身長192センチ、体重95キロのサウスポーが真上から叩き下ろす。この威容には、言葉では言い尽くせない魅力がある。
川本晴大(はると)。大阪桐蔭に出現した、次なる逸材である。
【来春の選抜をたぐり寄せる好投】
今や190センチを超える投手は日本でも珍しくなくなったが、真上から投げ下ろす角度を持つ長身投手は希少だ。ましてや左投手ともなると、希少性はさらに増す。
この大型左腕がまだ高校1年生と知れば、とてつもない投手へと進化する近未来を想像せずにはいられない。
川本は自身の投球フォームについて、こう語る。
「フォームは野球を始めた頃からずっと変わりません。リリースから(捕手の)ミットまでの軌道を意識して、ボールの角度を出すために低めを狙って投げています」
まさに「天性の角度」と言っていい。
今秋のドラフト会議では、大阪桐蔭から森陽樹がオリックスの2位指名を受けた。新チームには最速152キロを計測する速球派右腕の吉岡貫介(2年)もいる。相変わらず豪華な陣容だ。
10月19日、奈良・さとやくスタジアムで開催された秋季近畿大会1回戦。大阪桐蔭と市和歌山の好カードに、多くの観衆が集まった。
しかし、大阪桐蔭の先発マウンドに上がったのは、1年生の川本だった。
「ビックリしたけど、後ろに先輩がいたので。投げられるところまで、全力でいこうと思いました」
両腕を真上に掲げ、背伸びをするようなワインドアップモーション。大阪桐蔭に入学後、投手を指導する石田寿也コーチに「体をさらに大きく見せるために、やってみたら」と勧められ、取り入れている。
右足を上げて立つ際は猫背気味の前かがみなのだが、左腕を振る際には体幹がしなるように伸びていく。最速146キロの快速球は低めにもコンスタントに決まり、「ズドッ!」と捕手のミットを強く鳴らす。川本は「いつもより指にかかっている」と好感触を得たという。ストレートだけでなく、スライダー、カーブの精度も高かった。
川本は6イニング84球を投げ、被安打3、奪三振4、与四球1、失点1と好投。2番手の吉岡がノーヒットで抑え、大阪桐蔭は7対1と快勝した。
続く天理との準々決勝でも、川本は先発し、6回無失点。
吉岡、川本の二枚看板が登板しなかった準決勝は神戸国際大付に1対7と完敗を喫したものの、全国の頂点を狙える戦力は揃っている。打線も内海竣太、谷渕瑛仁といった強打者を擁し、内野守備も堅い。
【身長はまだ止まっていない】
その一方で、名門のユニホームを着る者にしか知りえない苦悩もあるはずだ。2022年春の選抜優勝を最後に甲子園優勝から遠ざかると、まるで凋落したかのように騒がれてしまう。
いくら選手の素材がよくても、限りある時間のなかで計画どおりに育成することは至難の業。ましてや心身ともに発展途上の高校生ともなれば、なおさらだ。川本は今後どんな成長曲線を描いていくだろうか。
なお、身長が止まったかを確認すると、川本は「4月から身長を測っていないんですけど、たぶん伸びてます」と答えた。持ち味の角度は、さらに強力になる可能性を秘めている。
川本は埼玉県出身で、中学時代は3年春まで武蔵嵐山ボーイズに在籍(その後、東京城南ボーイズに移籍)。
「ふたりでいつも投げていたんですけど、(髙部さんは)すごかったです。真っすぐは速いし、コントロールもよくて。浮き上がっていくようなボールを投げていました」
ホップする体感の快速球を武器にする高部に、高所から突き刺す角度を持つ川本。タイプの異なる左腕をふたり擁すれば、難攻不落だったのは間違いないだろう。
その後、川本はテレビで大阪桐蔭の試合を観戦し、「こういうチームで甲子園に行きたい」と憧れを抱いた。中学3年夏には侍ジャパンU−15代表に選ばれ、ワールドカップを戦っている。
将来、どんな投手になりたいか。報道陣に問われた川本は、こう答えている。
「ストレートでどんどん攻めて、詰まらせて、押していけるピッチャーになりたいです」
まずは順調な滑り出しを見せた、大器の高校生活。これから壁にぶつかる時期も訪れるに違いない。それでも、天性の角度がある限り、見る者に夢を抱かせ続けるはずだ。










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