この記事をまとめると
トヨタ・ハリアーのマイナーチェンジにあわせて「ハリアーPHEV」が追加された



■1000kmを超える走行可能距離を有している一方で、他モデルよりもかなり高価になるハリアーPHEV



■新たに追加されたプラグインハイブリッドのハリアーPHEVの存在意義を試乗して考えた



遅れてやって来たハリアーのプラグインハイブリッド

トヨタのクロスオーバーSUV(スポーツ多目的車)であるハリアーがマイナーチェンジをしたのにあわせ、プラグインハイブリッド車(PHEV)が追加になった。これにより、トヨタ車のPHEVは、プリウス、RAV4に次いで3台目となる。ハイブリッドシステムは、RAV4 PHVと同様と考えられ、燃費や電費の性能はほぼ同じだが、ハリアーのほうがやや車両重量が重いなどあるためだろう、若干、性能数値は落ちる。



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ハリアーは、PHEVの追加により、ガソリンエンジン車、ハイブリッド車(HV)というように、3つの動力別の選択肢がある。それぞれの価格は幅があり、4輪駆動車同士の比較で、なおかつ今回の試乗車のグレードとあわせるかたちでZレザーパッケージでの価格をみると、ガソリンエンジン車は453.8万円、HVは514.8万円、そしてPHEVは620万円である。PHEVは1グレードだが、HVに比べ100万円以上高いことになる。その価値は、どこにあるだろうか。



ハリアーPHEVは、リチウムイオンバッテリーを18.1kWh車載し、満充電で93kmのモーター走行ができる。ちなみに電気自動車(EV)のbZ4Xは71.4kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載しているので、ハリアーPHEVはその4分の1ほどである。



【試乗】ハリアー2台を乗り比べ! 航続距離と上質さならPHVがHVを凌ぐ



世界的に1日のクルマでの移動距離の平均は40~50kmといわれるので、自宅で充電できれば、日常的にモーター走行だけで事が済むことになる。一方、遠出の際には車載バッテリーの電気を使い切ったあとHVとして走り続けられるので、55リッタータンクのハリアーPHEVの場合、WLTCの燃費が20.5km/Lだから、1000km以上移動することができる。



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bZ4Xの一充電走行距離は559kmだから、その2倍近くの距離をハリアーPHEVは途中で止まることなく走っていけることになる。たとえば東京から1000km圏というと、北海道や九州が入る。そこまで休憩なしに運転し続ける人はどれほどいるだろう。とはいえ、心理的な安心感として、モーター走行後になお1000km走れるPHEVに価値はあるだろう。



それとは別に、PHEVで日常的に体験できるモーター主体の走りは、静粛性を含め、クロスオーバーSUVとして乗用車的な乗り味を特徴とするハリアーの価値をいっそう高めることになる。



モーター走行による静粛性の高さと乗り心地のよさはPHEVの美点

今回、HVのハリアーも同時に試乗し、HVならではの静粛性の高さと、ハリアーとしての上質な仕上がりを改めて実感した。それでも、PHEVでのモーター走行の感触は、それ以上の上級さがある。リチウムイオンバッテリーを余分に車載するため、PHEVの車両重量はHVに比べ260kgほど重くなる。それによって走りに重厚さが増し、単に静粛性がより優れるだけでなく、落ち着きある高級さを体感できるのだ。



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では、260kgも重くなった分、加速性能が落ちていないのかという懸念に対しては、4輪駆動となるE-Fourとしての後輪側モーター性能はHVと同じだが、前輪側モーターの出力が1.5倍の134kW、最大トルクは1.3倍の270Nmへ性能向上されているため、まったく不足はない。また、モーターは、最大トルクがアクセル踏みはじめからすぐ立ち上がるので、動き出しのよさや、加速の鋭さも体感できる。



ハイブリッド走行での燃費で、車両重量が重くなるぶん、HVに比べPHEVはWLTC燃費の数値で若干劣るが、動力性能や乗り心地などの面で、PHEVを選ぶ意味は十分にあるだろう。



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ただし、ひとつ条件がある。それは、自宅で200Vでの普通充電ができることだ。RAV4 PHVも同様だが、ハリアーPHEVは普通充電口しか設定されていない。したがって、CHAdeMOの急速充電器での充電はできないのである。



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EVの普及に際しても問題となっているように、日本ではマンションなど集合住宅や月決め駐車場で200Vの充電がほぼできない状況にある。集合住宅では、管理組合の合意が得られないのが大半の理由だ。月極駐車場では、まだ土地の所有者や不動産業者などに電動化への理解が進んでいないためである。



したがって、200Vのコンセントで充電できない住環境では、ハリアーPHEVを購入しても、単なるHVとして乗るしかなくなる。クルマにはチャージモードが設定され、走行しながら充電することはできるが、それを繰り返していては何のためのPHEVかわかりにくくなる。



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100Vのコンセントからの充電もできなくはない。だが、自宅で使う電気使用量の契約容量を超える状態になると、ブレーカーが落ちて停電してしまう可能性がでる。自宅で普通充電するに際して、200Vのコンセント設置を推奨するのは、暮らしに不自由しないでEVやPHEVに充電できる環境を整える意味がある。



EVのみならず、PHEVの普及に際して、集合住宅や月極駐車場で200Vの普通充電ができるようになることが、日本の喫緊の課題なのだ。



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