この記事をまとめると
■ウルスの登場によってランボルギーニは大幅に販売台数を伸ばした■過去には4ドアの「エストーケ」というモデルも発表しており、発売直前でお蔵入りした
■2014年にはハイブリッドのハイパフォーマンスGTとして「アステリオン」を発表していた
ウルスの躍進で絶好調のランボルギーニ
ランボルギーニにとって昨2022年は、再び過去の記録を塗り替える大幅な躍進を達成した年になった。参考までにこの2022年にカスタマーに納車されたランボルギーニ車は全世界で9233台。売上高は20億ユーロを超える新記録という結果だったが、この好調な業績を牽引したのは、もちろんスーパースポーツSUVのウルスにほかならない。
実際にこの2022年に販売された9233台のうち、ウルスは5367台。これは全体の約6割を占める数字に相当する。ウルスの好調な販売はこれからも続くだろう。
ランボルギーニにとって、ウルスの開発を決断するには相当な難しさがあったことは容易に想像できる。彼らにはかつて、LM002というSUVというよりもタフなオフローダーを生産した実績があるが、それは当時の経済的な環境もあって成功を収めることはできなかった。
1990年代をV型12気筒ミッドシップのディアブロの生産のみで耐え忍んだランボルギーニにとって、まさに歴史的な変化が訪れたのは1998年のこと。この年、ランボルギーニは新たにアウディグループに編入され、2001年には新型12気筒ミッドシップのムルシエラゴを、そして2003年にはランボルギーニの経営状況を一気に改善させる立役者となったV型10気筒ミッドシップのガヤルドを、アウディ主導のもとで生み出すことに成功したのだ。

その成功によって、ランボルギーニにはこれまでには不可能だった、さまざまなチャレンジへの道が開かれた。それは2ドアもしくは4ドアの4シーターGTであり、またのちにウルスとして実現するSUVなどのプランで、もちろん技術面にも十分な投資を行うことが可能になった。
いまやランボルギーニはカーボンテクノロジーにおいては世界のリーディングカンパニーのひとつでもあるし、電動化の分野では、2019年に発表したシアンFKP37で、一般的なリチウムイオン電池に代えて、スーパーキャパシタを搭載することにも成功している。

ランボルギーニには4ドアサルーンを登場させる計画もあった
時代は若干さかのぼるが、ランボルギーニがミッドシップのスーパーカー以外のプロダクトを考えていたことが初めて公になったのは、2008年のパリサロンでのことだった。ここに出品されたエストーケは、全長が5105mmにも達するビッグサイズの4ドアサルーン。

フロントにミッドシップされるエンジンは、ガヤルドから移植された5.2リッターのV型10気筒自然吸気。これにeギヤと呼ばれる6速のセミATを組み合わせ、4輪駆動のシステムを搭載したのがパワートレインの構成だった。
ランボルギーニはこのエストーケを発表した段階で、将来的にはV型8気筒エンジンの搭載、そしてハイブリッド仕様の追加もコメントしていたから、それがプロダクションモデルとして近く発表される可能性も高いと予想されていた。

しかし、ランボルギーニはこのエストーケと、将来ウルスとなるべきSUVの重要性を比較。当時、4モデルを生産する余裕はまだなかった彼らは、エストーケのプロダクション化を断念しなければならなかったのだ。
一方の電動化に対する取り組みとしては、2014年のやはりパリサロンで、アステリオンLP910-4というコンセプトカーが発表されたのが記憶として残る。PHEVのシステムを持つこのモデルは、フロントに5.2リッターのV型10気筒ガソリンエンジンを610馬力の最高出力で搭載し、トランスアクスル方式でリヤにレイアウトされた7速DCTを介して後輪を駆動する。

エレクトリックモーターは3基を搭載。ひとつは7速DCTとともに後輪を駆動し、残りの2基は前輪を駆動。エレクトリックモーターの最高出力はトータルで300馬力とされており、システム全体では910馬力のパワースペックを誇っていた。
このアステリオンLP910-4はもちろん前輪駆動でのゼロエミッション走行が可能で、その航続距離は50km。

そしてこの技術は、ここからさらに10年以上の時を経て、最新のV型12気筒ミッドシップ、レヴエルトの基礎を築いていったのだ。
そうなると気になるのは、レヴエルト、ウラカン、ウルスに続く、第4のモデルの存在。それが誕生するとなれば、個人的にはエストーケのコンセプトを受け継いだ、個性的で美しく、そしてもちろん世界の第一線にある運動性能を持つ4ドアサルーンを期待したいところなのだが。