F1第8戦オーストリアGPレビュー(後編)

◆レビュー前編>>

 振動問題が解決した第4戦マイアミGPから、アストンマーティン・ホンダはようやくパフォーマンス面の改善へと移行した。第5戦カナダGP以降は、ドライバビリティ改善に向けた燃焼セッティングの方向性も見えてきた。

 その延長線上に改善を積み重ねてきた成果が、第8戦オーストリアGPでようやく形になった。

 折原伸太郎トラックサイド・ゼネラルマネジャー兼チーフエンジニア(GM)はそう語る。

【F1】アロンソは決勝最下位でも「がっかりしていない」 長く...の画像はこちら >>
「今回、何か特別なことをやったというのではなく、カナダGP以降に見えてきた方向性を積み上げてきた結果が、その(アロンソが笑顔で答えた)コメントになっているんだと思います。

 正直に言って、我々もあそこまでポジティブなコメントを聞けるとは思っていなかった。なので、驚いているところなんです。これまで積み上げてきたものがいい形になってきたんだと思います」

 ドライバーとしては、ラップごとに挙動が異なるようでは、限界までプッシュすることなどできない。

 ダウンフォースがなかろうと、パワーがなかろうと、何秒遅れだろうと、マシンの限界を引き出すことにドライバーはひとつの目標を定める。そしてそこに達成感を得るものだ。

 しかし、今までのアストンマーティン・ホンダのマシンは、ただ性能が低いだけでなく、それをフルに引き出すことも難しかった。少なくとも、そういった問題は改善されつつあることに、アロンソは笑顔を見せたのだ。

 これは、夏に予定されている大型アップデートに向けた準備でもある。

「マイアミGPやカナダGPでアップデートを投入したとしても、そういう問題があって(アップデートを使いこなす)準備ができていなかったと思う。

僕らはアップデートを待っている間の数戦を使って、こういう問題を改善していっているんだ。大きくラップタイムを失っているんだから、決して小さな問題じゃない」(アロンソ)

【最下位でも得られるデータはある】

 決勝では、キャデラック勢が早々にリタイアした。そういう状況もあり、アストンマーティン勢同士で争うしかなかった。

 ソフトタイヤを履いて、少しでもマシン性能差をタイヤでカバーしようという戦略を採った。それ自体は正解だったものの、タイヤ差だけではいかんともしがたい差がライバルとの間にはあった。

 それでも2台で前後してバトルをしながら走行することで、得られるデータもあった。

 ランス・ストロールはバッテリーに通常と異なるデータが見られたため、大事を取ってガレージに戻した。その一方で、フェルナンド・アロンソは最後まで走って少しでも多くのデータを収集し、さらなる準備作業につながる走りをした。

「予想していたことだ。ガッカリはしていないよ。自分たちのポジションはわかっているし、それはシルバーストン(第9戦イギリスGP)でもスパ・フランコルシャン(第10戦ベルギーGP)でも同じだ。

 パフォーマンスがないこともわかっている。

アップデートが入るまでの週末で可能なかぎり学習を進め、オペレーション面でもまだまだ改善しなければならない点があるからね。今の数戦は、そのために有効活用するんだ」(アロンソ)

 決勝中はギアボックスのオーバーヒートや、おそらくはこれも熱害だと思われる車速センサーの誤作動によるピットスピードリミッター異常などが起きていた。

 青旗を振られた際に、譲るためにバックオフすれば、ペースを失うだけでなくタイヤの温度も失う。それに合わせた戦略を採ることも重要だ。

 そういった、今のうちに経験して潰し込んでおかなければならないことに集中しなければならないのが、今のアストンマーティン・ホンダだ。

 車体もパワーユニットもあくまで暫定版であり、夏に登場するアップデート版の車体とパワーユニットが実質的な開幕仕様となる。今はその開幕に向けて実走テストを重ねている段階で、ようやくそのテストが形になりつつある。

 夏休みまで、残り3戦──。

 アストンマーティン・ホンダの長く苦しかった「実走テスト」のトンネルも、出口がすぐそこに見えている。

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