この記事をまとめると
■トヨタは異業種企業の合同プロジェクトにより「WiLL」シリーズを手掛けた■WiLLシリーズの第2弾が「WiLL VS」だった
■ステルス戦闘機がテーマとなっておりカローラベースでありながら専用装備が多かった
ステルス戦闘機をイメージ!
みなさんは2000年から2002年にかけてトヨタが発売した「WiLL」シリーズというクルマを覚えているだろうか。異業種企業の合同プロジェクトで、花王やアサヒビールも参加。その第1弾がカボチャの馬車をイメージした「Vi」(2000~2001年)。
そして第2弾となるのが、「WiLL」シリーズでもっとも尖った存在だった「VS」(2001~2004年)だ。トヨタ車とは思えない、ステルス戦闘機をモチーフにした奇抜なデザインコンセプトで、「理屈抜きにカッコいいスタイル」を追求したとされる、当時のカローラなどと同じプラットフォーム、パワーユニットを用いたコンパクトカーだ。

もっと詳しく説明すると、「リラックス」「エモーション」「クリエイティブ」「クール」という4つのテーマに基づきプロモーションを実施した「WiLL」シリーズのなかで、「クール」商品として発売されたのが「WiLL VS」。大胆でスタイリッシュなデザインと優れたユーティリティ、高い走行性能をあわせもつクロスオーバータイプの新コンセプト5ドアモデルだと説明される。

ボディサイズは全長4385×全幅1720×全高1430mm。ホイールベース2600mm。室内寸法は室内長1830×室内幅1405×室内高1185mm。車重は1190kg(2ZZ-GE1・8LVVTL-i 2WD)だ。
パワーユニットは1.8リッターVVT-i機構付き直4DOHC(1ZZ-FE型)、および1.8リッターVVTL-i機構付き直4DOHC(2ZZ-GE型)の2種。1ZZ-FE型は駆動方式によってスペックが異なり、FFが136馬力/6000rpm、17.4kg-m/4200rpm、Vフレックス フルタイム4WDは125馬力/6000rpm、16.4kg-m/4200rpmというもの。一方、2ZZ-GE型は190馬力/7600rpm、18.4kg-m/6800rpmものパワーとトルクを絞り出す高性能ユニットを搭載する(こちらの10・15モード燃費は12.0km/L)。

見た目を裏切らない走りに痺れた
サスペンションはフロントがストラット、リヤはFFがトーションビーム、4WDはダブルウイッシュボーン。
インテリアも斬新だ。繰り返すがシフターは操縦桿のようなL字デザインで、メーターも戦闘機を彷彿させるグラフィックが用いられていたのである。いい方を変えれば子供っぽいが、そこがまた男の子に刺さったはずである。

安全装備としては全車にデュアルエアバッグ、フォースリミッター&プリテンショナー付きシートべルト、ブレーキアシスト、EBD付きABS、ブレーキアシストを標準装備する。2001年4月の発売当初の価格は175~205万円であった。
なお、「WiLL VS」には100台限定でマニュアル車が用意された「レッドスペシャル」や「ホワイトスペシャル」というレアなモデルも存在した。

そんな「WiLL VS」の走りは、当時のカローラより遥かに煮詰められたものだったと記憶する。前席に限ればシートのかけ心地はいいし、足まわりもベースのカローラに対して専用化され、操縦性も、硬めの乗り心地もまずまずのレベルに仕上げられていたのだ。エンジンやATはカローラ譲りのはずだが、カローラに対してグレードが少なく、タイヤも2種類だったことが、走りの煮詰めがしやすかったということだろうか。

ちなみに「WiLL」シリーズ第3弾は2002年10月に発売された「WiLLサイファ」。ディスプレイ型ヘルメット、サイバーカプセルをコンセプト、テーマとした、初代ヴィッツのプラットフォームを用いたハッチバックタイプのコンパクトカーで、トヨタ初の車両情報通信サービスの「G-BOOK」に対応し、話題を呼んだ。その後、パッソや2代目ヴィッツの登場もあり、2005年7月に生産終了。「WiLL」プロジェクトも終了している。

中古車情報サイトで「WiLL VS」を検索してみると、8台がヒット。100万円以下からの値付けだった。今、乗っても、かなり目立つクルマであることは間違いない。ステルス戦闘機をモチーフにしたエクステリアデザインもさることながら、トヨタマークが付いていない無国籍風の1台だからだ。
