この記事をまとめると
■イギリス出身のラムゼイ夫妻が日産アリアで北極から南極までの約3万キロを走破した■プロジェクトでは速さを競うより各国の人たちとの繋がりに重きをおいていた
■ポール・トゥ・ポールを成し遂げたアリアのパワートレインとバッテリーはほぼ標準仕様となっていた
電気自動車のアリアに乗って偉業を達成
日産がこれまでリーフで蓄積してきたノウハウを投入したEV専用のプラットフォーム「CMF-EV」を採用した新世代EVの第1弾としてデビューを果たしているアリア。そんなアリアが2023年、北極から南極までを走破する「ポール・トゥ・ポール」というプロジェクトを行なっていたのをご存知だろうか。2023年3月29日に北磁極をスタートしたアリアは、同年12月15日に南極に到達。
そしてこの度、この偉業を達成したラムゼイ夫妻による報告会が2024年3月24日(木)に日産グローバル本社で行われ、実際に3万キロを走ったアリアのお披露目がなされた。
報告会では、まずは日産シニアマネージャーのダン・フレッチャー氏からプロジェクトの紹介があった。フレッチャー氏によると「ポール・トゥ・ポール」とは、アリアを使って1823年時点の北磁極から北中米・南米大陸を縦断し、南極を目指すという電気自動車による世界初の大プロジェクトだという。
ラムゼイ夫妻からプロジェクトを持ちかれた日産は、そのコンセプトに共感し、車両の提供とプロジェクトにかかる軍資金、そして専門技術をサポート。見事、電気自動車による初の偉業を達成するとともに、アリアの高い走破性とポテンシャルを広く証明することができたと語る。
次に、ラムゼイ夫妻がこのプロジェクトの約10カ月を振り返った。
夫のクリス氏によると、北極ではステアリング&シートヒーターのみで走行し、バッテリーの航続距離がどれくらい伸びるかどうか、また極地でカーテントを使用したら、充電時間をどれほど短縮できるかどうかさまざまな検証をしたという。また、マイナス39度という過酷な状況の南極においても、アリアはトラブルを起こすことなく走り続けた。これらのことからアリアのバッテリー温度制御技術の高さを実感したとも述べた。
一方、妻のジュリー氏は、移動時に印象に残ったことを語ってくれた。
北極から北米までの移動では充電環境が整備されており問題なく走れたとするが、メキシコ入国以降は充電環境が整っておらず、チャージ口を変換するアダプターの準備に時間を要し、移動距離は落ちてしまったと説明。
見た目は迫力満点だが中身は標準車だった
報告会の後はついにポール・トゥ・ポールプロジェクトのアリアの撮影会となった。
このアリアの大きなポイントは、パワートレイン、バッテリーはあえて標準車仕様のバッテリーを搭載していることだ。これには明確な理由があって、過酷な環境下を標準仕様に近い車両で走行できれば、その実力を証明できる。そして、同じアリアを所有しているオーナーにも同じことができることを感じてほしかったとしている。
一方、大きく印象を変えているエクステリアには3つの特徴がある。
ひとつ目は、リフトアップしてオーバーフェンダーを装着し、BFグッドリッチ製39インチタイヤを履いていることだ。これにより、大きな岩や雪の塊をものともしない悪路走破性を手に入れている。
ホイールに関しても、エアを充填する通常のバルブに加え、エア抜き用のバルブを装着していることもポイント。状況に合わせてタイヤの空気圧を調整することで、この大冒険のなかでもタイヤ交換は1回だけで済んだとしている。
ふたつ目は、牽引&リフトポイントの増設だ。これにより緊急時の牽引はもとより、スタックした際に左右どちらか片方を持ち上げて脱出を図ることも可能となった。
3つ目は、車両保護のための金属製「スキッドプレート」の装着だ。これは岩や氷などから下まわりを守るためのものであり、北極や南極などの極地を走る際には必須の装備となっている。
そのほか、ボディ側面にプロジェクトの走行予定コースを地図化したグラフィックが描かれ、またラムゼイ夫妻の冒険の必需品であるというコーヒーマシンが搭載されているなど、遊び心も満載だ。
なお、このアリアは3月31日(日)まで、日産グローバル本社ギャラリーに「CELEBRATE TO POLE 北極から南極へ、アリア3万キロの軌跡」として展示されることになっている。
冒険に使用したウェア、持ち物と一緒に、極地を駆け抜けてきたアリアを見れば、ふたりの熱い想い、高い目標を知ることができるだろう。
ぜひこのプロジェクトの軌跡を感じて欲しい。