この記事をまとめると
■タイで「バンコクモーターエキスポ2023」が開催された■会場には日本にも導入されるWR-Vが展示されていた
■ボディが3ナンバーなので、ライバルは意外と少ない
タイで話題のWR-Vをじっくり観察してみた
ホンダから、新型コンパクトSUV「WR-V」が発表された(日本では12月21日販売)。筆者は2023年11月末から12月上旬にかけ、タイの首都バンコク近郊で開催されたバンコクモーターエキスポ2023を訪れた際、ホンダブースにWR-Vが展示されていたので、さっそくチェックを行った。
日本の報道をみると、日本国内で販売されるWR-Vはインドで生産されたモデル(インドではエレベイトという車名になる)が輸入される。
このとき、WR-Vはブース奥のステージ脇にポツンと1台が置かれていた。一般公開日初日に訪れてみても、展示車を1組の親子(お母さんと娘さん)が見ているだけであった。

タイにおいてWR-Vは、SV(79万9000バーツ/約376万3290円)とRS(86万9000バーツ/約409万2990円)の2グレードが用意されている。車両価格が高いように見えるが、これはやや持ち直したとはいえ円安傾向が続き、そもそもタイでの新車全般の価格設定は日本より割高となっていることが影響しているようである。
ヤリスクロスが78万9000バーツから89万9000バーツとなっているので、ほぼ同価格帯ともいえるのだが、タイ国内仕様のWR-Vはハイブリッドユニットを専用搭載しているので、その面では割安感があるともいえるかもしれない。

一方、日本のWR-Vは、インドではエレベイトの車名で売られているのは前述したとおり。インドでのエレベイトの価格は109万9900ルピー(約194万円)からとなっているので、日本仕様は200万円台前半ぐらいになる、といった日本での販売価格に関する報道も、蓋を開けてみればほぼ予想どおりであった。
再びタイ仕様のWR-Vに話を戻すと、搭載エンジンは1.5リッター直4のみとなり、2グレードの差はRSのほうがフロントのトレッドがわずかに狭く、車重が重い。ホイールが16から17インチとなり、あとはフロントグリルやホイールデザインなどが異なる程度となっており、パワートレインの変更など大がかりな違いはない。

タイではヤリスクロスやWR-Vより1クラス上となるカローラクロスやHR-V(日本名ヴェゼル)の人気が高く、街なかでかなり多く見かけることができる。
タイ仕様のWR-Vは全幅1780mmとなる日本でいうところの3ナンバーボディとなるものの、タイのスペックでは全長4030mmとなるが、インドのエレベイトでは4310mm、トレッドやホイールベースなど、車両寸法もかなり異なるので、海外におけるWR-Vとエレベイトは別車種といってもいいぐらいである。

WR-Vとエレベイトとでは内外装ともにデザインもかなり異なっており、世界市場でいわれているWR-Vが日本に導入されるのではなく、エレベイト改めWR-Vが日本市場に導入されると考えたほうがいいかもしれない。
クルマとしての完成度はいいが派手さが足りない
今回はタイ仕様のWR-Vの実車チェックを行った。
見た目の質感はホンダ車でもあるので、いまさら問題にするようなレベルではなく、仕上がりもよい。ダッシュボードはこのクラスなので硬質樹脂なのは仕方ないとしても、助手席側のグローブボックス上あたりに合成皮革が張られており、質感をよりよく見せようとしている。
新興国向けモデルのためもあるのか、アナログメーターを基本とした計器盤となっているが、タイ仕様のヤリスクロスはすでに改良後モデルとなったこともあってフルデジタルディスプレイ表示されるところでは、ライバルに差を付けられているように見える。

車内空間はとくに狭いということもなく、シートもたっぷりとしていた。ラゲッジルームは底が深く積載容量など実用性でも申し分のないレベルとなっていた。
クルマとしての機能に不満点はないものの、ヤリスクロスと比較するとエンタテインメントというか、演出がやや地味に見えてしまう印象を受けた。やはり、ヤリスクロスというよりは、ライズに近いキャラクターなのかもしれないが、ライズはすでに事実上終売といっていい状態となっているし、そもそも5ナンバーサイズというところで人気が高いように見えるので、直接的なライバルともいえないような気がする。

日本仕様だけが5ナンバーサイズになるようなことはないだろうから、WR-Vの国内販売ではそれがネックとなる可能性は高い。
「3ナンバーならば」と、当然ヤリスクロスが購入候補として視界に入ってくる。ヤリスクロスはHEV(ハイブリッド車)も4WDもラインアップしている。それほどカツカツした予算繰りで購入検討しているとうわけでもない、セミリタイヤやリタイヤ層によるダウンサイズニーズも目立つクラスだけに、そのままヤリスクロスに流れてしまうことも十分ありうる話だ。

WR-Vだけではなく、WR-Vをフックにして他メーカー車へ逃がさずにヴェゼルヘうまくお客を誘導することができれば、ホンダにとっては十分使える“ツール”になるだろう。ただ、そのまま軽自動車のN-BOX(4WDがある)へ流れてしまうほうが可能性としては高いので、その点は要注意が必要といえるだろう。