この記事をまとめると
■昭和のころの旧車を見ると小さなボディにあらためて驚く■近年のワイドボディ化により、広い車内と衝突安全性能の向上が実現されている
■5ナンバーサイズのクルマや軽自動車は安全性能の向上に限界を迎えつつあると感じる
昭和の旧車の小ささにあらためて驚く
少し前まで、自宅から近所のスーパーへ買い物に行こうと県道わきの歩道を歩いていると、フルノーマルできれいに乗られている、初代いすゞ・ピアッツァをよく見かけた。大切に乗っているようなのだが、意外なほど普通に乗っているみたいで、あるときやはり近所にある「腕がいい」とされる板金修理工場に板金修理のため入庫されていた。
ただ、いま見ると明らかにボディサイズが小さく見える。
初代ピアッツァは1981年にデビュー。ジウジアーロデザインのその姿は、当時中学生だった筆者はまさに「未来のクルマ」に見えた。当時は大きいクルマに見えただけに、令和になってオッサンとなったときに、小さく見えたのがある意味衝撃的であった。

いまとなっては、いわゆる昭和のころの旧車を見て「小さいなぁ」と思うのは何もピアッツァに限った話ではない。筆者は30年以上カローラセダンを乗り継いでいるが、初めてステアリングを握った、1979年にデビューした4代目カローラセダンのボディサイズは、全長4050×全幅1610×全高1385mm。
いまどきはトヨタ・ヤリスでも全幅は1695mmもあるのに、1610mmという数値を見ると驚いてしまうが、当時はそれほど狭いという印象はなかった。4代目カローラセダンと同世代となる6代目トヨタ・クラウンでも、全長4690×全幅1690×全高1435mmであり、全幅はいまのヤリスより狭かった。

新型車を中心に登録車では3ナンバーサイズが当たり前となったいまでは、相対的に見ると余計に小さく見えてしまうのかもしれないが、5ナンバーサイズが当たり前だった昭和の時代のクルマは、実寸よりも大きく見せようとデザインされていたこともあり、当時は立派に見えたのかもしれない。
近年ではワイドボディ化が進み、確かに車内も広くなったが、ボディサイズの拡大は、衝突安全性能の向上にも使われていることも改めて感じることができる。いまでもときおり見かける昭和の時代のクルマは、とにかくドアがペラペラといってもいいほど薄いのが印象的に映る。
広くて快適で安全になったコンパクトカー
コロナ禍前に南カリフォルニアを訪れたときに、サンディエゴまで足を延ばし、メキシコ側の国境の街ティファナへ行ったときに、国境から中心部まで日産ツル(7代目日産サニー/5ナンバーサイズ)のタクシーに乗る機会があった。乗り込むときにドアが薄いことに驚いてしまったことを覚えている。

そんなことを言っていると、いまの5ナンバーサイズのコンパクトカーは危険なのかという話にもなってしまうが、昭和のコンパクトカーの名車のひとつでもある2代目トヨタ・スターレット(KP61)では、全長3680×全幅1525×全高1380mmだったので、いまどきの軽自動車に限りなく近い数値となっていた。

5ナンバーサイズ内で限られた範囲となるが、いまのコンパクトハッチバックもしっかりサイズアップして衝突安全性能向上も図られている。
あくまで私見となるが、現状では軽自動車規格や5ナンバーサイズでは、そろそろ衝突安全性能の向上などは限界に近付いているようにも見える。ちなみに5ナンバーコンパクトハッチバックのいくつかは、海外仕様についてはすでに3ナンバーサイズとなっている。
軽自動車規格は韓国の軽自動車規格(日本の規格よりざっくりひとまわり大きい)ぐらいまでサイズアップしてもいいのではないかと考えるが、そうなると5ナンバーサイズのコンパクトカーにあまりにも近くなりすぎるので、今度は5ナンバーサイズの規格アップ、もしくは5ナンバー車の諸税や保険料を軽自動車並みに引き下げるなどして、時節に合わせたクルマのカテゴリーの刷新を図るべき時期に来ていると言えるのかもしれない。