この記事をまとめると
■「フォーミュラジムカーナ」と呼ばれる自動車部の学生を対象とした競技が開催された■会場には多くの学生が機材車や移動用のクルマとして愛車を持ち込んでいた
■西日本大会の会場に集まった自動車部員たちの愛車を紹介する
西日本の自動車部員たちが愛車を持って集結!
本サイトで何度か紹介している「フォーミュラジムカーナ」と呼ばれる、全国の大学自動車部の部員たちを対象とした新しいモータースポーツカテゴリー。詳しいことは割愛するが、このシリーズは「車両」「タイヤ」「オイル」「工具」といった、使用される道具すべてが協賛企業から貸し出されたモノで戦うという、完全なイコールコンディションが特徴となるモータスポーツだ。
車両メンテナンスもメーカーによって行われているので、マシンに個体差がない。
さて、少し説明を挟んだとことろで本題に移ろう。この「フォーミュラジムカーナ」という大会は、前述したとおり”自動車部”の”学生”が参加している。数多にサークルがあるであろう大学という環境において、このご時世に”自動車部”をわざわざ選ぶというのは、将来有望な変態(褒め言葉)の集いでもあるとも言えよう。

また、免許を取って約9年間ずっとクルマを趣味にしてきた筆者からしたら非常に親近感の沸く人たちでもある。世のなかもっと楽しいことがあるなか、「金がかかり」「汚くて」「キツい」と、3Kが揃っているわりと最悪な趣味がこのクルマという世界(でも楽しい!)なのだ。
今回は、7月上旬に開催されたフォーミュラジムカーナの西日本大会に取材へ訪れた筆者が、会場で目に止まった将来有望な若人たちに愛車を熱烈に語ってもらったので一挙に紹介しよう。クルマを持ってる人はきっとわかってくれるであろう意見が飛び交ったほか、クルマを持ってない人はきっと欲しくなるような話が掘れば掘るほど出てくる。若人の熱意、覚悟してごらんあれ!
大分大学:立花義鷹さん 4年生(日産 マーチ)
まず声をかけたのは、「俺を取材しろ!」との勢いでやってきた立花さん。と、いうのは嘘で、どうやら彼、自動車のメディアに興味があったそうで、筆者のところにわざわざやってきてくれたというイマドキ珍しい若者であった。じつは彼、生まれも育ちも関東なようだが、学科などの関係もあってはるばる大分県の名門大学まで通うことにしたそう。そんな彼は、大分から鈴鹿ツインサーキットまで、仲間を乗せて自走でやってきたそうで、そのアシ車はK13型のマーチだった。

ほかにもクルマを持っているようで、聞いたところアルファロメオ147、プジョ−307SW、スズキ・スイフトスポーツ(HT81S)と大富豪(!?)。同時になんとなく好きな方向性が読めてしまったぞ!? ちなみにマツダのロードスターも大好きなようで、少し前まで所有していたとか。今回の愛車のマーチは、アシ車的な役割もあるようで、カスタムしている場所はブラックレーシングのアルミホイール程度。

2011年式でありながら、20万円もしないような価格で手に入れたコスパの良さもお気に入りポイントだ。当日はドライバーとして参加していた。
大分大学:足立智紀さん 3年生 (マツダ・アクセラ)
同じく大分大学所属の足立くん。彼もなんと生まれは関東で実家も東京都なんだという。大分にどんな魔力があるってんだ!? 唐揚げか? 温泉か? そんな彼の愛車はマツダ・アクセラ。もともとお父さんがダートトライアルなどをやっていたことから、小さい頃からクルマが好きだったとのこと。このクルマは最初、家族で使っていたクルマだったようで、そのまま親から受け継いだそう。ちなみに家族車であったといいながら、アクセラのセンターコンソールにはMTのシフトノブが生えていた。

それほどカスタムはしていないと言いながらも、MAZDA3純正アルミホイールを流用していたり、RS-R製のローダウンスプリングを組んでいたりと、ツボを押さえたカスタムも楽しんでいるそう。わかる人にはわかるいぶし銀な1台だ。

先述の立花くん同様、足立くんも当日はドライバーとして参加していた。将来は教員をしたいとのことだ。ぜひひとりでも多くの学生をこっち側の世界に引き摺り込んで欲しいと願っている。頼んだぞ!
名古屋大学:福田祥之さん 4年生(トヨタ・ヴィッツ)
「いかにも自動車部員!」なオーラを醸し出して現れたトヨタ・ヴィッツのオーナーは、当日もドライバーとして参加し、見事決勝大会へと駒を進めた名古屋大学の福田さんだ。じつは、話を聞くとよくいる生粋のクルマ好きではなく、大学1~2年のころに他大学のクルマ好きの友人が乗っていたトヨタのAE111レビンで、最寄り駅まで送迎してもらった際に、「MT車格好いいじゃん!」と感動してしまい、こちら側へきてしまったという結構珍しい人種。だいたいのクルマ好きは「子どもの頃からミニカーで遊んでて」「ゲームをしてて」「親がクルマ好きで」というのが多いのだが……。

そんな彼の愛車はこのやる気満々なトヨタ・ヴィッツだ。まだまだ街で見ることが多い不朽の名車でもある。このヴィッツを選んだ理由は、「形が好きで、安くてパーツがたくさんあるから」という凄く現実的な理由。事実、このヴィッツと同型の車両を使って競技をしているOBが多いほか、部室の裏にも部品取り車が転がっているようで、パーツには困らないという。

自慢のポイントはこの黒いボンネット。じつはこれも競技車両から譲ってもらったパーツとのことで、年季が入っている一方で、縁起物的な意味も持たせているそう。

そのほか、開け閉めだけできるリモコンのみになったキーや、買ったときからなぜか塗られていた赤いインパネの化粧パネルなど、クセの塊であるヴィッツ。

将来はホンダ・インテグラタイプR(DC2)に乗りたいそうだ。ぜひVTEC沼へお越しあれ! 歓迎しますぞ~。
関西だからか!? 学生のクセが強すぎる!
神戸大学:武居直信さん 3年生(トヨタ86)
10年落ち前後のクルマを乗っている大学生は比較的お金持ちと言えよう。少なくとも筆者はそう思う。どう考えても当時の筆者では無理だったからだ。なので、この会場で86やBRZは、夜の六本木を走るフェラーリほどに輝いて見えるのだ。そんな輝くマシン、トヨタ86に乗るのが神戸大学の武居さんだ。

この86、じつはただの白い86ではない。お気づきだろうか? 競技ベースである86レーシングなのだ。なので、86/BRZレースに即投入可能だったスペックを備えており、3連メーターやロールケージが最初から備えられている超スパルタン仕様。それでいて一般的なモデルより数十万安かったのが決め手だったようだ。

ボディカラーはオフホワイトに全塗装されている。そのほか、エンブレムを自分で金色に塗装したり、かつて一世を風靡したTLアンテナなどを装備したり、若干VIP的な要素も織り交ぜているそう。
神戸大学:松尾玄人さん 3年生(スズキ・スイフトスポーツ)
さて、大学生はもちろんイマドキの20代前半のクルマ好きを支えているクルマは何かご存じだろうか。そう、スズキのスイフトスポーツだ。現行型は価格を考えると素晴らしくいいクルマなのだが、先述のとおり大学生的に考えればスーパーカー。そうそう買えない(と思う)。しかし、HT81Sから始まった先代までのスイフトスポーツであればバイトレベルで買うことも可能。パーツも山ほどあるので困らない。クルマを勉強する登竜門的1台なのだ。
そんなスイフトスポーツの初代モデルを愛車とする松尾さん。エンジンは唯一のNAで1.5リッターではあるが、3ドアのスパルタンなエクステリアは歴代モデルでもっともスポーティだと個人的に思う。

そんな松尾さんのスイフトスポーツは、「いかにも大学生」といったパーツチョイスであった。目を惹くのがショルダーの立ったやる気満々なハイグリップタイヤ「ナンカン NS-2R」。安いのにクラストップレベルでグリップするので、何度もリピートするほどお気に入りなんだとか。

また、リヤハッチに貼ってあるお守りや、無駄に長いアンテナもアピールポイントなんだそう。草レースでもなかなか速いということもあり、可能性の塊であるところがお気に入りと熱弁してくれた。ちなみにOBから10万円で買ったとのこと。そりゃ安い!

近畿大学:武田翔太さん 1年生(スバル・インプレッサWRX)
ここからはこの日の会場で1番人数が多かったであろう近畿大学の学生たちの愛車を紹介する。
トップバッターはまだ1年生ながら愛車としてスバル・インプレッサWRX(GDA)を所有する武田さんだ。彼はバイクも好きでいろいろ乗っているそうだが、両親の影響もあってクルマに囲まれた幼少期を過ごしていたという。そんな彼は、6代目のセリカを愛車にしたかったそうだが、両親と相談した結果、このインプレッサになったそうだ。

社外のエアロやカーボン製のGTウイングを装備するといった比較的王道なカスタムでまとめてあり、ホイールもWRブルーと相性のいいゴールド系をチョイス。いざ乗ってみると丸っこい顔が気に入り、いまではかけがえのない愛車となっている。

そんな武田さん、当日は応援として会場に駆けつけており、出走する選手への想いを聞いたところ「うちの大学では1位以外負けなんでぜひ勝って欲しいですね」と語ってくれた。実際、この日の近畿大学の予選結果は2位であったが、無事に決勝戦に進むことができたので、本番の結果が楽しみだ。
近畿大学:坂本剛一さん 4年生&田中愛美さん 1年生(スバル・レガシィB4)
初めに断っておくが、このふたり、カップルとかではないそうで、会場まで連れてくる関係でこの組み合わせになったとのことだ。だが、非常にノリがよかったので取材に協力頂いた。

さて、このBE5型のレガシィB4のオーナーは、男性である坂本さん。

それと、時速1.2km程度でぶつけてしまったバンパーも思い出の品。ん~。このノリ、まさに自動車部員!(筆者のまわりにも似たような人がかつていた)。

そのほか、3本スポークのホイールもこのクルマが新車で販売されていた頃の製品で、当時モノであることが自慢。所有年数は4年ほどだそう。将来乗りたいクルマは日産シルビアやトヨタ・チェイサーといったいわゆるFRのドリフト向けのマシンとのことだ。

で、一緒についてきたノリが良すぎ女子の田中さん。彼女、自動車部員とのことだが、まだ免許はまだないという。「なんで入ったの?」となるが、聞くところによると、高校時代の先輩との繋がりなどがあって入部に至ったそう。ただ、周囲の環境を見ていたら免許を取りたくなったそうで、近いうちに教習所に通って取得予定だ。

乗りたいクルマはラパンSSのような可愛くて中身が過激なクルマがいいそう。それなりにカスタムもしてブイブイ言わせたいんだとか。将来KYOJOとかに出る日が来るかも!? 楽しみだ。
近畿大学:長尾敦忠さん ?年生(スバル・レガシィB4)
やたらとスバル率が高い近畿大学だが、彼らは決してスバリストなわけではないそう。本当か? と疑いたくなるが、たまたま買ったという雰囲気なので信じよう。
さて、坂本さんの隣にいたBL5型のレガシィB4に乗る長尾さんは、やはり他の人たち同様に小さい頃からクルマが好きだったという筋金入りのクルマオタク。お父さんがホンダ・インテグラタイプRの4ドア(DB8)に乗っていたという過去もあるそうで、家族もみんなクルマ好きなんだそう。

そんな彼のレガシィは、仲間たちとつけた車高調キットやダークなボディとの相性がいい白いホイールなど、きっちりポイントを押さえたカスタムが光っていた。レガシィを買った理由は、「セダンに乗ってみたかった」という理由があるほか、この前にATのレガシィB4に乗っていたこともあり、このモデルに愛着があったそうだ。

ちなみに将来は自動車業界で働いてみたいそう。なお、「何年生なの?」と聞いたところ「あ、それは言えません……(笑)」とのことだった。深く詮索しないが、頑張って卒業してくれヨ!
近畿大学:中川岳人さん 4年生(トヨタ86&トヨタ・サクシード)
最後に紹介する中川さんは、ほかの近畿大学の生徒と違って2日目に取材をした。それはなぜか? 理由は初日の取材時に「明日面白い奴がきます!」と、ほかの生徒からの推薦があったからだ。
そんな彼の愛車はトヨタ86。選んだ理由は「クルマ屋に見に行ったらひと目惚れして勢いで買いました!」とのこと。この思い切りの良さ、これが若さですな! 素晴らしい! ただ、子どもの頃からクルマ好きではあったので、この86でなくとも何かしらは買う予定だったようだ。

カスタムのこだわりは、灯火類をクリア化したことによるスタイリッシュな佇まい。白いボディのせいもあってか非常に綺麗にまとまっていたのが印象的であった。また、5本スポークのホイールもこだわりなようで、いろいろ吟味して選んだそう。今年で所有して1年半ほどなんだそう。

そんな中川くんはもう1台クルマを持ち込んでいた。それがトヨタ・のサクシードだ。人は一人なのに、なぜかクルマが2台ある謎の光景であったが、聞くとサクシードは友人を使って持ってこさせたそう。と、いうのもこのサクシード、土曜日の予選日に埼玉から個人売買で買った個体を引っ張ってきたばかりだという。なので、ほぼ初お披露目状態。

とはいえこのサクシード、随分といじられていて学生たちのクルマが並ぶ駐車場でもひときわ存在感を放っていた。買った理由は就職先が土木系ということもあり、通勤で使いたいという理由があるからだという。「クルマはクルマ、仕事は仕事で分けて楽しみたいですね」と今後のビジョンも語ってくれた。
と、ここまでフォーミュラジムカーナの会場にいた学生たちの愛車を紹介させていただいたが、「若者のクルマ離れ」と散々言い古されたセリフがあるが、これほど熱意のある20代が、一部とはいえこれだけいるのだから、決して自動車業界の未来もそう暗くないのではないかと思った。

実際、筆者の25年以上前に作られた愛車にも多くの学生が寄ってきて、いろいろ語り合ったり質問をしあったり、会場にいた各自動車メーカーやサプライヤーの方たちとも積極的に会話をしていたのも印象的であった。
このフォーミュラジムカーナのさらなる発展と、ここからひとりでも多くのクルマ好きが増えてくれることを祈りたい。