この記事をまとめると
■任意保険の保険料はさまざまな要素で決まるため車種によって金額が大きく異なる



■「型式別料率クラス」によって車種ごとの等級の基準は決まっている



■具体的に「型式別料率クラス」による等級の違いを実例とともに紹介する



任意保険の保険料金はデータに基づいて決められている

クルマを所有して運用するとき、ほとんどの人は任意保険に加入していると思います。



加入が義務づけられている自賠責保険でも、事故を起こしてしまった際の補償をおこなってくれますが、その額としては最小限というもので、目的として被害者救済という前提のものなので、運転者または所有者自身の被害に対しては支払われません。



いまのご時世では対人や対物の補償額はとても自賠責保険で賄えないというのが実状となっているので、自賠責保険の範囲を超える補償を受けるため、任意保険がいろんな保険会社から用意されています。



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その任意保険に加入しようとしたときに気になるのが、加入する車両によって保険料が異なるという点でしょう。この車両による保険料の違いは、契約者の条件による等級とはまた別で、車両価格の高い低いなども関係がないようです。ではいったい何を基準に価格の違いが出ているのでしょう?



ここではその任意保険の保険料がなぜ車種によって変わるのかにスポットを当ててその仕組みを簡単に紹介していきましょう。



■任意保険料の算出にはいろんな要素がかかわっている

保険料の見積もりをするときに、いろんな項目の確認が行われますが、そのなかで保険料の算出に大きくかかわる要素としてまず「等級」があります。



「等級」というのは、「ノンフリート等級別料率制度」で保険料の割増引率を定めるための区分のことで、ザックリいってしまうと加入年数と事故履歴を基準にしたランク付けです。等級は1~20まであり、初加入では6等級からスタートします。事故を起こさず契約を更新すれば等級が上がっていき、割引率がよくなるので保険料が安くなります。逆に事故を起こして保険料の支払いが行われた場合は、その事故の損害規模に応じて等級がダウンします。



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自動車保険の等級の表示



また、その等級とは別に「運転者年齢条件」という要素もかかわってきます。これはその名のとおりに運転する人の年齢で保険料が上下する基準のことです。区分としては21歳未満(年齢問わず)/21歳以上/26歳以上/35歳以上の4つとなっています。



そしてもうひとつ、保険料への影響が大きい要素が車種によるものです。



■車種ごとの基準は「型式別料率クラス」によって定められている

保険の基本的な仕組みは、過去のデータから加入者全体での保険料の支払総額を試算して、それに保険会社の取り分を加えた額を加入者の人数で分散するというものです。



しかし、そのままでは事故を起こす傾向の高い人や車種と、そうでない場合との間に不公平が生まれるため、その傾向のデータを分析して年齢や車種ごとに区分したうえで、それぞれの項目を組み合わせて保険料を算出しているのです。



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大黒PAに駐車された90年代の国産車



年齢については長年のデータ分析結果から上記の4つにわけ、年齢が高くなるほど事故率が低いという判断がされています。



そして本題の、車種の違いで保険料に差が出るという話です。



たとえば日産GT-Rの場合を考えてみましょう。GT-Rは300km/h巡航が可能なエンジンとシャシーをもっていますので、所有者もそれを期待して購入しているでしょう。ファミリーカーと比べて飛ばす人も多いと思います。そうなると事故率も高くなるでしょう。スピードを出すので事故の損害も大きいと思います。そういう傾向のある車種は、保険料の支払額が大きくなるので料率が高く設定されます。



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日産GT-R(2024年モデル)の走行写真



一方で、コンパクトなファミリーカーはどうでしょう? 運転者として想定されるのは、週末レジャーでのパパさんや普段の買い物をするママさん、あるいは初心者の若者などでしょうか。そういった人たちの多くはめったに飛ばさないでしょうから、ハデな事故とは縁遠いと思われます。



しかし、その一方で、ちょっとぶつけてしまったりという小さめの事故は多いかもしれません。事故の件数も少ないとはいえないので保険料の支払総額は高いかもしれません。

ただ、加入者の分母が大きいので、それを車種のなかで分散すると、個々の保険料率は低くなるでしょう。



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トヨタ・シエンタ(3代目)



イメージとしてはこんな感じですが、実際には車種別の統計データをベースにして、科学、工学、医療的見解を加えて先述の「型式別料率クラス」を算出しているというわけで、イメージとは異なっている車種(型式)も多いようです。そしてその算出をおこなっているのは、国が「料率団体法」の施行とともに設立した「損害保険料率算出機構」という法人です。



全国の損害保険会社から提供されるデータを集めて分析をおこない、年に一度、料率の更新がおこなわれています。このデータは各保険会社に提供されますが、必ずしもこの料率をそのまま用いる必要はなく、各損害保険会社の方針でマージンを上下するなどして運用されているそうです(※もし目に余るくらい逸脱している場合は指導がおこなわれるようです)。



意外にもスポーツカーでも対人・対物の等級が低いモデルもある

■「型式別料率クラス」の具体例を紹介

「損害保険料率算出機構」では基準料率を検索して見ることができるので、いくつかの車種をピックアップして見てみましょう。



料率は、自家用の普通車と小型車が1~17の17区分、軽自動車は1~3の3区分となっていて、数字が多いほど保険料が高くなります。
1)日産GT-R(R35)

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日産GT-R(R35)のフロントまわり



価格が高いので車両保険の料率が高いのはわかりますが、上で例に挙げているような使われ方をしているのでリスク率も高いと考えていましたが、対人と対物は想定とは逆に最低クラスの料率となっています。



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日産GT-R(R35)の型式別料率クラス

2)日産スカイラインGT-R(R34)
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日産スカイラインGT-R(R34)のフロント



乗られ方を考えるとR35GT-Rよりも料率が高いかと想像していましたが、こちらも最低クラスで意外でした。



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日産スカイラインGT-R(BNR34)の型式別料率クラス

3)トヨタ2000GT
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トヨタ2000GTのフロント



こちらは日本に何台残っているのかというくらい希少で、取引価格も1億円以上という国産車ではもっとも特殊な部類のクルマなので乗られ方もおとなしいのでは? と想像しますが、意外にも車両保険の料率は低く、対人の料率が突出していて逆の結果に感じます。



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トヨタ2000GTの型式別料率クラス

4)トヨタ・プリウス
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トヨタ・プリウス(5代目)



では逆に、ふつうのクルマ代表として、まずはトヨタ・プリウスを見てみると、対人、対物、人身ともに高い数値です。車両保険の料率も価格の割に高い印象です。

契約数で分散できないくらい事故の数が多いということなのでしょうか?



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トヨタ・プリウス(MXWH60)の型式別料率クラス

5)ホンダ・フィット
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ホンダ・フィット(4代目)



同じく、ふつうのクルマ代表のホンダ・フィットはどうでしょう。こちらはプリウスと比べると全体的に料率が低く感じます。同じ大衆車という分類のクルマだと思いきや、用途や台数の違いが現れているということでしょうか。



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ホンダ・フィット(GR1)の型式別料率クラス

6)スズキ・アルト
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スズキ・アルト(9代目)



軽自動車代表として、スズキ・アルトはどうでしょう? こちらはほぼイメージどおりに各料率が最低クラスという結果が出ました。これはいままでの流れからすると逆の意味で意外です。



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スズキ・アルト(HA37S)の型式別料率クラス

7)フェラーリF40
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フェラーリF40のフロント



高価なフェラーリのなかでも特別な存在であるF40は、料率も特殊でした。5億円以上という驚きの落札価格も出たということを反映してなのか、車両保険の料率は最高グレードの17です。一方で対人が13と極端に高いのはなぜでしょう? 契約数が少なすぎなのか、あるいは構造上の問題なのか、謎ですね。



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フェラーリF40の型式別料率クラス



と、イメージしたものとはかなり違う結果となりました。対人・対物・人身傷害の主要項目に関しては、スポーツカーより大衆車のほうが高い料率という傾向はイメージとは真逆の数値でビックリです。それでもこの料率については、単に使われ方の傾向だけでなく、実際の事故の数や、車両の構造、安全装備などのいろんな要素によって決められるというのがなんとなく実感できたような気がします。さらには実際に契約するときの料率はその保険会社によって異なりますので、この検索結果はあくまでも参考に留めてください。



この「型式別料率クラス」については「損害保険料率算出機構」の下記ページで調べることができるので、興味ある人は覗いてみましょう。



https://www.giroj.or.jp/ratemaking/automobile/vehicle_model/

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