この記事をまとめると
縦列駐車が必要になるケースは多い



■じつは苦手意識を持っている人も多い



■元教習所教官が手順とコツを指南



上手に縦列駐車をこなすにはコツがあった

駅への送迎やパーキングメーター/パーキングチケット発給設備がある駐車スペースにクルマを停めるとき、そのまま前進で停車したり駐車枠に入れたりできる場合もあれば、バックで縦列駐車しなければならないこともあるでしょう。今回は、意外にも機会が多い縦列駐車のコツを解説します。



縦列駐車とは?

そもそも縦列駐車とは縦に一列に並んでいるクルマの間に自分のクルマを停める駐車方法です。縦列駐車は、駅のロータリーに停車させたり、パーキングメーターやパーキングチケット発給設備がある駐車スペースにクルマを停めたりするときに行うことがあります。

そのため、免許取得後に行う機会が多い駐車方法です。



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指定自動車教習所における縦列駐車の項目について

教習所で運転免許を取得した人のなかには、縦列駐車で苦労した方もいるのではないでしょうか。また、卒業検定のときに縦列駐車をすることになり「ツイてないな……」と思った方もいるでしょう。



では、教習所の指導要領において縦列駐車はどのような扱いになっているのでしょうか。



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自動車教習所のイメージ



警察庁が公開している「指定自動車教習所の教習の標準」によると、普通免許(普通自動車第一種運転免許)に係る技能教習の標準の応用走行(第2段階)の教程に「方向変換及び縦列駐車」という項目があります。



項目の内容を見てみると、目標に「駐・停車場所に合わせた駐・停車ができる」と明記され、内容に「1.駐・停車場所でのとめ方と出方、2.幅寄せの仕方」と書かれています。



つまり、教習所を卒業したということは、駐停車場所に合わせたとめ方と出方を知っているということになるのです。



しかし、実際の教習の現場では、教科書(教本)に書かれていることをそのまま行い、教程を修了させ、卒業させてしまっているのが実情となっています。そのため、教習所の卒業生からは「やっぱり駐車ができない」「縦列のやり方を忘れちゃいました」という声を聞くことがありました。



縦列駐車のコツを7段階で解説!

ここでは、教習指導員資格を保有し、教習所での指導経験がある筆者が、縦列駐車のコツを7つの段階に分けてお伝えします。なお、教習における指導経験、ペーパードライバー講習の経験、自分の実体験などを含めて解説しますので、教習所で配布している運転教本と異なる点があるかもしれません。あらかじめご了承ください。



【1】駐車できるスペースがあるか判断する

まず、縦列駐車するときは、駐車できるスペースがあるか確認しましょう。バックで縦列駐車する場合には、最低でも自分のクルマ1.5台分のスペースが必要です。一方、前進で縦列駐車する場合は、最低でも自分のクルマ3台分の長さが必要となります。



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路上駐車の駐車枠



つまり、自分のクルマ1台分ぴったりのスペースでは、縦列駐車はできないということになるのです。自分のクルマ1台分と前後にわずかなスペースがあれば、何度も切り返すことで駐車することができるでしょう。ただし、駐車スペースから出る際にも、何度も切り返しをしなければなりません。



出先で縦列駐車をする際には、前後にクルマが止まっているケースがほとんどです。前後のクルマにぶつけないためにも、駐車スペースの前後にゆとりがあるか確かめることが縦列駐車をする際のポイントです。



【2】駐車スペースの前のクルマと平行に並べる

バックで縦列駐車できるスペースがあることがわかり、縦列駐車を始めるときは、駐車スペースの前側に停まっているクルマと自分のクルマを平行に並べます。



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縦列駐車のイメージ



平行に並べるときは、すでに駐車しているクルマ(駐車スペースの前側に停まっているクルマ)と1mくらいの間隔を空ける、と運転教本などに書かれています。しかし、実際の縦列駐車では、駐車スペースの前側のクルマと1mの間隔を空けることができない場合もあるでしょう。そのようなときは、隣のクルマとの間隔をなるべく空けて平行に並べます。



とにかくクルマの四隅に気を配りながら後退

【3】バックするときは歩いている人よりゆっくりの速度

駐車スペースの前側に停まっているクルマと自分のクルマを平行に並べたら、いよいよバックで駐車スペースにクルマを入れ始めます。ここで大切なのはバックするときの速度です。駐車場は、両隣や前後にクルマが止まっていたり、駐車場内に人が歩いていたり、子どもが走っていたりします。そのため、いつでも止まることができる速さ、つまり徐行でバックさせるのがポイントです。



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縦列駐車のイメージ



とくに縦列駐車をはじめとする駐車では、クルマの四隅に目配りしたり注意を向けたりしなければならないため、歩いている人とほぼ同じ速さまたは歩行者以下の速度を作れるようにしておくとよいでしょう。



【4】自分のクルマの後端の向きを変えドアミラーに後ろのクルマが見えるまで角度をつける

駐車スペースの前側のクルマと平行に停めた状態から真っ直ぐバックを始め、自分のクルマの後輪が平行に停めたクルマの後端に差し掛かったくらいでハンドルを素早く左いっぱいに切ります。自分のクルマを左後方に進めているときは、自分のクルマの左後端が隣のクルマと接触しないか確認しましょう。



自分のクルマの後端の向きが変わり始めたら、右のドアミラーにも目を配ります。右のドラミラーに駐車しようとしているスペースの後側に止まっているクルマが少しずつ見えてくるはずです。



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クルマのサイドミラー



自分のクルマの右のドアミラーに映る駐車スペース後側のクルマの前面がすべて見えたところで素早くハンドルを戻し、クルマに対してタイヤの向きを真っ直ぐにします。



【5】周囲のクルマや障害物に当たらないよう気をつけながら逆ハンドルを切ってバック

自分のクルマが駐車スペースに対して斜めになっている状態のまま真っ直ぐバックし、自分のクルマの右の後輪が駐車スペースの枠(駐車スペースの右側部分)に差し掛かったところで、ハンドルを右いっぱいに素早く切り、駐車スペースに自分のクルマの向きを合わせていきます。



このとき、自分のクルマの左前方や右後方が前後のクルマにぶつからないか目配りしながら後退してください。また、駐車スペースに対して自分のクルマの向きを合わせていくと、左後方が縁石に乗り上げたり、歩道に入ってしまったりすることがあります。そのため、クルマの四隅に注意しながら後退しましょう。



【6】微調整をして駐車枠に入れる

自分のクルマが駐車枠にぴったりに入れば駐車は完了です。駐車枠からはみ出てしまった場合には、微調整して駐車スペースに入れます。ここからは、駐車枠に対して左に寄りすぎてしまった場合と、右側がはみ出てしまった場合の対処法を紹介します。



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縦列駐車のイメージ



【6-1】駐車スペースに対して左に寄りすぎて斜めになってしまった場合

ハンドルを左いっぱいに切って前進し、前のクルマにぶつからないよう気をつけながら駐車枠に自分のクルマが入るよう調整します。前進させたときに駐車スペースに入り切らなかった場合は、ハンドルを右いっぱいに切って後退すると駐車スペースに入れることができます。



【6-2】右側にはみ出てしまった場合

ハンドルを右いっぱいに切ったまま【4】の最後の位置(クルマに対してタイヤの向きを真っ直ぐにした地点)まで戻り、先ほどより少し奥まで真っ直ぐバックし、ハンドルを左いっぱいに切って後退すると駐車スペースに入れることができます。自分のクルマの左後端が障害物等に接触しそうなときは【6-1】の方法で修正します。



【7】出るときのことを考えて駐車を終える

駐車スペースにクルマを入れることができたら、出るときのことも考えておくとよいでしょう。縦列駐車している場所から前進で出やすくするためには、前のスペースを多めに取っておくとスムースに発進することができます。



ただし、自分のクルマを後側に停まっているクルマのギリギリまで詰めてしまうと、後ろのクルマが縦列駐車から出られなくなってしまう可能性があります。そのため、前後のクルマの発進に支障がない位置になるよう自分のクルマを調整して駐車しましょう。



クルマを後退させるときのポイント

縦列駐車やコインパーキングでの駐車など、クルマを後退させるときは、速度調節、クルマの四隅への目配り(目視確認)、周囲への気配りがポイントとなります。



バックカメラやアラウンドビューモニターなど便利な機能が装備されているクルマであっても、自分の目で目視して確認することは重要といえるでしょう。



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アラウンドビューモニター



なぜなら、カメラを通して見る映像と直接目視するのでは対象物までの距離の感覚が異なるからです。そのため、標準装備されることが多くなっている便利な機能は、運転をサポートする機能として有効に活用する程度に留めておく方がよいでしょう。

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