この記事をまとめると
■国土交通省は高速道路料金の深夜割引を見直すと発表■深夜割引適用時間帯が22時から翌5時に拡大された
■しかし3割引の対象となるのは適用時間帯に走行した分のみ
新しい深夜割引はメリットだけじゃない!
高速道路のヘビーユーザーであれば「深夜割引」を意識していることだろう。現在の深夜割引というのは、対象となる高速道路を、ETCを利用して、0時から4時までの間に走行していれば、通行料金が3割引になるというもの。
深夜1時に高速に乗って、4時に降りた場合が対象となるのはもちろんのこと、前日の23時に高速に乗って、翌日の5時に降りたケースでも通行料は30%オフとなる。
昨今、サービスエリアやパーキングエリアの駐車スペースがいっぱいになっていて利用しづらいという声もあるが、こと真夜中の駐車場不足は深夜割引の影響が少なくないだろう。

おそらく、そうした“バグ”があることは運用側も薄々気づいていたはずで、このたび高速道路の深夜割引が改正されることになった。公表されている見直し案の概要は以下のようになっている。
・深夜割引適用時間帯に走行した分のみ3割引
・深夜割引適用時間帯を22時から翌5時に拡大
・深夜割引の見直しにあわせて、400km超の長距離逓減制を拡充
まさしく「飴と鞭」といえる内容だ。
たしかに従来の0~4時という対象時間帯はあまりに短く、深夜割引を利用するための時間調整が生む違法な駐車などが社会問題となっていた。対象となる時間帯を4時間から7時間に増やしたというのは、まさしく改良といえよう。
トラックドライバーの労働環境悪化につながる可能性も
一方で、3割引の対象となるのが適用時間帯に走行した分だけに限定されたことで、超ロングのユーザーにとっては改悪だ。
これまでは深夜割引の対象時間帯に高速道路上にいれば、全行程が割引対象となったが、改正案では22時から5時までの間に走行した分だけに限定されてしまう。ロングを利用するドライバーにとっては、トータルでの通行料金が増えてしまうことになる。

こうなると深夜帯にパーキングエリアなどで長時間の休憩をとってしまうと、深夜割引の恩恵を受けられないことになってしまう。パーキングエリアでの長時間駐車の防止にはなるだろうが、逆にトラックドライバーなどは深夜帯の休憩を最小限にしてできるだけ走行距離を稼ぐよう指示されるわけで、労働環境悪化につながりかねない。

そのあたりを配慮して『400km超の長距離逓減制を拡充』するという“飴”も用意しているのだろうが、ただでさえ人手不足が問題となっているトラックドライバーの負担を増やすような見直しは、社会生活を支える物流へのネガティブインパクトが大きすぎるように思える。

深夜割引の見直しについては令和6年度中を目処に実施される予定だという。具体的な見直し運用の開始時期については検討中ということだが、そもそもの内容自体を物流の持続可能性を軸にして見直すことを求めたい。
また、対象時間帯の走行区間を把握するためには、道路にETC車載器と通信する設備を用意する必要がある。現時点でもある程度はETCを利用した通信設備は整備されているが、全エリアで走行区間を把握するようにするためには通信設備の増設やシステム改修が必要になる。そうしたコストをかけるだけの価値があるかどうかも議論すべきだろう。
