この記事をまとめると
■レクサスLMに新グレード「LM500h version L」が追加された■「LM 500h version L」は3列シートの6人乗り仕様となる
■内装・使い勝手・走りについて徹底チェックした
最高級ミニバンに家族で使える6人乗りを追加
レクサス初のミニバンとして日本にやってきた当初のLM500h EXECUTIVEは、ショーファーカーとしてのキャラクターが強い4座仕様だった。前席と後席が完全にパーティションで仕切られ、後席はまるで飛行機のファーストクラス。上質な素材と至れり尽くせりの快適装備、自然のなかにいるような心地よい静粛性と、レクサスの最新技術を駆使した乗り心地のよさにいたるまで、丁寧に仕上げられたラグジュアリームーバーとなっていた。
今回、追加で発売されたLM500h version Lは、ショーファーカーというよりは高級志向が強いファミリーカーやビジネスカーとしての需要に応える3列シート6人乗り仕様。パワートレインは4人乗りと同様、2.4リッターの直4ターボ+ツインモーターのハイブリッドに、6速ATを組み合わせる。エクステリアデザインもほぼ変わらず、大きな違いは室内のみということになる。
さっそくスライドドアを開けて2列目シートへと乗り込んでみると、まずはとても開放的な空間であることが印象的。4人乗りはパーティションがあって前方の視界がほとんど遮られていたが、6人乗りでは前が開けていて圧迫感がなく、一般的なミニバンのように広々とした空間だ。
キャプテンタイプのシートの左右それぞれの頭上にガラスルーフが備わり、電動でシェードを開けるとさらに明るく気もちよさがアップ。まるで豪邸のパティオでくつろいでいるような気分になる。
その2列目シートも相変わらずゴージャスだが、4人乗りのシートとは少し形状が違うようだ。とくにヘッドレストまわりがやや小ぶりになっているのが見て取れる。とはいえ、背面からオットマンまで調整はすべて電動で、格納式の折りたたみテーブルやシートヒーター/ベンチレーション、USBなどが備わるのは同様。
内側のアームレストには脱着可能なタッチ式コントローラーがあり、シート調整や空調、オーディオ、照明やサンシェードなどの操作や、リラクゼーション機能が備わるところも同様となっている。前後スライドが最大480mmなので、最後端にすればオットマンを出して足をのばし、十分にリラックスすることも可能だ。
気になる座り心地は、もちろん極上。表皮にはレクサスの最上級素材である「Lアニリン」が使われていて、もっちりと肌に添うような感触が心地いい。内部のクッションにもこだわりがあり、異なる2種類の衝撃吸収材が仕込まれていたり、乗り心地に関しても頭が揺れないことを念頭にセッティングされるなど、見えないところにお金と手間ひまをかけているのがレクサスLMだ。
もし3人以上の家族でLMに乗ることになったら、2列目シートは取り合いになること必至。それくらい、3列目シートとは別次元のシートが与えられている。
とはいえ、LMの3列目シートはほかのミニバンに比べたら極上にちがいない。何しろ中国では7人乗り仕様として販売されていて、本来なら3人がけとなるスペースを、贅沢に2人がけで使っている。そのため座面は左右にもゆったりしており、内側に小物収納スペースが備わっているほど。背もたれも大きくたっぷりのサイズがある。
実際に座ってみても窮屈ではなく、足もとスペースにゆとりがあった。しかも素材は1列目シート同様、セミアニリン本革という上質な素材だ。さすがに電動ではないが、これならロングドライブも苦ではないと思える3列シートとなっている。
装備はさすがミニバンといった充実っぷり
そんなLM500h version Lを走らせてみると、4人乗りのEXCECUTIVEのときにも驚いたのだが、予想以上に「操る楽しさ」を感じさせてくれる。ボディのカタマリ感があり、右へ左へとカーブが続くような道での身のこなしは巨体とは思えないスッキリ感。ブレーキングの初期ではやや重さを感じるところもあるものの、加速と減速のコントロールがしやすく、慣れてくれば上質ななかにもキビキビとした爽快感が味わえる。
高速道路の安定感でいえば、4人乗りのほうが重厚な接地感があったように思え、こちらの6人乗りはもう少しスポーティな印象。でもこれなら、家族と離れてひとりで移動する際にも“無駄な空間”を走らせているというストレスはなさそうだと感じた。
使い勝手に関しては、4人乗りとはやや異なる部分がいくつかある。
まず、運転席まわりでは、センターコンソールボックス内に非接触充電のスペースが設けられ、スマホを置いたままでも小物トレイとして使えるようになっている。2列目シートでは、4人乗りでは目の前に大型のディスプレイや冷蔵庫、収納ボックスなどが備え付けてあったが、その代わりにしっかりとした握り心地のグリップ、ペットボトルなどが入る収納スペース、雑誌などが入るシートバックポケットといった、荷物の収納がしやすくなっているのはファミリーユースにも便利。HDMI端子とコンセントもある。
3列目シートの左右にもドリンクホルダーと小物トレイ、USBが備わっている。オーバーヘッドコンソールのスイッチが、3列目の乗員からも使いやすくしてあるところはさすがだ。乗り降りに関しても、手動なので操作はやや重めだがウォークイン機構があり、アクセスしやすいと感じた。
そしてラゲッジは、3列目シートまで使用しても機内もち込み用の小さなスーツケースくらいなら積めるスペースがある。普段の買い物くらいなら余裕で使えそうだ。3列目シートは跳ね上げ格納式で、さすがに操作はやや重い。でも格納時の張り出しは予想したよりも小さめで、これなら大きな荷物も積みやすいと感じた。
ほかにシートアレンジとしては、2列目と3列目をフルフラットにしたり、1列目と2列目をフルフラットにできるモードもある。シートが肉厚でサイドサポートも大きめなので、車中泊をするにはクッションなどで隙間を埋めていく必要はあるが、広さとしては大人2人がゆったりと寝ることができる。こうしたところは、4人乗りにはない6人乗りだけの使い勝手となっている。
価格は4人乗りが2000万円だったところ、6人乗りは500万円引きの1500万円。ただし、アルファード/ヴェルファイアの最上級グレードと比べると、600万円ほど高い価格になる。その価格差をどう見るかは、ミニバンにもレクサスの世界観をしっかりと具現化したインテリアデザインや上質な素材、見えない部分での剛性アップや静粛性へのこだわり、といったところに価値を見出すかどうかで変わってきそうだ。とにかく、現時点で日本に存在する、最高級のミニバンであることに誰も異論を唱えないのがLMである。