この記事をまとめると
◾️三菱自動車が2024年2月に「トライトン」を発売した



◾️トライトンは日本では不人気なピックアップトラックでありながら、その売れ行きは好調だ



◾️他人とは違ったSUVを求めるユーザーから、トライトンは支持を集めている



三菱トライトンのヒットの理由

クルマにはさまざまなカテゴリーがあり、人気と不人気の格差も見られる。国内で不人気の代表とされてきたのが、ボンネットを備えたピックアップトラックだ。近年は国産車ではトヨタハイラックスのみだったが、2024年に入って三菱トライトンが加わった。



トライトンは、ピックアップでも後席を備えたダブルキャブで、乗車定員は5名だ。全車が直列4気筒2.4リッタークリーンディーゼルターボと後輪駆動をベースにしたフルタイム4WDを搭載する。最低地上高(路面とボディのもっとも低い部分との間隔)は220mmを確保したから、悪路のデコボコも乗り越えやすい。トヨタ・ランドクルーザーのような悪路向けSUVの機能を備える。そのかわり価格も高く、GLSは498万800円、GSRは540万1000円だ。



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このトライトンの受注が三菱としては堅調に推移している。

2023年末に予約受注を開始してから、2024年3月上旬までに、約1700台を受注した。



約1700台の受注実績自体は大したことないが、トライトンの価格帯は500万~540万円と高い。しかも三菱の販売店舗数は、全国に約550カ所と少ない。1店舗当たりのトライトンの平均取り扱い台数は3.1台だ。これをトヨタの4600店舗に当てはめると、約1万4000台に相当する。高価格車で、不人気カテゴリーのピックアップという点も踏まえると、注目される受注動向だ。



トライトンの客層とその購入の理由とは

トライトンの売れ筋グレードは、価格が540万1000円のGSRで、初期受注の88%を占めた。しかもユーザーには若年層が多い。20代が10%、30代は21%、40代は32%、50代が24%だという。40代までで全体の60%を超える。



見た目の「カッコ良さ」と「新鮮さ」がいかに重要かがわかる! 三菱トライトンがいま絶好調なワケ
三菱・トライトン GSRのフロントビュー



そしてこの世代は、昔のハイラックスやダットサンのピックアップをほとんど知らない。先代トライトンは2006年にいまと同じくタイ製の輸入販売を開始して2011年に終了したが、1カ月平均登録台数は30~40台に留まった。

ピックアップトラックが相応に人気を得ていたのは2000年以前だから、40代までの層にトライトンに懐かしさを感じるユーザーは少ない。



どのようなユーザーがトライトンを購入しているのか。三菱の販売店に尋ねると以下のように返答された。



「トライトンの販売では、さまざまな車種が下取りに入る。先代トライトンやハイラックスもあるが、ハリアーやBMWのX3など、SUVを中心にいろいろな車種のお客様がトライトンを購入されている」。



では、ピックアップトラックをどのように使っているのか。



「荷台に大きな荷物を積むお客さまは少ない。トノカバーを装着して、4名乗車時に手荷物を積む程度だ。つまり、普通の乗用車として使われている。大半のお客さまが、フロントマスクを含めて、外観のカッコよさに魅力を感じて購入されている」。



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三菱・トライトンの荷台



トライトンのフロントマスクは、いまの三菱車に共通する「ダイナミックシールド」のデザインを十分に生かして魅力的に仕上げた。GSRでは荷台の左右にスタイリングバーも備わり、ほかのクルマとは違うトライトンならではの外観に作り込んだ。



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三菱・トライトンのフロントマスク



見方を変えると、トライトンが人気を得た背景には「いまのクルマはどれも同じように見えて退屈だ」という、ユーザーの不満もあるだろう。心に響く新鮮なクルマを開発すれば、いまでも売れ行きを伸ばせる。クルマを売るための一番の対策は、いまも昔も商品力で、トライトンの人気もそれを示している。