多くがシングルヒットだったのに対して、大谷はおよそ半分が長打。二塁打(11)は堂々のリーグトップで、長打率(.663)もリーグ3位だ。強打者の指標であるOPS(1.094)もベッツに次ぐリーグ3位にランクしている。

 ベッツはショートという新しい守備位置にチャレンジをしており、大谷も新しいチームに移籍してきたばかり。

新たな環境でも、すぐに結果を出しているのは、本物のスーパースターならではと言える。

 3番打者のフレディ・フリーマンは、「スランプ」とデーブ・ロバーツ監督が指摘するように、ここまで期待に応えているとは言い難い。それでも打率は.287と3割到達が目前で、出塁率(.406)は4割を超えだ。ほかの選手であればスランプではなく、好調との評価を与えられるような数字を残している。何よりも、大谷のプロテクションとしての存在感は非常に大きく、相手投手は昨季までのように大谷との勝負を避けることができない。

「どの打線に入るかによって、配球は変わってくる」と大谷が語ったように、エンゼルス時代とは相手投手の攻め方が変わり、ストライクゾーンへの球が増えたことで打率が上がり、三振が減っている。

【元巨人のマイコラスもお手上げ】

 4月19日(日本時間20日)のニューヨーク・メッツ戦では、初回にベッツ、大谷、フリーマンのMVPトリオが三者凡退に倒れたが、開幕から22試合目にして初めての初回三者凡退だった。

 イニング別のチーム成績を見てみると、ベッツ、大谷、フリーマンの3人全員が必ず打席に立つ初回は、打率.327、出塁率.410で、全イニング中1位の数字を残している。ロバーツ監督は「3人は球界最高の打者だ。そんな3人を打線の上位に並べられるのだから幸運だ」と笑みを浮かべる。

 3月28日(日本時間29日)にドジャー・スタジアムで行なわれた本拠地開幕戦で、ドジャースを相手に先発したセントルイス・カージナルスのマイルズ・マイコラスは、「あの3人はリーグ最高の打者。その3人が続けて打席に立つんだから......」とMVPトリオと対戦する苦労を口にした。

 2015年から17年までの3年間を読売ジャイアンツでプレーし、メジャー復帰元年となった2018年に最多勝と最優秀勝率のタイトルを手にしたマイコラスは、「普通の1、2、3番打者ではない。

彼らはいい打者で、自制心も備えている。それと、桁外れのパワーもね」とつけ加えた。

 マイコラスが試合後に「彼らの強力なスイングはシングルのものではない。二塁打やホームランを打つスイングだ」と振り返ったように、3人を相手に6打数5安打、2四球、1二塁打、2本塁打と打たれまくった。MVPトリオ以外の打者に対しては13打数2安打(単打2本)、無四球、5奪三振と抑えただけに、MVPトリオの凄さが際立った試合となった。

【ほかの打者は沈黙気味】

 そんな強力トリオを上位打線に揃えながらも、ドジャースは24試合を終えた時点で13勝11敗と圧倒的な強さを示せずにいる。

 4月20日(日本時間21日)のメッツ戦ではMVPトリオが12度も出塁しながら、それ以外の打者が24打数2安打と沈黙して試合を落とした。そんなチーム状況に対して、大谷は「投打がちょっと噛み合っていないかなというのはあるが、全試合、近い点差で粘っていると思うし、みんな必死にやっているので切り替えていくしかない」と前を向く。

 思うように勝ち星を伸ばせないが、まだパニックボタンを押すには早すぎる。シーズン100勝を記録した昨季もシーズン最初の24試合は今季とまったく同じ13勝11敗だったが、そこから白星を積み重ねていった。

 162試合を戦うメジャーのレギュラーシーズンはスプリントではなくマラソンレース。MVP受賞経験者が3人続く強力打線を誇るドジャースは、今季もここから調子を上げていくはずだ。

 ドジャースが大谷に約1000億円の投資をしたのは、ワールドシリーズで世界一を奪回するため。そのために、この長いレギュラーシーズンで活躍を続けながら、10月にピークを持っていく。

 ワールドシリーズを制覇できなければ、名実ともに"MLB史上最強トリオ"の称号は得られない。