この記事をまとめると
■2024年の東京オートサロンで「ホンダ・シビックRS プロトタイプ」が初公開された



■ホンダの「RS」は初代シビックにスポーティグレードとして追加されたのが始まり



■初代シビックRSの販売期間は1年にも満たなかったがファンに強烈な印象を残した



シビックに「RS」が復活する

ホンダは、2024年1月12~14日に開催された「東京オートサロン2024」において、同年内に発売予定の新型車であるシビックRSプロトタイプを初披露した。詳細な車両スペックなどは明らかになっていないものの、現行FL1型シビックの1.5リッター・ターボ車をベースにしたスポーティグレードで、トランスミッションは6MTのみだという。



そんなシビックRSプロトタイプだが、車名を聞いて思わず「おっ!」と思った人も多いはず。

「RS」といえば、ホンダの現行車ではN-ONEやフィットに設定されているスポーティグレード。そのRSがついにシビックにも設定される……というハナシではもちろんない。



RSというスポーティグレードが初登場したのは1974年のことで、初代シビックに設定されたのが始まりだ。つまりRSグレードの誕生50周年にあたる2024年に、シビックRSが「復活」することになる。



シビックに「RS」が帰ってくる! 見た目は地味だけど「アラ古...の画像はこちら >>



1974年、初代シビックのスポーティグレードとして追加されたのがRSの始まり。その歴史は「タイプR」はもちろんのこと、SiやSiRといったシビックの歴代スポーティグレードのルーツともいえる存在である。というわけで、あらためて初代シビックRSというクルマについて振り返ってみよう。



1970年代に入り、自動車の個人需要がますます高まっていくなか、ホンダはコンパクトFFハッチバックの「シビック」を1982年に発売する。登場時のボディは3ドアのみで、エンジンには最高出力60馬力/5500rpm、最大トルク9.5kg-m/3000rpmを発揮する1.2リッター直列4気筒SOHCを搭載していた。



発売直後からシビックは高い人気を集め、翌1973年には1.5リッター搭載モデルを追加、さらに4ドアセダン(ショートファストバック)のボディも設定されるなど、ラインアップを拡大していく。そして1974年、シビックのスポーティグレードとして「1200RS」が追加される。



シビックに「RS」が帰ってくる! 見た目は地味だけど「アラ古希」のハートをときめかせた初代シビックRSとは
ホンダ・シビック 1200RS(初代)



グレード名のRSは「ロード セーリング」の頭文字から名付けられたもので、その名称のとおり、サーキット走行などモータースポーツを意識したというよりも、ワインディングや長距離走行におけるドライビングの楽しさを重視したモデルと位置づけられた。



RSのボディタイプは2種類で、リヤにトランクを持つ2ドアと、ハッチゲートを備えた3ドアハッチバックが設定された。ベースモデルであるGLと比べ、いずれも最低地上高が10mm低められて165mmとなっており、スポーティさを増した外観となっている。



エンジンはEB1型の直列4気筒SOHCで、排気量は1169cc。圧縮比も8.6:1であり、ここまではGLに搭載されるエンジンと同一。しかし、RSでは吸気系にケーヒン製CVキャブを2連装することで、最高出力76馬力/6000rpm、最大トルク10.3kgm/4000rpmまでパワーアップが図られている。そしてトランスミッションには、シビックとして初となる5速MTが組み合わされた。



シビックに「RS」が帰ってくる! 見た目は地味だけど「アラ古希」のハートをときめかせた初代シビックRSとは
ホンダ・シビック 1200RS(初代)の走行写真



シビックRSのサスペンション形式は前後ストラット式でGLから変更はないが、フロントのバネレートが1.9kgf/mmから2.52kgf/mmに、リヤも1.36kgf/mmから2.13kgf/mmへと変更された。あわせてダンパーの減衰力もRSでは引き締められている。



見た目はほとんど普通のシビックだった「RS」

爽快に吹き上がるエンジンや5速MTとの組み合わせにより、スポーツハッチバックらしい軽快な走りっぷりが味わえた。当時は販売促進用のカタログにも最高速度が記される時代であり、5速MTを採用したシビックRSの最高速は160km/hとなっている。



動力性能面では存在感の大きさを示したシビックRSだが、いっぽう外観においてはベースモデルであるGLからの変更点は多くない。前後のバンパーにラバー製のオーバーライダーが装着されたことと、155SR13サイズのラジアルタイヤやブラック塗装のホイール、そしてフロントグリル内側やリヤハッチ下に配されたRSのエンブレムが外観上における識別点だ。



シビックに「RS」が帰ってくる! 見た目は地味だけど「アラ古希」のハートをときめかせた初代シビックRSとは
ホンダ・シビック 1200RS(初代)のタイヤ&ホイール



内装ではブラックの表皮を採用したセミバケットシートのほか、スポーク部分にウッド素材を採用したステアリング、同じくウッド素材を採用したシフトノブを標準装備。さらに、ダッシュボードにも木目パネルが貼られ、スポーティムードが高められた。



あくまで公道におけるドライビングの楽しさを追求したシビックRSだったが、その優れた走行性能はモータースポーツシーンでも存分に発揮された。1970年代に人気を集めていた富士スピードウェイでのマイナーツーリング(TSレース)では、トヨタ・スターレットや日産・サニーと戦いを繰り広げ、シリーズチャンピオンにも輝いている。



シビックに「RS」が帰ってくる! 見た目は地味だけど「アラ古希」のハートをときめかせた初代シビックRSとは
ホンダ・シビックRS(初代)のレースモデル



そんな強烈なインパクトを与えたシビックRSだったが、その登場直前に訪れた第一次オイルショックの影響は大きく、スポーティグレードへの風向きは決して追い風ではなかった。さらに、姉妹車であるシビックの1.5リッター車に、排出ガス浄化技術のCVCCを採用したエンジンが搭載されて世界的な大ヒットとなったことから、シビックの全モデルにCVCCを採用する流れとなり、シビックRSは1975年8月に事実上の後継モデルである1500RSLへとバトンタッチが行われた。



シビックに「RS」が帰ってくる! 見た目は地味だけど「アラ古希」のハートをときめかせた初代シビックRSとは
ホンダ・シビック(初代)のCVCCエンジン搭載車の走行写真



※写真はCVCCエンジン搭載の通常モデル



1974年10月に発売されて多くの人気を集めながら、販売期間が1年にも満たない1975年8月に販売終了となってしまったシビックRS。しかしながら、特徴的だったオレンジのボディカラーと合わせて「RS」の印象は強く、のちにコンパクトFFハッチバックのフィットにRSが設定された際も、サンセットオレンジ IIという車体色が復活を果たしている。



シビックに「RS」が帰ってくる! 見た目は地味だけど「アラ古希」のハートをときめかせた初代シビックRSとは
ホンダ・フィットRS(2代目)のサンセットオレンジII



2024年に登場するシビックRSは、はたしてどのような衝撃をホンダファンに与えてくれるのか、大いに期待して待ちたいところだ。

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