3歳牡馬三冠の最終戦となるGI菊花賞(10月26日/京都・芝3000m)は、戦前の評価からすると「3強」だ。

 前哨戦のGⅡ神戸新聞杯(9月21日/阪神・芝2400m)を制したエリキング(牡3歳)と、2着のショウヘイ(牡3歳)。

これに、GⅢ新潟記念(8月31日/新潟・芝2000m)で古馬相手に2着となったエネルジコ(牡3歳)を加えた3頭だ。

 関西の競馬専門紙記者もこう語る。

「もうひとつの菊花賞トライアル、GⅡセントライト記念(9月15日/中山・芝2200m)は、勝ったミュージアムマイルの強さは際立っていましたが、2着、3着には競馬がうまくいった馬が順に入線を果たした印象があります。

 それに対して神戸新聞杯の上位2頭は、3000mの本番を意識したトライアルらしい競馬を披露し、そのうえでしっかりと結果を出しました。この2頭と新潟記念2着のエネルジコは、下馬評や人気という面だけでなく、実力的にもメンバー中、最上位。菊花賞を勝つのはこの3頭のなかのどれか、という見方は間違いないでしょう」

 昔から「皐月賞は速い馬、ダービーは運のいい馬、菊花賞は強い馬が勝つ」と言われてきた。実際、菊花賞では実力上位の「強い馬」が勝ってきた。ここ10年の勝ち馬を見ても、キタサンブラックサトノダイヤモンド、キセキ、フィエールマン、コントレイル、タイトルホルダーなど、そうそうたる面々が名を連ねる。

 そして今年、「3強」とされる馬たちがそこまでの名馬級かどうかはまだわからない。だが、「強い馬が勝つ」というイメージには合致している感がある。やはり、先の専門紙記者が言うとおり、菊花賞を勝つのは「3強」のいずれかとなる可能性は高い。

 とはいえ、馬券に絡む3頭も「3強」で決まりかというと、頭をひねりたくなる。

その点については、大いに考える余地はありそうだ。

 何より、菊花賞は3000mという長丁場での戦い。今年は出走メンバーすべての馬にとって、未知なる距離となる。なおかつ、舞台は京都。「3強」それぞれが臨んできたステップレースの競馬場とは異なる。

 つまり、前哨戦やトライアルで強い競馬を見せてきたからといって、同じような走りが本番の菊花賞でもできるとは限らない。「3強」に割って入る伏兵の台頭があっても、何ら不思議はないのだ。

 注目したいのは、格下感があって人気の盲点になりやすい馬。馬券的な妙味を考えれば、2、3勝クラスの条件戦を勝ち上がってきたばかりの馬だ。

 現に過去10年の結果を振り返ってみても、前走で条件クラスのレースを勝ち上がってきたばかりの馬が7頭も馬券に絡んでいる。いずれも、4番人気以下の伏兵だったことを思えば、なおさら狙い目となる。

 はたして、今年はそういった臨戦過程で狙える馬はいるのか。

 先述の専門紙記者によれば、競馬サークル内で評価が高いのは、前走で3勝クラスの日本海S(8月30日/新潟・芝2200m)を勝ったゲルチュタール(牡3歳)だそうだ。

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「陣営は早くからこの馬の長距離適性を見抜いて、ここまで菊花賞を勝つために2400m前後の距離のレースを中心に使ってきました。前走も、いかにも長距離向きと思わせる競馬で古馬相手に快勝しました。そうした距離適性から、ステイヤー資質が生きるような、スタミナ勝負となるしのぎ合いの展開となれば、勝つチャンスもあるかもしれません」

 さらにもう1頭、サークル内で密かに注目を集めている馬がいるという。前走で2勝クラスの札幌日刊スポーツ杯(8月30日/札幌・芝2000m)を完勝し、「究極の伏兵」との評価もあるミラージュナイト(牡3歳)だ。

 ここまで7戦3勝、2着2回、3着1回、4着1回。2歳夏にデビューしてから3歳春までは完成度で見劣る面があったが、クラシックシーズンを全休して成長を促すや、復帰した夏の札幌で2戦2勝。休養前とは見違えるような走りを見せて、その成長ぶりをアピールした。

 いわゆる、典型的な夏の上り馬。しかも、母が2014年のGIエリザベス女王杯(京都・芝2200m)を勝ったラキシスと、血統的な魅力もある。再び専門紙記者が言う。

「デビュー以来、ずっと2000m以上のレースを使い続けているように、陣営はこの馬の適性は長い距離にあると見ていて、ずいぶん前から『狙いは菊花賞』と言っていました。

この春までは足踏みしていましたが、復帰してからの札幌での2戦は『強い』のひと言。2戦とも『力が違う』と言わんばかりの勝ち方でインパクトがありました。

 GIで勝ち負けするほどの馬は、どこかでそういうパフォーマンスを見せているもの。能力的にも人気上位の馬たちにもヒケを取らないですし、勝つまではどうかといったところですが、"3強"の一角崩しなら、可能性は十分にあると思います」

 母ラキシスも3歳春に休養して秋に復帰するや、500万下(現1勝クラス)、1000万下(現2勝クラス)を連勝。初めて挑んだGI、エリザベス女王杯(2013年)で古馬相手に2着と奮闘した。ミラージュナイトも母と同じく、初のGIの舞台でいきなり上位争いを演じてもおかしくない。

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