この記事をまとめると
■日産の901活動から生まれた1台がR32型GT-Rだ■R32は、ニュルブルクリンクで量産車世界最速タイムを記録した歴史がある
■代を追う毎に、ハンドリング、ボディ性能に磨きがかかった
モデル毎に主眼を変えて進化してきた第2世代GT-R
第2世代GT-Rとは、1989年にデビューしたR32型から、2002年に生産終了になったR34型までの3代のスカイラインGT-Rのこと。今年はそのR34GT-Rの登場から25周年で、生産終了からは22年。
R32からR33、R34と13年の歴史のなかで、何がどう進化したのか振り返ってみよう。
はじまりはもちろんR32。1990年までにシャシー性能世界一を目指す日産の901活動から生まれた、当時としては画期的な高剛性ボディに、グループAレースで600馬力まで出力することを想定したRB26DETTエンジンを搭載。
そして、FRベースのトルクスプリット4WD=アテーサE-TSを武器に、国産車ではじめてニュルブルクリンクでの量産車世界最速タイムを記録した歴史に残る1台だ。
それまでの国産車に比べ、技術面で一気に10年分は進化した格別なクルマで、誰がハンドルを握ってもその圧倒的なパフォーマンスに目を見張った格別な存在だった。

そんなR32の課題は、アンダーステアが残ったこと。
当時、新車に装着が許されていた最大サイズのタイヤ、225/50-16を装着するため、R32はサスペンション取り付け部に徹底的に補強を入れ、ボディ剛性を高めたが、それでも直6エンジンと約100kgのアテーサE-TSユニットを積んでいたために、前後の重量バランスは59.4:40.6とかなりフロントヘビーだったからだ……。
そこでR33はそのアンダーステア対策に主眼を置いて進化を遂げた。
具体的にはホイールベースを105mm延長し、インタークーラーの軽量化やバッテリーのトランクへの移設、燃料タンクをリヤシート下に収めるなどの工夫で、前後の重量バランスを57.5:42.5まで改善。

さらに、ボディのねじり剛性もR32に対し44%もアップし、フロントサスに関してはキャンバー剛性を約35%、横剛性を約90%、キャスター剛性を約10%も向上させた。
これらの改良で、R33はニュルでのアクセル全開時間が、R32より15~20%も長くなり、ニュル1km当たりおよそ1秒、1ラップで21秒のタイムアップを実現している。

そしてR34。R34も大きな進化はまずボディ。
ボディの熟成やハンドリングにも注力
さらにR32、R33、R34の流れでいえば、空力の進歩も著しい。
R32のCd値は0.40もあり、市販車から空力パーツの変更が認められていなかったグループAレースでは、FSWのストレートエンドでフロントが浮き上がって怖かった、とドライバーも証言している……。

そうしたR32の経験を踏まえ、R33には4段階の可変リヤスポイラーが与えられ、フロントリップスポイラーもバンパー下端から50mm前方に伸ばすカタチに。
こうした改善でCd値は0.35(最小)になり、後輪のCLf(揚力係数)も-0.03~-0.14とわずかだがダウンフォースを得ることに成功。

R34は本格的な空力ボディを手に入れて、Vスペックはレーシングカーのようなリヤディフューザーを備え、180km/h時に20kgものダウンフォースを得ることが出来た。
R34のキャッチコピーは「ボディは力だ」だったが、まさにR32からR33、R34への進化は、ボディの進化といいきっていい。その影響か、R34のニュルでのタイムは、R33よりも10~15秒速いといわれているのだ。

エンジン自体は、いずれもRB26DETTで変わらず、R33はトルクのみ4.2%アップ。R34はボールベアリングタービンになって、レスポンスが向上しトルクも2.5kg-m増えているが、ボディの進歩に比べれば誤差の範囲であろう。なお、出力は3車とも280馬力だ。

ブレーキはR32に住友製のF4ポット/R2ポットのアルミ対向キャリパーがおごられ、F296φ/R297φのローターだったが、N1耐久レースでキャパシティ不足が課題に……。
Vスペックでブレンボ製ブレーキが投入され、ローターもF324φ/R300φにサイズアップ。タイヤはR32が225/50R16、R33が245/45R17、R34が245/40R18になる。

そのほか、ミッションがR34からゲトラグの6速になったり、R33からアクティブLSDが登場したり、4WDがR33からアテーサE-TS PROになったり、ハイキャスが油圧から電動化になったりといった違いもあるが、第2世代GT-Rは一貫してハンドリング性能の向上が主題だった。

R32はアンダーステア、R33は弱アンダー、R34はコーナリング中にステアリングの切り足しが可能! 最強の直6エンジン、RB26DETTと、弛まぬシャシー技術の進化で、世界のスポーツカーをリードした第2世代GT-Rは、いつまでも国産車の誇りといえる存在だ。