この記事をまとめると
■旧車に乗りたいと思うなら覚悟しておきたい10の項目■壊れるのは当たり前と理解したクルマと付き合い方と信頼できる主治医の存在は必須
■維持していくために必要なものを常に手に入れられる環境を整えることも大切だ
旧車を所有するにはそれなりの覚悟が必要
迫り来るEV化の波、青春時代をともにすごしたクルマとの再会、親が乗っていたクルマに自分も乗りたいという若い世代……などなど。あえて快適かつ故障する可能性が低い最新モデルを選ばず、時として茨の道になりかねない古いクルマ、いわゆる旧車を手に入れる方がいます。
「アイツが手に入れたなら俺(私)も乗ってみようかな」と考える方が増えてくるのは自然な流れ。
いわゆる旧車の購入を考えている方、ご自分の胸に手を当ててみてください。もしかしたら本気度会いの意思を問う「踏み絵」となってしまうかもしれません。
1)壊れる
クルマという工業製品は、同時に何万点という部品の集合体であることを意味します。工場で組み上げ、ラインオフした瞬間から経年劣化がはじまります。それから10年、20年と経過すればするほど、故障する確率が高まっていきます。ほぼすべてのクルマが生まれながらにして背負っている運命です。これが受け入れられないとしたら、最新モデルまたは高年式のクルマを選ぶべきでしょう。

2)税金を多く払う
日本国内で旧車に乗っていると、新しいモデルと比較して増税されます。まず自動車税であれば、ガソリン車の場合、初年度登録から13年経過すると約15%の増税です。自動車重量税は初年度登録から13年経過すると約40%、18年以降は約50%の増税です。趣味車ならともかく、日常の足として古いクルマに乗っていても増税されます。この増税分の維持費を納得できるかどうか、悲しいかな、これも踏み絵のひとつといえそうです。

3)家族の理解が必要
近所の買い物から旅行、高齢者や子どもの送迎、冠婚葬祭など、日常生活にはクルマが必要な場面にあふれています。これが旧車1台である場合、急いでいるときでも暖機運転が必要だったり、真夏のお出かけにもクーラーが効かなかったり……と、家族が我慢を強いられる状況は避けられません。
4)ご近所の理解も必要
家族の理解はなんとか取り付けた。あと、忘れてならないのがご近所の存在。音や臭い、自宅を訪ねてくる友人や知人が乗ってくるクルマ。本人は気にならない、気がつかないとしても、ご近所にとっては迷惑となっているケースも考えられます。ましてや、近隣の家に赤ちゃんがいるとしたら……。子育て中のママはナーバスになっている可能性が高いです。ご近所の状況を把握しつつ、こちらの事情も伝えて可能な限り理解を得ることが得策です。

5)エアコン&クーラーの存在は忘れるべし
そもそも、旧車と呼ばれるクルマにはエアコン&クーラーが装備されていなかったり、機能が低下している可能性も少なくありません。つまりは、「あてにするべきではない」ということです。夏場は乗らない、レンタカーを借りる、思い切ってアシ車を手に入れる……などなど、別の手段で乗り切るしかなさそうです。

反面、降雪地帯であれば、冬場はガレージで冬眠させ、雪が溶けて融雪剤がキレイさっぱりなくなる時期、春になるのを待ちましょう。
味方をなるべく多く持っているほうが有利!
6)主治医の存在が運命を左右する
愛車のオーナー兼主治医という一部のオーナーを除き、多くの旧車オーナーはその道の専門家である主治医と二人三脚で所有・維持していくことになります。オーナーである自分以上に愛車のコンディションを把握し、出先で壊れたときもたとえ日曜日の午後であってもキャリアカーで助けに来てくれる……。

7)コネかカネか?
主治医の存在と同じくらい大事なのは、同じ界隈の方たちとのネットワーク。オーナーズクラブに入会するもよし、少人数でもいいので気の合う方と一緒に旧車ライフを楽しむのも多いにアリです! 旧車を維持するうえでの有益な情報を共有できますし、必要に応じて紹介してくれます(紹介することも)。人付き合いが苦手……めんどくさいといった場合、お金さえあればある程度は解決できます。コネとカネ、どちらを重視するかはアナタ次第。
8)ガレージを用意できるかどうか
あらゆる気象災害や紫外線、盗難、経年劣化など、旧車オーナーにとって、屋根付きのガレージがあるだけでかなりの精神安定剤になります。カーポートやボディカバーでもある程度はこれらの危機を回避できますが、やはりガレージの存在と安心感は絶大です。自宅やその周辺にガレージを用意できないとしたら……同じ境遇にある友人や知人と倉庫を借りる(または思い切って土地を買う)のもありですが、大きなお金が動くので慎重に行動したいところです。

9)部品がない(とくに国産旧車)
多くの旧車オーナーを悩ませる純正部品の欠品と製廃(製造廃止)問題。輸入車よりも日本の旧車のほうが部品の入手が困難で、主戦場はYahoo!オークション、いわゆるヤフオクであることが多いようです。ときには「札束の殴り合い」と表現されるほど熾烈な争いになることも。

悲しいかな、友人や知人同士で「共食い」状態になることもあります。同じクルマを所有する友人や知人の秘蔵コレクションを譲ってもらえる可能性もあるので、ダメ元でSOS発信するのもありです。
10)これからともに人生を添い遂げるくらいの覚悟はあるか?
現オーナーでまだ2オーナー目というケースもあれば、10人くらいのオーナーを渡り歩いてきた個体も珍しくありません。縁あって嫁いで来た旧車だけに、動体保存を心掛けたいところです。確実にいえることは、貴重な生き残りの1台をあなたが所有しているという事実。

まとめ:イメージ先行で手に入れると痛い目に遭う
芸能人がYouTubeなどで旧車を手に入れた動画を公開したり、旧車オーナーが記事で紹介されていたりと、日々、話題になることが多いカテゴリーです。予備知識もそれほどなく、ましてや周囲に頼れる友人や知人、そして主治医がいないとしたら……? ノリや勢いで購入すると、どこかのタイミングで痛い目に遭いかねません。

ボディはレストア済みで見た目はきれいでも、中身はボロボロ・グサグサ。エンジンオーバーホール済みのはずが調子がいまひとつなど、購入後に莫大な費用がかかる個体を手に入れてしまったらそれこそ悲劇です。
ノリや勢いなどの衝動買いは避け、まずは自身の予備知識を深め、周囲の人間関係を構築しつつ、そのうち訪れるであろう「耳よりの情報」を待ってみてください。我慢が強いられる場面もあるはずですが、のちのち「手に入れて良かった」と思えるときがきっと訪れます。