この記事をまとめると
■かつての乗用車はステアリングコラムからシフトレバーが生えているコラムシフトが主流だった



■1970年代に入るとコラムシフトは急激に減ったが、ミニバンブームとともに一時復権した



■現在ではレバータイプのシフトコントロールそのものが消えようとしている



1970年代に廃れるもミニバンブームとともに復活したコラムシフト

最近では電子制御シフトの普及のほか、ボタン式、ダイヤル式、スライド式などさまざまなシフト操作方法が登場しており、そろそろ「シフトレバー」などといっていると「チャンネルをまわす」と平気で言っているのと同じぐらい、年寄り扱いを受けそうである。



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戦後1960年代あたりまでの日本車では、シフトレバーといえばコラムシフトがとくに乗用車では当たり前のように多かった。コラムとはステアリングコラムのことであり、シフトレバーがステアリングコラムから生えていたのである。



「コラムシフト」はもはや過去のものか? 最後の砦「アメ車ピックアップ」からも消滅の危機



筆者が幼少のころのタクシーは、フロントベンチシートにマニュアル式のコラムシフトが定番であった。後席の真ん中を陣取り、フロントシートの背もたれにかぶりついて、運転士さんのシフト操作をガン見していた。その後、筆者は大人になってY31型日産セドリックのタクシー仕様のマニュアルコラムシフト車を運転する機会があったのだが、あまりの嬉しさに、運転中はとにかくシフトチェンジばかり行って楽しんだことがある。



1960年代後半になると、スポーティモデルを中心にフロアシフトが目立つようになってきた。調べてみると、そもそも自動車創成期にはフロアシフトが多かったのだが、その操作がある程度力を必要とするなど、けっして操作が容易なものではなく、一般的な乗用車ではしばらくして快適なシフトチェンジができるコラムシフトが普及してきたとのことである。1960年代後半から日本国内でもフロアシフトが普及してきたのは、技術革新によってシフト操作も容易なものとなり、3速から4速もしくは5速などへとギヤの多段化が進んできたこともあったようだ。



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1970年代に入るとコラムシフトは急速に消滅していき、フロアシフトが日本では台頭してくるが、1994年に初代オデッセイがコラム式ATを採用して再び注目されるようになったと筆者は記憶している。初代オデッセイが登場して大ヒットすると、日本では空前のミニバンブームが訪れる。ミニバンの利点としては、車内高が高く、サイドやセンターといったウォークスルー(歩いて移動できること)が車内で可能など、それまでのセダンにはなかった車内移動できるようになるなど、多人数乗車とともに、スペースユーティリティに長けた多用途性が人気となった。そして、車内でのウォークスルーを可能にするには、フロアシフトは邪魔となり、コラムシフトが復活したのである。



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しかし、当時はすでにコラムシフトは「タクシーみたい」などともいわれ、多くのドライバーには馴染みの薄いものとなっており、とくに女性ドライバーから不評の声も多くなり、その後、インパネシフトというものへ移行していくこととなったのである。



シフトレバーそのものが消えつつある2020年代

いまでは少数派というよりは「絶滅危惧種」といってもいいコラムシフトだが、アメリカ車では少なくとも2000年代前半ぐらいまではコラムATがメインとなっていた。

1999年までY30型日産セドリックワゴンが生産されていたが、コラムATにベンチシートを採用した仕様があり人気が高かった。2000年には北米専売車だった大型セダンとなるトヨタ・アバロンをプロナードとして国内発売したが、「3.0L」というグレードのみがコラムAT(ベンチシート)を採用していた。10代目ダットサンピックアップにもコラムAT仕様があり、これらは同じ車種でも中古車価格が高めに推移するなどしている。



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また、クラウンやセドリック&グロリアの中古車を検索すると、いまでも特記事項として「ベンコラ(フロントベンチシートでコラムシフトということ)」なのかどうかが記されている。いまでもアメ車志向の強い人たちの間では「ベンコラ」は強い支持を受けているのである(状態次第だが中古車価格もベンコラ仕様のほうが高いこともある)。



かつて「コラムシフトはもっともイージーなシフト操作ができる」と言った人がいた。ステアリングコラムからレバーが出ているので、とくにATではステアリングを握りながら指先操作でシフト変更ができるというのである。



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コラムシフトが大好きな筆者も、2000年ごろまではアメリカでレンタカーを借りるときには、「セダンで6人乗りを借りたい(つまりフロントベンチシートでコラムAT仕様ということ)」などといってコラムAT車ばかり乗っていた。確かに指先だけで操作できるのはイージーに感じた。日本車の場合は1970年代以降になると、ステアリングとコラムシフトレバーの間に、ワイパーレバーがレイアウトされるので、ステアリングとコラムシフトレバーとの間のリーチが長くなり使い勝手が悪くなってしまった。



ベンコラ車(セダン)の利点は助手席へのサイドウォークが容易なことや、センタートンネルあたりにカバンなどを置けるのが、とくにアメリカでは防犯面でも便利であった。日本ではスズキ・ワゴンRなどの軽自動車でも一時ベンコラ仕様が目立っていたが、これは体格の大きい(つまり太っている)筆者にとっては、運転席と助手席がわかれているセパレートシートよりは快適に座ることができた。

アメリカでもベンコラ仕様が長く主流だったのは、このような理由があったのかもしれない。



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コラムシフトかフロアシフトか、そしてMTかATかなども含めれば、時代ごとにさまざまな議論のあったシフトレバーだが、いよいよ電子制御は別としても、いままでのようなレバータイプのシフトコントロールが消えようとしている(アメリカ車でも最後までコラムシフトを採用していたアメリカンピックアップも、ダイヤル式などへ本格的に変わろうとしている)。「100年に一度の変革期」というのは、まさにこういうものなのだなと感じている。

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