この記事をまとめると
■現在のランボルギーニ躍進の礎となったガヤルドにあらためて試乗した■ガヤルドの5リッター500馬力V10による自由自在なドライビングは現在でも色褪せていない
■その進化形であるウラカン・テクニカでのワインディングも負けず劣らず楽しいものだった
スモールランボの傑作「ガヤルド」にあらためて試乗
1988年にV型8気筒エンジンを搭載する「ジャルパ」の生産を中止して以来、ランボルギーニのプロダクションモデルは、細々と生産が継続されたオフロード4WDの「LM002」を除けば、V型12気筒エンジンをミッドシップするディアブロに限られることになった。もちろん市場ではよりコンパクトでリーズナブルなランボルギーニを望む声は強かったし、実際にランボルギーニも1980年代にはさまざまなプロトタイプの製作を行っていた。
しかし、それが現実のものとなるのは、ランボルギーニがアウディに吸収されて以降の2003年、5リッターのV型10気筒エンジンをミッドシップして誕生した「ガヤルド」まで待たなくてはならない。
その最初期のガヤルドがいま、2022年に発表された「ウラカン」の最終進化形ともいえるテクニカとともに自分の前にある。どちらのキーを選択するかはもちろん自由だが、ランボルギーニらしい荒々しさを感じるには、できるだけプレーンな仕様ともいえる初期型を選ぶのがベストだろう。
ちなみにこのウラカンも、ランボルギーニのポロ・ストリコで完全な整備を受け、いつもはミュージアムでゲストからの視線を集める存在の一台である。ガヤルドには6速MTとeギヤと呼ばれる6速のセミATの両仕様があるが、試乗車は後者のほう。リバースギアのスイッチが、ステアリングホイールの左側にかなり離れてレイアウトされているのも懐かしい。

ガヤルドの走りは、常にエンジンの存在を意識させられるものだ。V型10気筒エンジンの独特なサウンドとバイブレーション、そして5リッターという排気量の利を生かした500馬力の最高出力と510Nmの最大トルク。駆動方式はビスカスカップリングを使用したフルタイムの4WDだから、常に最適なトラクションが4輪から得られることになる。そのコーナリング性能は現在のレベルでも大いに高く評価できる。
最新のウラカン・テクニカはさすがの乗り味
ゆったりとしたペースのクルージングは、このガヤルドが見せるもうひとつの魅力。前後のサスペンションは常にフラットな乗り心地を演出し、アクセルの踏み方ひとつで追い越し加速や、そこからの減速は自由自在だ。高速域でのスタビリティも高い。

それは前後して12気筒モデルのムルシエラゴもデザインした、ルーク・ドンカーヴォルケのエンジニアリング能力による部分も大きく、可変式リヤスポイラーのほかに、とくに目立つエアロパーツを持たないのにもかかわらず、ここまでの空力性能を実現し、また同時に過去のランボルギーニ車のイメージを採り入れてくる才能には改めて感動させられた。

このガヤルドのファーストモデルとの比較のために、ランボルギーニが用意してくれたウラカン・テクニカは、V型10気筒エンジンが5.2リッターとなり640馬力&565Nmというスペック。駆動方式がRWDとなるところも走りを極めたいユーザーにはうれしいところだろう。
スタイリングの担当はミティア・ボルケルト。ベースとなるウラカンのスタイルの中に、シアンやエッセンツァSCVからのイメージを採り入れているのもデザインの見どころだ。

キャビンはスイッチ類の操作性がガヤルドの時代よりかなり改善されているが、個人的にはむしろガヤルドのようなシンプルさの方を好む。
それはともあれ、ウラカン・テクニカでのワインディングは、本当に楽しい時間だった。RWDらしい素直なコーナリングはもちろんだが、さらに印象的なのはアルミニウム製のフレームやサスペンションの剛性が、やはりガヤルドの時代から比較すると大いに高まっていた。

今回試乗した両車の間に流れていた約20年という時間は、スーパースポーツの進化にとってはあまりにも長いものであることを改めて知ることができた試乗だった。