この記事をまとめると
■「2000ドルバス」と呼ばれる貸切バスの需要が増えている



■訪日外国人が日本での移動手段として貸切バスを利用しているという



■一部地域では需要に応えられない状況になるほど人気が高まっている



訪日外国人の新たな移動手段に貸切バス!?

最近貸切バス事業者の間では、通称「2000ドルバス」というものの需要が増えてきているとのこと。本稿執筆時はすでに日本入国(日本人は再入国時)に際しての新型コロナウイルスワクチンの接種証明の提示がなくなり、まもなく新型コロナウイルスが感染法上の5類に格下げされるという時期。そのような状況下、コロナ禍前のレベルに迫るほど世界各国から多数のインバウンド(訪日観光客)が日本に押し寄せている。

中国からのインバウンドの復調がまだまだこれからということもあるので今後は微妙だが、現状ではインバウンドによる日本国内での旅行形態は団体旅行から個人旅行へとシフトしている。



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とはいうものの、街なかや鉄道、路線バス車内などで見ていると、家族や仲良し同士による10名前後のグループで移動する姿も目立っている。このようなグループで旅行を楽しむインバウンドのなかから、「メルセデスベンツ・スプリンターをチャーターしたい」との要望が関係者に寄せられるようになったとのこと。



メルセデスベンツ・スプリンター(以下スプリンター)は、メルセデスベンツブランドのLCV(ライト・コマーシャル・ビークル)となり、欧米や、最近では東南アジアあたりでもこのスプリンターをベースとした「ミニバス」というものがラインアップされ活躍している。筆者の経験ではアメリカの空港近くにあるトランジットホテルにおいて、空港~ホテル間のシャトルバスとして、よく利用している。



いま日本で注目される「2000ドルバス」! 訪日外国人旅行者の「観光バス」貸し切りが流行していた
メルセデス・ベンツ・スプリンターの走行写真



しかし、日本国内ではスプリンターは正規販売されていない。そこで「スプリンターはないが……」として、トヨタ・ハイエースコミューターやトヨタ・コースターを紹介しても「狭い」などと反応はいまひとつとのこと。



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トヨタ・ハイエースコミューターの写真



「2000ドルバス」の需要が高まり十分対応できなくなるまでに

そこでさらに「それなら大型観光バスを貸し切ってはどうか」と勧めると、当初「それでは予算オーバーになる」ということになったそうだ。そこで、予算を聞くと欧米や東南アジアあたりでは、スプリンターを1日チャーターすると2000ドル(約26万円)程度必要で、大型観光バスになると4000ドル(約52万円)かかるとのこと。そこで「日本なら2000ドルで大型観光バスをチャーターできる」と説明すると、「ぜひ」ということになり、いまでは東京都内を走っている大型観光バスを見ると、10人程度の少人数しか乗っていない車両をよく見かけるようになった。先日都内の某有名シティホテルの車寄せで迎えのクルマを待っていると、「●●FAMILY御一行様」というような表示を掲げた観光バスがやってきて、アジア系インバウンドの総勢15名ほどのファミリーが乗り込んで出かけて行った。



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ホテル前にいる大型バスのイメージ写真



2000ドルで1日チャーターしたとしても、たとえば東京から日光へ日帰り旅行に行くなどといった使い方は少なく、チャーターしてもホテルの駐車場などで待機してもらい、「浅草へ出かける」とか、「夕食に銀座のすし屋に行く」など、ハイヤー代わりの使い方がメインとなるので、担当運転士としても負担が少なく、例えば都内の有名デパートで爆買いしたあとに荷物をバスに積む手伝いをしたりするたびに高額なチップももらえるので運転士にも好評とのことである。

事業者としても2000ドルというチャーター料金は魅力的なものとなっているようだ。



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浅草の雷門の写真



この「2000ドルバス」は東京よりも北海道でよりニーズが高まっており、現状では需要が多すぎて十分対応できなくなってきているとも聞いている。



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十勝帯広空港のロータリーの写真



円安傾向などもあるが、日本の物価が諸外国より安いという現実があるからこその需要だが、インバウンドとしても「日本で大型観光バスをチャーターして旅をした」というのは思い出のひとつとなり好評となっているようだ。ただ、本来のインバウンドのニーズに対応できていないという面では、観光立国を推進しているというなかであっても、官民問わずインバウンドのニーズをつかみ切れていないまま訪日を呼び掛けており、微妙なところでミスマッチを続けながら観光立国をめざしている危うい一例といってもいいだろう。

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