この記事をまとめると
■元レーサーのトニー・ジレによって設立されたスポーツカーメーカーの「ジレ」



■ジレの初作「ヴァーティゴ」は0-100km/h加速3.2秒を達成して当時のギネス記録を更新



■現在は「ヴァーティゴ5」と「ヴァーティゴ5スピリット」をリリースしている



ドンカーブート販売を経てオリジナルスポーツカーの製作に着手

かつてレーシングドライバーとして活躍したトニー・ジレによって、1992年に設立されたジレは、本社をベルギーのジャンブルーという街に置く、まさに知る人ぞ知るカルトなスポーツカーメーカーだ。



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ジレから生み出されるモデルは、すべてハンドメイドで生産される超軽量なスポーツクーペで、そのシルエットからはロータス・セヴンの進化形といった雰囲気も醸し出されているが、それもそのはず。ジレは長年オランダのドンカブートのベルギーにおける輸入代理店を営んでおり、ここから自らの名を掲げたスポーツカーを世に送り出すヒントを得ていたのだ。



ベルギーに激熱スーパーカーメーカーが存在していた! 知る人ぞ知る「ジレ」とは?
ジレ社が販売していたドンカーブート



ちなみに彼らがチューニングしたドンカブートのDシリーズは0-100km/h加速で3.85秒を記録。ジレはそのたしかな技術力をもとに自社モデルの生産に乗り出した。



ジレからのファーストモデルは、「ヴァーティゴ」とネーミングされたもので、そのプロトタイプは1992年1月に開催されたブリュッセルモーターショーで初公開された。それから開発はさらに続き、2年後のジュネーブショーでは生産に向けた最終仕様のプロトタイプが公開されたほか、ジレのファクトリーでは、さらに2台のプロトタイプがデザインの最終決定のために、そして衝突実験など安全基準の認証を受けるために製作されていた。



ベルギーに激熱スーパーカーメーカーが存在していた! 知る人ぞ知る「ジレ」とは?
ジレ社のファーストモデル「ヴァーティゴ」の走行シーン



現在もベルギーの地から少量生産のスポーツカーを送り出す

生産型のヴァーティゴは、技術的にも最初のプロトタイプからは大きな進化を遂げていた。シャシーはCFRPとハニカム素材で成型され、高剛性を誇るとともに重量をプロトタイプのそれから58kg低減することにも成功。ボディデザインもエアロダイナミクスを意識して、より滑らかなラインで構成されるようになり、サイドウインドウはより高く、そしてリトラクタブル方式のヘッドライトも新たに採用されていた。



搭載エンジンはアルファロメオから供給を受けた3リッターのV型6気筒で最高出力は226馬力。車重は750kgに抑えられたため、その運動性能は卓越しており、1994年に行われたテストでは3.2秒の0-100km/h加速を達成。これは、当時ギネスブックに記載された記録でもあった。また、2002年モデルでは、搭載エンジンがやはりアルファロメオ製の3.2リッターV型6気筒にスイッチ。さらにそのパフォーマンスが高められている。



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0-100km/h加速3.2秒を記録したジレ・ヴァーティゴのサイドビュー



同じく2002年には、1989年のブラジルGPでテスト中の事故により重傷を負った元F1ドライバーのフィリップ・シュトライフに捧げるモデルとして、「ヴァーティゴ・シュトライフ」が誕生。



ベルギーに激熱スーパーカーメーカーが存在していた! 知る人ぞ知る「ジレ」とは?
ジレ・ヴァーティゴ・シュトライフの俯瞰フロントスタイリング



こちらはアルファロメオの3.6リッター版V型6気筒エンジンを360馬力の最高出力で搭載したもので、実際にシュトライフが購入したモデルは、ジョイスティックで操作できるATが装備されていた。ちなみにこのモデルは2007年までに25台のみが生産された。



そして、現在のジレが生産しているモデルが「ヴァーティゴ5」と「同スピリット」の両車だ。搭載エンジンはアルファロメオ製から、フェラーリがマセラティのために生産した4.2リッターのV型8気筒に変化。注目の最高出力は420馬力に達し、一方で車重は950kgに抑えられているから、その走りがさらに過激なものになっていることは想像に難くない。



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ジレ・ヴァーティゴ5スピリットのフロントスタイリング



プッシュロッド方式のダブルウイッシュボーンサスペンションや、AP製のレーシングブレーキなど、シャシーの強化に関しても万全の備え。前後のホイールは18インチ径とされ、フロントには225/35ZR18サイズ、リヤには295/30ZR18サイズのタイヤが組み合わされる。



ベルギーの地から送り出された少量生産のスポーツカー。それは世界のライバルと比較してもまったく引けをとらない、第一線の運動性能を発揮するまさにスーパースポーツにほかならなかったのである。

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