この記事をまとめると
■バッテリーは使い続けることで劣化する



■EVのバッテリーも例外ではない



■ダメージの少ない充電の方法について解説



バッテリーの耐久性は大きく進歩している

電気自動車(EV)用に限らず、バッテリーは使い続けることで劣化する。同様のことは、長距離を走ったエンジンさえ、古くなれば摩耗や内部の汚れなどによってオーバーホールしなければならなくなる。



バッテリー劣化は、スマートフォンなどでも体験しているのではないか。

一方、EV用はできるだけ長く使えるよう、改良が重ねられている。たとえば日産車の場合、8年または16万キロメートルのバッテリー保証となっている。ちなみに、メルセデス・ベンツのEQSなどは、10年または25万キロメートルの保証だ。日本人の多くのクルマの利用の仕方からすると、走行距離は比較的少なめであり、劣化によるバッテリー交換の機会は限られるのではないか。



充電回数は多くても問題なし! EVのバッテリーが劣化しやすい...の画像はこちら >>



かつて、日産の初代リーフの初期型は、バッテリー保証が5年または10万キロメートルだった。それから10年以上を経て、バッテリーの性能はもちろん、耐久性も大きく進歩している。



進歩した理由の一つは、電極性能が上がり、また車載容量が増え、充電量のゼロ近くまで電気を使い切らなくても日々十分に利用できるようになったからである。バッテリーの劣化を進める要因の一つに、使い方がある。100%の充電から10%を切るくらいまで電気を使い切ってしまうと、劣化が進みやすい。



リチウムイオンバッテリーは、継ぎ足し充電を繰り返し、少しずつ電気を補充するのが望ましい。充電する際には100%まで充電するのではなく、80%を目安に切り上げるとよい。もちろん、100%の充電をしてはいけないということではない。

遠出を予定する際は100%充電してかまわないし、その一方、日常的に長距離移動しないのであれば100%の手前で充電を切り上げたほうが、バッテリー劣化を抑えるのに効果的だという意味である。



普通充電をこまめに行うのが理想

また、メーターに0%の表示が出てしまうほど電気を使い切るのではなく、充電量の減り具合が少し不安になるころ、多少でも補足の充電をすることが、リチウムイオンバッテリーにとって快適な充電方法になる。



その昔、ニッケルカドミウム(通称ニッカド)やニッケル水素バッテリーを使っていたときは、電気を使い切ってから充電しないとメモリー効果が起き、満充電にできなくなるといった特性があった。しかし、リチウムイオンバッテリーにメモリー効果はない。こまめに補充電を繰り返すのが適している。



ところで急速充電は、基本的に30分で80%までしか充電できないので(立て続けに繰り返し充電するとより多く充電できる)、100%まで充電しないためリチウムイオンバッテリーに負担の少ない充電方法だと考える話がある。だが、それは正しくない。単に100%か80%かということだけではなく、リチウムイオンバッテリーにとって負荷の少ない充電は、200ボルト(V)による普通充電をこまめに行うことだ。公式な数字ではないが、普通充電をしていれば、100%近い充電をしても10万キロメートル走ってなおバッテリー劣化はほとんどないという事例もある。



充電回数は多くても問題なし! EVのバッテリーが劣化しやすい状況とは
EVを充電するイメージ



急速充電を身近なことに例えれば、早食い競争を毎食するようなものだ。それではお腹をこわしやすいだろう。よく噛んで、ゆっくり食事をするのが健康によい。

腹八分目ともいうではないか。リチウムイオンバッテリーに適切な充放電は、それに似ている。



まとめると、リチウムイオンバッテリーといえども、バッテリーである以上劣化はする。しかし、充放電の仕方によって寿命を延ばすことはできる。基本は普通充電で、100%に至らない範囲の充電をし、0%近くまで使い切る乗り方をできるだけ避ける。



そのためにも、移動の経路で行う急速充電より、自宅と目的地などで不自由なく充電できる普通充電の基盤整備が不可欠なのだ。

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