この記事をまとめると
スズキ・スイフトのベースモデルにはMTモデルがラインアップされている



■スイフトのMTは高齢ドライバーにMT支持者が多いために用意している



■MTに乗るために必要もなくスポーツモデルを買う高齢者も存在していた



スポーティモデルではない素のスイフトにもMTを設定

スズキの登録車ラインアップにおける基幹モデルといえるのが「スイフト」だ。クルマ好きからすると、そのスポーティバージョンである「スイフトスポーツ」のハイ“コスト”パフォーマンスに注目しがちだが、基本となるスイフトの素性が良いからこそのスイフトスポーツであり、スイフトの走りはベーシックカーとして評価が高い。



そんなスイフトは2023年12月にフルモデルチェンジを果たしている。

好評なハンドリングの源泉であるプラットフォームは踏襲しながら、サスペンションはタイヤ以外を新設計。さらに、新開発の1.2リッター3気筒エンジンを搭載、主力グレードはマイルドハイブリッド仕様としている。そして、2020年代にパワートレインを一新したスイフトながら、マイルドハイブリッドと5速MTが初設定されたことにも驚かされる(FF車のみ)。



素のスイフトにMTがあるのは「走り好きの若者」もだけど「高齢...の画像はこちら >>



なぜ、スポーツではない素のスイフトにMT(マニュアルトランスミッション)を用意するのだろうか。カタログ的な要素でいえば、CVT(無段変速トランスミッション)に対して5速MTは燃費性能に優れるため、現行スイフトにおいて唯一のエコカー減税100%のグレードになっている(スイフトCVT車の多くはエコカー減税50%)。このことは、MTを設定する理由のひとつになると思える。



しかし、あえて乱暴ないい方をすれば「たいして販売が期待できないMTをエコカー減税でアピールするために用意することは経済合理性がない」ように思える。いくらエコカー減税100%とアピールしたところで、実際にCVT車を購入しようとしたユーザーは、100%減税はMT車だけであることはわかってしまう。



素のスイフトにMTがあるのは「走り好きの若者」もだけど「高齢ドライバー」のためでもあった! MT設定にみるスズキの良心に感動!!
スズキ・スイフト(5代目)の走行写真



そもそもWLTCモード燃費で比べても、MT車は25.4km/hでCVT車は24.5km/Lとさほど変わらないのだ。



NISMOグレードには高齢者が多いという都市伝説

スイフトにMTが設定されているメインの理由は、「MTを求めるユーザーが存在する」からにほかならない。じつはスズキのラインアップを見ていると、軽自動車のワゴンRにもエントリーグレードのみMT車が用意されていたりする。



素のスイフトにMTがあるのは「走り好きの若者」もだけど「高齢ドライバー」のためでもあった! MT設定にみるスズキの良心に感動!!
スズキ・ワゴンR(6代目)



これは、いずれも同じユーザーニーズに応えるためのグレードといえる。

メインターゲットは「ATは不慣れで乗りたくないというまま歳を重ねてきたベテランドライバー」だ。けっして多数派ではないが、「ATだと暴走しそうで怖い」というユーザーは一定数存在している。



そうしたドライバーからはMT車へのニーズがあり、そのためにスズキとしては軽乗用車ではワゴンR、登録車ではスイフトにMTを設定している部分もあるのだという。



そんなMT至上主義のドライバーというのは、主に高齢者層に多い。自ずとクルマにハイパフォーマンスを求めるわけではないため、スイフトのような実用車にMTを設定する意味は大きい。



素のスイフトにMTがあるのは「走り好きの若者」もだけど「高齢ドライバー」のためでもあった! MT設定にみるスズキの良心に感動!!
スズキ・スイフト(5代目)のリヤ



同様のニーズから、過去には日産がマーチやノートに設定したスポーティグレード「NISMO S」が、なぜか高齢ドライバーに売れていたという話もある。

熱心な日産派のオールドファンからは、「これしか選択肢がない」といわしめたという都市伝説も存在しているほどだ。なぜならNISMO Sは1.6リッターエンジンと5速MTを組み合わせたパワートレインを積んでいたからだ。



素のスイフトにMTがあるのは「走り好きの若者」もだけど「高齢ドライバー」のためでもあった! MT設定にみるスズキの良心に感動!!
日産マーチNISMO S(4代目)の走行写真



たしかに日本の自動車市場においては、クラッチペダルのないAT車が圧倒的なシェアを持っている。しかし、ごく一部ATに不慣れなドライバーが存在しているのであれば、そうしたニーズに応えるのが多様性の時代にふさわしい商品企画であり、まさに、スズキはユーザーファーストの商品企画を進めているメーカーであるといえよう。