この記事をまとめると
■トラックは乗用車と比較して空気抵抗が大きい■Cd値(空気抵抗係数)は0.5~0.9だという
■これ以上空気抵抗を減らすことはできないのか解説する
トラックのCd値は0.5~0.9
エンジンの上にキャビンが乗っているハイキャブは、スペース効率に優れるけれども角が丸められた程度の四角い箱型なので、空気抵抗が大きいことは否めない。高速道路を走っている大型トラックは、堂々としたフォルムだけれど、いかにも空気の壁にブチ当たりながら走っているように見えるだろう。
高速道路を走っているときのクルマは、走行抵抗の過半数以上が空気抵抗となる。
クルマの空気抵抗は前面投影面積とCd値の積で算出することができる。Cd値(空気抵抗係数)とはクルマの空気抵抗を計測して、それを前面投影面積で割った数値で、前面から見えない部分の形状や仕上げがどう空力性能に効いているのかも含めて割り出した数値だから、この公式が成り立つのだ。
乗用車は相対的にサイズが小さいだけでなく、ボディの隅々にある段差を滑らかにして空気抵抗を減らしている。そのため、Cd値は0.24~0.3程度(ワンボックスなどはもっと高い0.5前後)となっているが、トラックは0.5~0.9程度と空気抵抗が大きいのだ。とくに大型トラックはどんどんグリルが大きくなり、空気を取り込む部分が大きくなっているので、なかなか空気抵抗を減らすことは難しい。
今後のトラックのデザインは大きく変わる可能性が高い
いい換えると、空気抵抗を軽減するには前面投影面積かCd値のどちらかを軽減すればいい。前面投影面積は、キャブの大きさが決まっている(シャシーのサイズや室内空間から小さくするのは難しい)から、形状によって工夫するしかない。キャブのルーフにウインドデフレクターを装備しているのも、ボディとの段差を緩和して空気抵抗を軽減できるからだ。
たとえば、新幹線のぞみの700系がうねるような曲線のノーズ形状に仕立てられているのは、トンネル突入や出口での圧力変動により発生する騒音を軽減することが目的だ。単に空気抵抗だけを考えたら500系のような鋭いカタチが効率的なのだが、環境を考えると複雑な形状のほうが優れることになる。同じ前面投影面積でも形状次第で空気抵抗は変わり、それによってCd値は変化するだけでなく、さまざまな影響を与えるのである。
であれば今後の物流を考えたとき、高速道路の最高速度を引き上げるだけでなく、トラックの空気抵抗軽減も必要となるのではないだろうか。

そのために必要なのはキャビンの設計自由度だ。まずは全長の上限(12m)が定められている大型トラックやトレーラー(セミトレーラーの場合16.5m)の規制緩和だろう。
現時点でも最長25mのフルトレーラーが路線限定で認められているが、もっと柔軟に対応することで空力性能を高めることは、環境性能や周辺の車両の安全性などに寄与できる。
米国では空力性能に優れたボンネットタイプのトラクターが多く使われている。日本では小まわり性能確保の問題もあってなかなか導入できないが、高速道路だけを走る隊列走行の先頭車両などは、ボンネット型を採用すれば空気抵抗がかなり抑えられるハズだ。

トラック(物流)環境の変化を考えると、これから先のトラックのデザインも大きく変わっていく可能性が高い、といえるだろう。