この記事をまとめると
■テスラのトレーラーヘッド「セミ」の納車が開始■「セミ」はトレーラーヘッドと呼ばれる車両をEV化したもの
■運送事業者を中心にグローバルでニーズが高まる可能性がある
発表から5年を経て登場したテスラ・セミ!
各種報道によれば、テスラ「セミ」が2022年12月、アメリカの大手飲料メーカーのペプシコ向けに納車が始まった。
「セミ」は、アメリカの長距離トラックで一般的な、トレーラーを牽引するための、いわゆるトレーラーヘッドと呼ばれる車両をEV化したもの。
ちなみに、アメリカでは一般的に「SEMI」を「セミ」とは発音しない人が少なくない。
テスラのホームページによると、テスラ「セミ」のスペックは、リヤアクスル(後輪車軸)に3つの独立したモーターを搭載。加速性能は停止状態から時速60マイル(約96キロ)まで約20秒。満充電での航続距離については、バッテリーパックが300マイル(約480キロ)と500マイル(約800キロ)の二種類がある。

充電については、テスラが全米各地の設置を進める「セミチャージャー」によって、約30分間で満充電の70%以上の充電を可能としているという。

欧州の大手トラックメーカーでも大型EVの開発が進んでいる
時計の針を少し戻すと、テスラ「セミ」がワールドプレミアされたのは、いま(2022年12月)から5年近く前である2017年11月16日だ。
この5年間で、テスラを取り巻く社会環境や事情環境は大きく変わった。
乗用車では「モデル3」の販売台数がグローバルで急激に拡大し、また「モデルY」の販売も加わった。

また、2010年代後半にはESG投資の嵐がグローバルで吹き荒れた。ESGとは、従来の財務情報だけではなく環境・社会性・ガバナンスを重視した投資のことで、企業の株価に直結するため企業経営のあり方が大きく変わったといえる。
そうしたなかで、テスラの企業価値が株価として大きく反映され、テスラの時価総額が急拡大した。

また、欧州グリーンディール政策や、アメリカではバイデン大統領が大統領令で自動車の電動化について明言するなど、グローバルでEVシフトが加速している。
このような状況を踏まえると、テスラ「セミ」のニーズは、運送事業者を中心にグローバルで高まる可能性があるかもしれない。さらに、テスラ「セミ」製造コスト面では、他の乗用EVとの部品共有性から、近年の乗用EV販売好調を受けた量産効果が見込めるため、テスラとしての「セミ」事業における収益性が大幅に改善することも見込まれるだろう。

ただし、欧州の大手トラックメーカーでも大型EVの開発が進んでいるため、テスラ「セミ」がトラック市場でひとり勝ちすることは難しいかもしれない。
今後も、EVトラック市場における、テスラ「セミ」の動向をウォッチしていきたい。