この記事をまとめると
■年度末決算セールでは新車販売を促進させるためのさまざまな特典が用意される



■特典でカツ入れをしたり、車両管理をしやすくしたりと、ディーラー側にもメリットは多い



■ローンの金利は、資本の異なる販売会社が同地域内にある場合はそれぞれで異なる場合がある



3月は多くのディーラーで年度末決算セールが開催される

新車販売において、残価設定ローンを利用して新車購入する人はいまや珍しくなくなっている。あるメーカー系新車ディーラーでは全体の6割以上が残価設定ローンを利用すると聞いたことがある。



本稿執筆時点では、ちょうど時期としては2022事業年度(2022年4月から2023年3月)締め年度末決算セールが各新車ディーラーで展開されている。

年度末決算セールは、年間でもっとも新車が売れる時期とされており、より新車販売を促進するためのさまざまな特典が用意される。そのなかで、ここ数年はとくに残価設定ローン金利を期間限定で超低金利にしてキャンペーンを打つことが目立っている。



いくつか紹介すると、ホンダ系正規ディーラーとなる「ホンダカーズ」では、軽自動車のN-WGN、そして登録車のフィット、フリード、ZR-Vを対象に2.5%という低金利キャンペーンを実施している。ZR-Vは2023年3月31日までにローンの申し込みを条件としているものの、ほかの3車は「予告なく終了する」としている(ZR-Vも期限を切りながら予告なく終了ともしていた)。しかも、「一部のタイプ・カラーによっては登録(軽自動車は届け出)までに時間を要するため対象とならない場合もある」としている。



超低金利や残価率アップなどあの手この手! 新車の年度末決算セ...の画像はこちら >>



なお一般的な残価設定ローンとなる残クレのほか、ZR-V以外の車種では全2回払いとなる残価設定ローン「バリ保(バリュー保証プラン)」も特別低金利の対象としている。



スズキでは、スズキの残価設定ローンとなる「かえるプラン」について、ジムニー及びジムニーシエラを除く全車を対象に1.9%の特別低金利キャンペーンを2023年3月31日申し込み分までを対象に行っている。「かえるプラン」は一定期間内のメンテナンス費用を前払いすることで割安となるメンテナンスパックがローンを組むと標準付帯されるのが大きな特徴となっている。



超低金利や残価率アップなどあの手この手! 新車の年度末決算セールは「ディーラーの思惑」を読むことが鍵だった
スズキ・ソリオのフロントスタイリング



また、三菱自動車系正規ディーラーでは、デリカD:5を対象に、2023年3月31日までに信用照会(審査)が通ることを条件に0.99%という超低金利キャンペーンを実施している。情報ではこの期間中は設定する残価率も通常よりアップしており、月々の支払額もかなり抑えることが可能とのこと。ただし、36回払い限定となっている。



ディーラーによって特典や金利などはさまざま

スズキの「かえるプラン」はメンテナンスパックが標準付帯されるところに注目してもらいたい。

軽自動車ユーザーは新車が納車されると、その後のメンテナンス窓口を購入したディーラーではなく、街のガソリンスタンドや格安車検業者などにして費用を節約する傾向がある。また、軽自動車を現金一括払いで購入するなら、ナンバープレートを取得、つまり新規届け出申請だけした未使用状態の中古車を購入したほうが買い得感は高いので、正規ディーラーでは軽自動車はリセールバリューが高いこともあり、意外なほど残価設定ローンを利用して購入する人が多い。



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スズキ車のメンテナンスのイメージ



スズキとしてはメンテナンスパックを付帯することで、ディーラーでメンテナンス管理を行い、ローン完済後に車両返還されたときに認定中古車として販売するに足る管理の行きとどいた良質な車両(走行距離も制限かかるので)を計画的に確保したいという背景もあり、残価設定ローンに積極的とも聞いている。



ホンダの場合は売れ筋のN-BOXやステップワゴン、ヴェゼルが対象外になっていることに注目してもらいたい。荒っぽい言い方をすれば、放っておいても売れる人気車に低金利ローンを設定して販売にカツ入れする必要はない。ZR-Vは新規投入車種という部分があるが、そのほかのフィットやN-WGNは明らかにカツ入れという意味合いが大きいだろう。



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ホンダ・フィットのフロントスタイリング



また、いまどきとはいえ需給体制にも余裕があると考えていいだろう。フリードはモデル末期でそんなに遠くないタイミングでオーダーストップになるだろうから、モデルの新しいライバル、シエンタに支払い面で差をつける意味で対象になっているものと考えられる。



デリカD:5の場合は、情報の残価率のアップが行われていれば(試算では3年で残価率は約60%になっていた)、そこに注目して欲しい。いまどきの残価設定ローンでは、実際の3年や5年後の予測相場より低めの残価率を設定するのが一般的。販売現場では完済前に下取り査定額で残債整理して乗り換え促進を行うのが常道となっている。



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三菱デリカD:5のフロントスタイリング



そのなか、恣意的に残価率をアップしていれば、支払い途中での下取り査定での残債整理は難しくなるので、完済するまで身動きできないことになってしまう。

結果的にはデリカD:5など三菱車へ再び乗り換えるなどディーラーとしては囲い込みが行いやすくなるのである。つまり、デリカD:5に惚れ込んでいたり、三菱車を乗り継いでいきたいという意思があれば、かなり買い得なプランであるといえるだろう。



いわゆるディーラーローンは、メーカー系信販会社が金利の違いなどでいくつか持っている商品をディーラーが選ぶこともある。つまり、同じメーカーの看板を掲げていても、資本の異なる販売会社ならば、用意されるローン金利も異なることがある。トヨタ系や日産系、ホンダ系では、同じ地域内に資本の異なる販売会社が複数存在するので、いくつか店舗をまわって金利を確認するというのも一考である。

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