この記事をまとめると
■クルマ好きがテレビをみている時に気になることを解説■自動車保険のCMに出てくるクルマの車種について考えてしまう
■またドラマの時代設定と劇中車の年式が合っていないと違和感を抱くことも
つい自動車保険のCMに出てくるクルマの車種を考えてしまう
私は自動車ライターという職業で生計を立てているだけあって、もちろんそれなりにクルマ好きではある。だがこの業界には変態的なまでに「日々、クルマのことしか考えてない」みたいな人も多いため、そういった人を見るにつけ、「自分なんてぜんぜん“クルマ好き”じゃないよなぁ……」などとも思っている。
だが(毎日ヒマなので)テレビジョンを視聴していると、「やっぱり自分はなんだかんだでクルマ好きであり、普通の人はこんなこと、気にもしないのだろうなぁ」と気づかされる瞬間は多い。
たとえば自動車保険のCMを見ているときである。
通常、自動車保険のCMというのは、何らかの人が何らかのクルマをガチャン! と事故らせてしまい、「あちゃー! どうしよう……」みたいなシーンが含まれる場合が多い。
その際に、CM内でガチャンと言わせてしまったクルマが、たとえば明確にトヨタ・プリウスであったななら、トヨタ自動車のしかるべき部署からアクサやらチューリッヒやらソニー損保などに苦情が入ることは想像に難くない。何なら訴訟案件になるのかもしれない。

それを避けるため、アクサやらチューリッヒやらソニー損保やらはCM内で「なんだかよくわからないクルマ」をワンオフないしはCGで作り、ガチャンと言わせるわけだ。
その際に、普通の人は「あー、役所広司さんが(CM内で)事故ったなぁ」とか、「内田有紀さん、相変わらず美人だなぁ」などとしか思わないのだろう。まぁそのほか考えるのは「保険、ダイレクト型に替えようかな……?」ぐらいのことであるはずだ
だがクルマ好きは役所広司のことなど考えないし、内田有紀も眼中にない。何なら保険のこともいっさい考えない。
考えるのは、「……ところで、あの車両のベース車両は何だ?」というだけである。我ながらキモチワルイ性癖だと思うが、これはもう避けようのない宿痾というか性(さが)のようなものなので、どうしようもないのである。
もはやコンテンツを純粋に楽しめない……
そのほか、「劇中車の年式にいちいちうるさい」というのもあるだろうか。
1970年代初頭を舞台としたドラマを見れば、筋や役者さんの演技は(ほぼ)そっちのけで「マツダ・コスモAPが発売されたのは1975年だから、この時代に走ってるわけがないじゃないか! おかしいよ!」と唾を飛ばして周囲の人にウザがられ、1980年代後半のバブル初期を題材としたドラマであれば、「……確かにあの時代、“小ベンツ”ことW201型メルセデス・ベンツ 190Eはたくさん走っていたけど、サッコプレートが付いた後期型は1988年からであって……」などと誰にも求められていないウンチクをブツブツつぶやき、嫌われる。

こういった「どうでもいいこと」をいちいち気にしていると、せっかくのドラマの感動が薄まってしまうため――つまり自分にとって“損”であるため――筆者はなるべく気にしないように努めている。努力はしている。
だが過日。NHKの朝ドラ『舞いあがれ!』にて、主人公のまいちゃんが2013年に運転していたIWAKURAの社用車であるトヨタ・プロボックスが、2014年8月以降に販売されたマイチェン型であることに気づいた私は、思わずごはん茶碗を左手に持ったまま立ち上がり、「まいちゃん、それおかしいよ! しかもなぜか3ナンバーだし!」と叫んでしまった。

あの回が放映されたのは確か2023年1月だったと記憶しているが、以来4カ月、家人は私に口を利いてくれないままでいる。
そのほかでは「劇中車複数の車種から、表立って公表はされていないスポンサーを推測する」「箱根駅伝にて、がんばっている選手ではなく、新たに先導車として起用された新型プリウスについて『おっ?』と思う」「ウルトラセブンの再放送を観て、ポインター号の前後オーバーハングの長さを心配する(緊急出動時、狭い道に入って行けるの?)」などの悪癖もあり、これら悪癖をどうにかして改善したいとは思っている。そうしないと、テレビジョンのコンテンツを純粋に楽しめないからだ。

だがこれはもう“クルマ”というものを好きになってしまった者の宿命のようなものでもあるため、半ばあきらめているというのも事実だ。
この悪癖が治るのは死ぬときか、あるいはボケたときなのだろう。それまでは、悪癖とボチボチ付き合っていくしかないのだ。