13対0で7回コールド勝利。第6回ワールド・ベースボール・クラシックWBC)で連覇を目指す日本代表にとって、グループリーグで最も手強い相手ではと見られた初戦のチャイニーズ・タイペイ戦は圧勝に終わった。

【WBC2026】なぜ井端監督は大谷翔平を1番に置いたのか ...の画像はこちら >>

【チームに勢いをつけた1番・大谷翔平

 打線に火をつけたのは、1番指名打者・大谷翔平(ドジャース)だ。プレーボール直後、打球速度188.5キロでライト線に二塁打を放った。

「初戦でみんな硬くなるところですし、しっかりとアグレッシブに打ちたいと思いました。たまたま初球がいいところに来て、ヒットにできてよかったなと思います」

 大谷は試合後のヒーローインタビューでそう話した。東京ドームに詰めかけた4万2314人の大観衆にどよめきを起こしたのは2回一死満塁、0対0で迎えた第2打席だった。2ボール、1ストライクから外角低めに投じられたカーブに泳がされたが、バットの先でライトスタンドに運んだ。

「打った瞬間、入るなと思いました」

 大谷本人とまったく同じ言葉で振り返ったのが、二塁ランナーとして見ていた牧秀悟(DeNA)だ。「5人のメジャーリーガー+2番・近藤健介(ソフトバンク)」のあと、7番に入った牧は、打線における大谷の存在の大きさをこう語った。

「1打席目も強烈なヒットを打ってチームに勢いを与えてくれました。ああいう1番バッターがいたら、すごくいいなと思いました」

 大会前、侍ジャパンを巡って議論になったテーマのひとつが、大谷の打順だった。過去の日本代表と比べても史上最強打線が組めるなかで、何番に大谷を据えるのが最適解か。井端弘和監督はこう結論を出した。

「強化試合で1番と2番、両方見させてもらって、やっぱり1番に入ったほうが勢いと迫力と、いろいろなものがあって、1番に据えようかなと思いました」

 1番打者は当然、最も早く、最も多く打席が回ってくる。

だから、最も優れた打者を1番に据えるという考え方は合理的と言える。現に、MLB屈指の強打者を揃えるドジャースは大谷を1番で起用している。

【上位につなげればなんとかなる】

 一方、打線全体のつながりも重要になる。その意味でも、1番・大谷は侍ジャパンを活性化させた。2回、先頭打者の6番・村上宗隆(ホワイトソックス)が四球を選んだ直後、レフト前安打でチャンスを広げた牧はこう話した。

「上位打線につなげばなんとかなると思っていましたし、打順の兼ね合い的にもそういう役割だと思ったので、1本出てよかったですし、そこで点数が取れてなおさらよかったです」

 直後、無死一、二塁で回ってきた8番・源田壮亮(西武)は打席での意識をこう振り返った。

「バントのサインが出るかなと思いましたけど、サインはなかったので、引っ張ってやろうと思いながら行きました」

 結果、死球で満塁。9番・若月健矢(オリックス)が倒れたあと、大谷が技と力の満塁弾を放った。これで終わらず、二死から3つの四球と5本のヒットで6点を追加。6対0からセンター前に2点タイムリーを放った源田はこう話した。

「下位打線でもチャンスが回ってくるんだなと、あらためて思いました。明日以降もしっかりプレーできるように準備したいなと思います」

 8番の源田も1番・大谷の効果を口にした。

「(下位打線の役割は)やっぱり塁に出ることと、ランナーがいたらとにかくひとつでも前に進めて、次のバッターにつなぐという形ですかね。

いい形で上位に」

 強力な上位打線につなげば何とかしてくれると、下位打線がつなぎに徹する。そうして7、8、9番が出塁すれば、打線全体に厚みが増す。ラインナップの9人を束ねるのが、1番・大谷だ。その存在の意味について、井端監督はこう話した。

「正直、非常にラクです。だけど彼だけではなく、満塁ホームランのあとにまたつながったところが、今の打線のいいところかなと思いました。畳みかけられるようにやっていけたらいいなと思います」

【井端監督が考える理想の戦い方】

 大谷が勝利の立役者となったチャイニーズ・タイペイ戦の試合前会見で、井端監督に対して興味深い質問があった。長打を絡めて攻めるのが、侍ジャパンの戦い方として理想的だろうか、という投げかけだ。

 ワールドシリーズや日本シリーズという短期決戦では、本塁打や長打が勝敗の行方を大きく左右する。名古屋での強化試合の際、松田宣浩コーチも長打の重要性を話していた。

 では、WBCで連覇を狙う侍ジャパンはどう戦うべきか。井端監督の"理想"は、少々違うものだった。

「理想は、そういうふうには思ってないですよ、正直。勝てばいい。これが理想です。(3月5日の)オーストラリアと台湾戦、チェコと韓国戦、今日の試合(チェコ対オーストラリア)も見ていましたけど、やっぱり一発が得点源になるのは間違いないかなと思います。でも、それがすべてではない。取れる時に取るというのが、理想かなと思います」

 大谷を1番に据え、侍ジャパンは理想的な展開で初戦を制した。あらためて、「世界一の選手」を抱える心強さを日本中が確認する一戦となった。

 今回の侍ジャパンで、大谷はリーダーとしても機能している。優勝した前回、投手コーチを務めた吉井理人氏によると、チームの雰囲気をつくったのは大谷とラーズ・ヌートバー(カージナルス)だった。とくに大谷がコーチたちにふざけてタックルをするなどして、周りの選手たちは「こんな感じで接していいのか」と余計な力が抜けたという。

 当時から3年が経ち、大谷は31歳になった。年齢的にも上のほうになり、北山亘基(日本ハム)にセレブレーションを考えさせるなどしてチームをまとめ上げている。

いじられ役のひとりでもある牧は、大谷の人間性についてこう話した。

「そこに翔平さんがいれば明るくなりますし、いろんな人を巻き込んでチームをいい方向に進めてくれるのも自然とできていると思います。そこに魅力があるのかなと思います」

 1番・大谷が流れを大きく引き寄せ、侍ジャパンは連覇に向けて最高のスタートを切った。

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