この記事をまとめると
■フォルクスワーゲンのスポーツグレードの印象が強い「GTI」だが他ブランドでも使われている■元々はインジェクションを意味する「i」であったが徐々にホットハッチに使われ始めた
■国産車にも「GTI」という称号のホットモデルがラインアップされていた
フォルクスワーゲンのイメージが強い「GTI」という称号
GTIと言うとクルマ好きの多くは、フォルクスワーゲン(VW)のゴルフGTIを思い出すだろう。初代はいまから50年近く前の1976年に生まれ、2代目からは正規輸入が続いていることもあって、輸入車全体で見てもポピュラーな1台だ。
でもゴルフ以外にもGTIを名乗った車種はある。
そもそも世界初のGTIはゴルフではない。たとえばマセラティは1950年代から60年代にかけて生産していた3500GTに、途中でキャブレターをインジェクションに換えた仕様を追加していて、3500GTIという名を与えていた。

ゴルフGTIとほぼ同時期には、少し前までマセラティを傘下に収めていたシトロエンからも、GTi(iは小文字だった)が生まれている。当時のフラッグシップセダンCXに設定されたもので、位置付けはマセラティのGTIに近かった。
でも1980年代に入ると、GTI/GTiはホットハッチを示す称号になっていく。それだけゴルフGTIのパフォーマンスが衝撃的だったのだろう。
日本車にも「GTI」を名乗るモデルがあった
日本車ではスズキ・カルタス1300GT-iが登場。欧州ではカルタスは当初からスイフトと呼ばれていたので、名実ともにスイフトスポーツの前身と言える。ほかにコンパクトカーではダイハツ・シャレードが、3代目でツインカムターボエンジンを積んだGTtiを用意した。

ゴルフのライバルだった日産パルサーは、4代目でGTIとともに用意されたGTI-Rが圧巻だった。WRCのホモロゲーションマシンとして開発されたモデルで、230馬力を発揮する2リッターターボに4WDをドッキング。

輸入車でゴルフとともに思い出すのが、僕も所有したことがあるプジョー205GTI。ピニンファリーナデザインのボディと切れ味鋭いエンジンのコンビで人気になり、ほかの車種にもGTIが生まれるきっかけになった。シトロエンもCXに続いてBXやAXにGTiを設定していたので、この時代のフランスはGTI/GTiがあふれていた。

いまや知る人ぞ知る存在になってしまったが、英国のローバーにもGTiがあった。ミニの後継車として開発されたメトロの進化版100と、ホンダとの共同開発で生まれた200に用意されていて、排気量を示す2桁数字と合わせて114/220GTiと名乗っていた。
でも、1990年代も後半になると、GTI/GTiは急速に減っていく。さらに高性能なモデルを求めるユーザーが増えるなかで、ホンダのタイプRやルノースポールなど、モータースポーツイメージを濃厚に反映した車種に注目が集まったことが大きい。VWもこれに対応してGTIの上に位置するR(当初はR32)を出すほどだった。

とはいえGTIの本来の意味は、グラン・トゥーリズモ・インジェクションであるわけで、ゴルフGTIは時代に流されず、運動性能と快適性能の両立をブレずに追求してきた。それが半世紀近くもGTIを名乗り続けられる理由かもしれない。