この記事をまとめると
■GM(ゼネラルモーターズ)のブランド「ビュイック」について解説■かつてセダンのイメージが強かったが、現在アメリカではクロスオーバーSUVのみを販売
■しかし中国ではセダンやBEVなどもラインアップ
現在は大型クロスオーバーSUVが人気!
現状アメリカのGM(ゼネラルモーターズ)には、アメリカ国内を見ると、キャデラック、シボレー、GMCそしてビュイックというブランドがある。かつて21世紀初頭にはポンティアックやオールズモビル、ハマー(GMCに含まれた)、サターンなどもあったが2010年までに消えた。アメリカ自動車産業自体の衰退もありブランド数は減少の一途をたどったのである。
キャデラックやシボレーブランドが残るのは日本にいてもわかるし、トラック&SUVに特化したGMCブランドがアメリカで残るのも理解できる。ただビュイックブランドが残ったのは意外にも見える。ビュイックブランドは「シボレー以上キャデラック未満」的な位置づけのラグジュアリーブランドとなる。過去のクラウンのような、いわゆるオヤジセダン的ラインアップが目立っていたのだが、いまはクロスオーバーSUVのみをラインアップするブランドとなっている。
現状稼ぎ頭となっているのは2008年に初代モデルがデビューした、3列シートを持つ大型クロスオーバーSUVとなる「アンクレイブ」といえるだろう。現行モデルで2代目となるが、「ちょっとセレブなママが運転するファミリーSUV」というイメージで売ってきており、アメリカでのテレビコマーシャルもそのイメージを強調している(アメリカではママが子どもを乗せてサッカー教室などへ送迎したりするのはミニバンではなく、3列シートを持つクロスオーバーSUVの使用がトレンドとなっている。ミニバンは生活臭が強すぎるようだ)。

少し前にはコンパクトクロスオーバーSUVとなる「アンコール」など小型SUVで若い女性ユーザーをターゲットにしていたが、それはどうも不発に終わっているようである。

少々古くなるが、2021暦年締めでの中国国内のメーカー別新車販売ランキングで、GMの合弁会社である「上汽通用(上海GM)」は、一汽大衆(一汽VW[フォルクスワーゲン])に次いで2位となっている。中国がいまのような世界一の自動車市場になる過渡期からGMは中国市場で強みを見せていた。しかも中国で強みを見せるGMだがビュイック(中国語では「別克」と書く)ブランドがアメリカ市場を軽く超える存在感を見せているのである。

中国ではアメリカよりもラインアップが豊富!
中国市場では本国アメリカではラインアップがなくなったセダンや、BEV(バッテリー電気自動車/アメリカではラインアップされていない)など、アメリカよりもはるかに多いモデルラインアップとなっている。

初代モデルは1999年に中国国内で生産開始されている。当時はミニバンを中国国内でラインアップするメーカーは少なかった。まだ「ひとりっ子政策」を政府が進めていたこともありミニバンニーズは期待できないと判断していたようだ。そのためGL8もファミリーミニバンというよりは、政府関係や大企業などでの幹部用社用車として重宝され、そのような需要がいまも目立っており一般大衆の憧れにもなっており、日系メーカー車も含め、ライバル車よりも高いステイタスの維持を続けているのである。

GL8は人気はあるものの価格は高いので庶民レベルではなかなか購入できないので、GL6という弟格のモデルを投入したりもしている。筆者は「英朗(エクセル)GT」というトヨタ・カローラクラスのコンパクトセダンが好きなのだが、その弟格の「凱越(エクセル)」というモデルをラインアップするなど、とにかく中国国内のラインアップは緻密なものとなっている。

中国市場でよく売れるので、見た目も中国を意識したモデルが多くなり、一部アメリカ車ファンからは「中国臭が強い」として敬遠されることもあるようだ。また、アメリカでもラインアップされている「エンビジョン」の初代モデルは中国生産車がアメリカで輸入販売されていた。また、2023年夏に北米市場導入予定となっているクロスオーバーSUVの「エンビスタ」は、中国での合弁会社である上海通用五菱汽車で開発され(すでに中国市場ではラインアップされている)、北米導入モデルは韓国で生産され輸入される予定となっている。

かつて友人が日本では正規輸入販売されていなかった、6代目ビュイック・センチュリーをアメリカから個人輸入して乗っていた。「cc」ではなく「キュービックインチ」で設計されたV6エンジンは3.1リッターとなり、ベンチシート&コラムシフトを採用。

中国市場があるからブランドが残っているともいえるが、ただ筆者は東西沿岸部をよく訪れるが、内陸部や南部はあまり訪れる機会はないので、そのような地域ではアメリカでもビュイックブランドはいまも根強い需要があるのかもしれない。