箱根駅伝、有力校のトラックシーズン総括(後編)

【大学駅伝】初の箱根制覇へ向けて順調な國學院大、東海大は新監...の画像はこちら >>

 春の関東インカレ、各記録会を経て、迎えた7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ(ホクレン/千歳、網走、北見、深川、士別)と関東学生網走夏季記録挑戦競技会(網走記録会)。箱根駅伝の優勝を争う各チームの選手たちはどんな走りを見せたのか。

以前に取り上げた青山学院大に続き、今回はそのほかの有力6大学を前編・中編・後編の全3回に分けてピックアップ。この後編では國學院大と東海大の走りを振り返る。

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【2年生が10000mで27分台に突入】

 國學院大もホクレンで強さを見せた。

 7月8日の網走大会では、髙石樹(2年)が10000mA組に出場し、積極的な走りで組4位、27分57秒71の自己ベスト(PB)をマーク。スタート前は蒸し暑さが気になったというが、「27分台でまとめる」プランをしっかり守った。その一方で、同学年の中央大・三宅悠斗に敗れたのが悔しそうだった。

「三宅とは13秒差ですか。強いなぁ。負けちゃいました(苦笑)。まぁ、でも自分はロードのほうが得意ですし、ロードで負けたらショックなので、この夏はめちゃくちゃ走り込んで巻き返すだけですね。出雲駅伝からバンバン駅伝に出て勝ちたいです」

 前回の箱根駅伝では5区を担い、1年生ながら区間4位と好走。2月の日本学生ハーフマラソンでは1時間00分53秒で6位。関東インカレの2部10000mでは28分01秒47のPBを出して8位入賞。

好調を続ける髙石の持ち味は闘争心だ。高校時代から同学年のスター、鈴木琉胤(早稲田大)をライバル視し、現在、國學院大では、主将でエースの野中恒亨(4年)に勝つことを目標にしている。網走大会ではその野中にも先着され、「野中さんは強すぎる」と少し落ち込んでいたが、箱根ではエース区間での出場を狙っている。

「前回の箱根はあまりうまく走れなかったので、次はそのぶんも頑張って走らないといけないです。チーム事情としては山を走らないといけないかもしれませんが、個人的には2区を走りたい。理由とかなくて、ただ2区を走りたいだけです(笑)」

 普通に考えれば、國學院大の箱根2区は野中だろうが、ほかに山を走れる選手が出てくれば、髙石に平地を走らせても面白い。出雲、全日本大学駅伝の走り次第で、そのチャンスが巡ってくるかもしれない。

 その髙石にライバル視されている野中は、網走大会の10000mA組で日本人トップの組2位、27分41秒33をマークした。「(27分)50秒を切れればいい」という感覚だったが、ペースメーカーのリチャード・エティーリ(東京国際大・4年)の後ろにつき、余裕のある走りを見せた。

「ラスト2000mでエティーリが離れた後、三宅君がついてきたので、『行くよ』と引いたんです。その後ひとりになってしまってからはちょっとキツくて、ラストを上げられませんでした。でも、この蒸し暑さのなかではよかったと思います」

【中大や早大にプレッシャーを与え続ける】

 今季の野中は、抜群の強さと安定感を見せている。5月のゴールデンゲームズinのべおかの5000mでは13分28秒47と國學院大記録となるPBをマーク。

関東インカレ2部5000mでも13分30秒10で日本人トップの4位入賞。それでも本人は満足していない。

「全体的には悪くはないですが、よくもなく、65点ぐらいですね。個人的にはもう1歩というレースが多かったと思います。留学生に勝てなかったところを含めて、もう1歩があるというのは、今後の自分にとってプラス。チームに関して言えば、他大と比べて勢いがあったかというと、もう少しかなと思います」

 野中が「もう少し」と感じたのは、中間層の底上げだという。

「中間層がもう1歩なので、かなり危機感を持っています。ただ、中間層の選手は昨年よりも確実にいい練習をしています。(昨季主将の)上原(琉翔/富士通)さんたちがいなくなったからこそ(今季は自分たちがと)ギラギラしている部分があるので、夏をしっかり乗り越えられれば、さらに1歩進んでいけると思います」

 主将として今季に賭ける決意が表情からも読み取れる。箱根に向けては、トラックシーズンで好調だった中大、早大を強く意識しているという。

「勝たなきゃいけない相手ですので、今回も三宅君を引いても勝てるぞ、野中のほうが圧倒的に余裕があるぞ、というところを中大に見せるのは大事なことでした。そうして中大や早大に油断できないと視野に入れてもらいながら、自分たちも背中を追い続けますよとプレッシャーを与え続ける。

すると、どこかに隙が生まれると思うので、そこを突きたいです」

 昨季のチームから上原、青木瑠郁(住友電工)、高山豪起(中国電力)らが抜け、戦力ダウンも心配されたが、杞憂に終わりそうだ。野中、髙石以外でも、鼻野木悠翔(3年)が関東インカレ2部5000mで13分46秒50、辻原輝(4年)が同10000mで28分24秒68とともにPBをマークした。浅野結太(3年)も7月12日の網走記録会10000mで28分47秒08のPBを出し、気を吐いた。ルーキーでは、五十嵐新太(1年)が関東インカレ2部5000mで13分46秒57のPBをマークすると、網走記録会では10000mの初レースに臨み、28分50秒38を出した。

 印象深かったのは、網走記録会10000mでの永田智基(4年)の走りだ。激しくあえぐ、鬼気迫る走りで28分59秒19のPBを出した。

「自分は、箱根でいうと(チームで)18番前後の選手。昨年はメンバー入りしましたが、走れなかった悔しさがあり、最後の1年は(結果を出したい)という思いが強いですし、4年生の意地もあって粘りました」

 永田が見せた走りはチームの士気を高める。箱根に向けては、2区野中、5区髙石を軸に、他区間で前回の箱根を走った3、4年生が力を発揮すれば、初の頂上も見えてくる。

【「スピードの東海」が戻ってきた】

 今季のトラックシーズン、東海大も充実した結果を残した。

 ホクレン網走大会の5000mC組では、中野純平(3年)が組1位の13分39秒31、近藤寿樹(1年)が組2位の13分45秒97とワンツーフィニッシュ。同B組では南坂柚汰(4年)が13分39秒08、矢口陽太(4年)が13分41秒33、同A組では永本脩(4年)が13分34秒17をマークし、出場した5名全員がPB更新というすばらしい走りを見せた。

さらに網走記録会の10000m3組では平井璃空(3年)が28分57秒47で組トップとなり、PBを更新した。

 これだけPBが続出したのは、「スピードの東海」を取り戻すべく、西出仁明新監督が推奨するウエイトトレーニングなどの効果がさっそく出ているということか。関東インカレ1部ハーフマラソンで3位入賞、関東インカレ1部10000mでも28分19秒39のPBで3位入賞と、春からチームを牽引している中野に、自身の絶好調ぶりについて聞くと「正直、自分でもわからなくて(苦笑)。ケガなく練習を継続できていたら、いつの間にかタイムが伸びてきたという感じです」と答えた。

 感性と感覚の選手らしい言葉だが、箱根予選会に向けて、夏はしっかり走り込むという。一方、南坂はチームの勢いについて「(自分たち)4年生の影響が大きい」と語る。

「今季の4年生はおとなしいのですが、競技の優先順位が高い人が残っているんです。その一番先頭にいるのが(主将の)永本で、彼の競技に取り組む姿勢を見て、下級生の意識が変わり、成長していると感じます。練習でも、自分や中野だけが速いペース設定でやっているのではなく、みんな同じ練習をして、刺激し合えているのが大きいですね」

 ただし、中間層には物足りなさを感じているという。

「上のレベルの選手は、上へ、上への意識が強いし、自分も結果を出したいというスタンスですが、中間層はまだ意識が足りない。そこのレベルを上げていかないと駅伝がしんどくなるので、気にかけてやっていかないといけないですね」

 南坂自身は、昨季途中からずっと好調を維持している。

「昨年と一昨年はケガでトラックシーズンを走れなかったのですが、今年はケガなく試合を積み重ねることができているのが大きいです。

あと、競技に使う時間が増えたことですね。昼寝する時間を増やしたり、自炊して栄養を摂ったり、4年生で授業が少ないので、時間的な余裕を競技に向けることができています」

 4年生を軸にいい状態でチームが回っている。箱根予選会は決して簡単な戦いではないが、今季の東海大は本戦でシード権を狙える力をつけつつある。

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佐藤俊●取材・文 text by Shun Sato

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