【自転車】「これが五輪でもお前は脚を止めるか」世界選手権に挑...の画像はこちら >>
 自転車競技・トラックの国際大会「2026 UCI トラック世界選手権大会」が、10月14日(水)~18日(日)の5日間、中国・上海で開催される。年1回のこの大一番で活躍が期待されているのが、中距離選手の内野艶和だ。
先のアジア競技大会では2人1組で交代しながら走る「マディソン」、1チーム4人で4kmを走る「チームパシュート」に出場した内野は、マディソンで金メダル、チームパシュートで銀メダルを獲得した。世界選手権でも上位進出を狙う彼女に意気込みを聞いた。

【5カ月間の海外遠征で得たもの】

――今年3月のワールドカップ第1戦ではマディソンで金メダル、4月の第2戦ではオムニアム(※)で金メダルを獲得しました。これらの好成績の要因は何でしょうか。
※オムニアム:スクラッチ、テンポレース、エリミネーション、ポイントレースの4種目の総合得点で順位を決める競技

 トレーニングを積み重ねてきた成果が出たと思っています。また気持ちの面でも充実していましたし、自分の思い描いたレース展開になったりしたので、それらがうまくマッチして獲れた優勝だったかなと思います。大会前はレベルの高いレースになると想定していましたが、そのなかで優勝できたので、自分でもすごく驚きました。

――6月には全日本選手権トラックで4冠(チームパシュート、マディソン、ポイントレース、個人パシュート)、全日本選手権ロードレースで2位など、精力的に出場して結果を残していますが、成長を感じている部分はどんなところですか。

 結果が少しずつ出てきているとは思いますが、それでもやっぱりまだまだです。海外のレースを経験して、周りがすごくレベルが高いなと実感しましたし、上には上がいるなというのは常に感じています。ワールドカップなどでは、世界の強豪選手がいない大会もあったので、(上位の)彼女たちがいたらどんな結果になったんだろうと、すごく考えてしまいますね。だから満足はできないかなと思っています。

 昨年は5カ月間ぐらいレースや合宿で海外にいたんですが、そこでいろんな刺激をもらって、気持ちの面ですごく強くなったと思います。

レベルの高いレースに何回も出させてもらったので、少しはレベルが上がったかなと実感はしましたが、それでもやっぱりさらに強くならないといけないなと思っています。

――気持ちの面での成長はどんなところでしょうか。

 海外ではいろんなハプニングがあったなかで過ごしてきたので、少しは視野が広くなったと思います。

――2024年にはパリ五輪に出場しました。チームパシュート10位、マディソン12位と、望んだような結果ではなかったと思いますが、この結果が今のモチベーションにつながっているのでしょうか。

 そうですね。やっぱり最終地点は五輪で、自分も含めてみんな五輪でメダルを獲りたいと思っています。ただ現状は満足できる状態ではないので、今は団結して、ひとりひとりが自分自身を見つめ直して強くなっていく時なんじゃないかなって思っています。

【自転車】「これが五輪でもお前は脚を止めるか」世界選手権に挑む内野艶和が自らに問い続ける言葉
ワールドカップ第2戦、オムニアムで金メダルを獲得した内野。ワールドカップでは自身初の個人種目優勝を果たした

【世界選手権で掲げる目標】

――そのうえで、10月14日からの世界選手権はどのような位置づけになりますか。

 五輪もそうなんですが、やっぱりどの国も1年に1回のこの世界選手権に照準を合わせてきます。ロサンゼルス五輪まではあと2回しか世界選手権がないので、今回もすごく重要な大会になると思っています。

――昨年の世界選手権ではチームパシュート、マディソンとも5位と好成績を残しました。さらに上位を狙うためにはどんなことが課題だと感じましたか。

 昨年の世界選手権では、チームパシュートはみんなベストを尽くしてタイムもよかったんですが、個人的に感じたのは、それぞれが殻を破らないとその先には行けないなということでした。強豪チームはみんな(200mが)10 秒台前半ですが、私たちはまだそこに届いていないです。

 根本的なスピードと持久力を上げていかないと世界では戦えないのが現状です。練習を積み重ねて自信につなげ、安定してタイムを出せるようにしないと、五輪には出られないなってすごく考えています。

 マディソンでは、120周(30km)を走るなかで12回得点を獲る機会があるんですが、上位チームは、ほとんどのタイミングで得点を獲っています。ふたりで走るので、息を合わせなくてはいけないのは難しいところですが、得点を獲った後に休んでしまうことがあって、12回得点を獲りにいく力がまだ弱いと感じています。

 接戦になったら絶対に得点を獲りにいかないといけないんですが、最後のひと押しで負けてしまうことがあります。また、いい位置取りをしていないと、無駄な脚力を使ってしまうので、得点に絡むこともできません。そこを強化していきたいと思っています。

【自転車】「これが五輪でもお前は脚を止めるか」世界選手権に挑む内野艶和が自らに問い続ける言葉
昨年の世界選手権では5位となったチームパシュート。アジア競技大会では4分10秒424を記録し、日本記録を3秒近く更新した
――そして次のロサンゼルス五輪に出場するためには、チームパシュートでいかにポイントを挙げるかが重要になってきました。チームパシュートの出場枠を得られれば、マディソンにもオムニアムにも出場が可能になります。その五輪出場枠をかけたポイント争いが、この世界選手権から始まります。

 このルール変更もあって、チームパシュートに取り組んでいなかった国もチームを作り始めました。そこで出場枠を獲れれば、マディソンとオムニアムの枠をゲットできるので、やっぱりそこはみんな考えているのかなと思います。

 いろんな国が強化に乗り出しているなかで、五輪に出場するためには、もうやれることをやっていかないと間に合わない状況です。それぞれが限界突破していかないといけないと思うんです。支え合える仲間がいるので、みんなで声をかけ合ってやっていけたらいいなと思っています。

――この世界選手権ではどんな目標を持っていますか。

 もちろんメダルを獲りにいきたいですし、自分が成長できるようなレース内容、自分が納得できるレース内容にしたいなと思っています。

【自転車】「これが五輪でもお前は脚を止めるか」世界選手権に挑む内野艶和が自らに問い続ける言葉
アジア競技大会のマディソンでは金メダルを獲得。垣田真穂(左)と内野(右) photo by Manabu Takahashi

【ロス五輪に向けた覚悟】

――ここから先は結果が求められる大会が続きます。厳しい練習も続いていくかと思いますが、どのような思いで練習に取り組んでいますか。

 常に自分に問いかけているのは、「これが五輪でもお前は脚を止めるか」「これが五輪でもここであきらめるのか」ということです。レースではあと0.1秒速かったらとか、あと1ポイント獲っておけばとか、ここで3着以内だったらという状況は、常に起こりえます。そんな状況をひとつひとつクリアしていくことで自信がついていきますし、ステップアップもできるんじゃないかと思っています。

 私はチームパシュートが得意なほうではないので、みんなの足を引っ張らないようにと、常に自分に「ここであきらめていいのか」と問いかけて練習をしています。

――2028年にはロサンゼルス五輪があります。五輪への思いをお聞かせください。

 パリ五輪では負けてすごく悔しかったですし、不完全燃焼で終わってしまったという感じがあります。また同時に、準備をすべてをやりきった自信のなかで走るレースは気持ちいいなとも感じました。だからもう一回やりきって、五輪ですべてを出すだけというところまで自分を持っていきたいと思っています。

 その一方で、あの五輪の独特の雰囲気、お祭りっぽい雰囲気がすごく楽しかった記憶もあります。そのなかでメダルを獲れたらもっと最高だなと思いますし、ロサンゼルス五輪ではそれを今から思い描いています。

【自転車】「これが五輪でもお前は脚を止めるか」世界選手権に挑む内野艶和が自らに問い続ける言葉
トレードマークの笑顔を浮かべながらも、並々ならぬ決意も語った内野 photo by Hiroshi Gunki

【Profile】
内野艶和(うちの・つやか)
2002年1月13日生まれ、福岡県出身。高校から本格的に自転車競技を始め、3年生時に世界ジュニア選手権の女子ポイントレースで優勝する。高校卒業後に日本競輪選手養成所に入り、成績3位で卒業。2021年5月にガールズケイリンデビューを果たす。

同時期にナショナルチームのトラックレース中長距離の強化指定選手にも選ばれ、2024年のパリ五輪に出場。チームパシュート10位、マディソン12位の成績を残す。2025年の世界選手権ではチームパシュート、マディソンでともに5位となる。2026年3月のワールドカップ第1戦のマディソンで金メダル、4月の第2戦ではオムニアムで金メダルを獲得。アジア競技大会ではチームパシュートで銀メダル、マディソンで金メダルの成績を収めた。

text by Sportiva

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