この記事をまとめると
■ホンダ・フリードの4WDモデルを冬季にテストコースにて試乗



■ビスカス式に加えて油圧湿式多板式電子制御カップリングを導入したAWDとなっている



■本格的な降雪地域でもしっかりした走行性を確立しているのが特徴だ



フリードは四駆が狙い目!?

スタイリッシュなデザインに生まれ変わり好評を博している新型フリード。ホンダ独自のe:HEVによるパワートレインを新採用したことと併せて、四輪駆動AWDシステムが強化されていることもトピックスのひとつとなっている。そのAWD性能を試すべく、北海道旭川市近郊に位置するホンダの鷹栖テストコースで冬季に試走していたのでリポートする。



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テストコースは欧州路を模したワインディング路が中心で、積雪は10センチほど。圧雪状態だが、ところどころアイスバーンが磨かれたミラーバーンとなっていたり、また轍が深い部分もあったりで難しいコンディションとなっていた。



装着タイヤはブリヂストン・ブリザックのスタッドレスで標準装着サイズを履かされている。



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ホンダ・フリードプロトモデル(AWD仕様)のタイヤ



車両に乗り込み走り始めると、これまでのフリードとは異なりEVモードで発進することがわかる。2モーターで123馬力(90kW)の最高出力と253Nmの最大トルクを0回転から発生する駆動モーターは力強く、車格を考えれば必要十分以上のパワースペックが与えられている。



発進は基本的にこのモーターによる電動で、スロットルバイワイヤーが細かく高精度に制御していて数値ほどのパワフルさを感じさせないが、雪道での転がり抵抗をものともせずスムースに発進させてくれるところが力強く感じる部分だ。



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ホンダ・フリードプロトモデル(AWD仕様)に乗る中谷明彦氏



前輪駆動モデルであれば駆動輪が空転しトラクションコントロール制御が介入して力強さを感じる前に制御されてしまうだろうが、そこはAWDの強みでしっかりと加速してくれる。従来、フィットベースに採用されていたAWDシステムの場合、ビスカスカップリングによる制御であったため前輪の空転が引き起こされてから後輪が駆動する。そのタイムラグが不可避であったことと、わずかでも空転する前輪の振る舞いが周囲に恐怖感を与えてしまう部分でもあった。



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ホンダ・フリードプロトモデル(AWD仕様)



新型はビスカス式に変えて、ヴェゼルなどにも採用されている油圧湿式多板式電子制御カップリングを採用し、常に駆動力を後輪にも配分するフルタイム方式としている。ホンダはこれを「リアルタイムAWD」として特徴付けていく狙いだ。



また、競合他社のHV車がリヤアクスルにも後輪駆動用のモーターを配し、前後輪を個別に駆動制御するAWDとしているのに対し、リアルタイムAWDはガソリン車と同じくプロペラシャフトにより前後アクスルが機械的に直結している。

これを電動モーターで駆動することで高応答なAWDシステムとして完成させているのである。



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ホンダ・フリードプロトモデル(AWD仕様)のリアデフ



本格的な降雪地にも対応する懐の深さ

発進時には後輪により大きな荷重がかかり駆動トルクもかけられる。パワートレインの直結感もあった加速応答性がいい。ともすれば路面が滑りにくいのでは、と錯覚してしまいそうなほどスムースな発進特性なのだ。



動き始めると駆動系の剛性が高いことも感じられる。雪道でのグリップが前後左右で異なり、滑りに応じて伝わるトルクが変化するが、そうした外乱に駆動系が影響を受けず、しっかりとトルクを伝えているのがフロアの剛性、質感の高さとして感じられるのだ。



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ホンダ・フリードプロトモデル(AWD仕様)



これはプロペラシャフトの保持剛性を高めたことと、リヤサスペンションのブッシュなどの剛性を高めたことなどによるリヤの駆動力を4675Nまで高めることができたことによる。従来の4250Nから10%高められていて、競合他車の1550Nに比べ大幅な強化がなされているという。



いわば生活AWDとして発進時のアシストやスタック抑制という緊急脱出性を求めるAWDではなく、常に後輪にも駆動トルクを配分し、ときには最大出力も負担できる剛性を与えることで走りの全域で質感が高まったことになる。



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ホンダ・フリードプロトモデル(AWD仕様)



車速を上げて欧州路を模したワインディング路をハイペースで走ってみる。直進性が高く安心感が感じられるのはステアリングまわりの剛性が向上させられた効果といえるだろう。パワーステアリングの電動アシストモーター容量を向上させ、外乱に強いステアリング特性としている。



アクセル全開加速をすれば1.5リッター直列4気筒のアトキンソンサイクルDOHCエンジンが始動し、回転を高めていく。エンジンサウンドの室内への侵入は大幅に削減され、またエンジンマウントが改良されてエンジンの振動もほとんど感じられない。パワートレイン全体の静粛性が高く、質感も優れていてコンパクトカークラスとは思えない走行フィールが与えられている。



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ホンダ・フリードプロトモデル(AWD仕様)のエンジン



コーナリング区間ではさらに優れた回頭性とライントレース性のよさを確かめられた。新採用のアジャイルハンドリングアシストがコーナー内側のブレーキを制御して旋回性を高め、またその制御が自然で違和感がない。結果としてライントレース性も向上している。



ただし、雪道には落とし穴もあり、北側斜面のブラックミラーバーンで減速急旋回が重なるとタイヤグリップが失われ急激にスキッドアウトしてしまいそうになる。路面、コーナーのR、適切な車速管理を行う運転スキルが求められるのは当然で、100%機械に任せることはできない。



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ホンダ・フリードプロトモデル(AWD仕様)



フリードのAWDモデルは一般道でも質感の高い走りで快適さと扱いやすさ、燃費のよさを実現している。冬季降雪地域のユーザーにとってAWDは必須であり、従来の生活四駆というその場しのぎのメカニズムでは信頼を確保しきれない。リアルタイムAWDシステムはそうした本格的な降雪地域でもしっかりした走行性を確立し、信頼を得られるシステムとなってフリードの魅力を一層引き立てているといえるだろう。



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ホンダ・フリード諸元表

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