この記事をまとめると
■ホンダが新規開発した5リッターV8の船外機BF350搭載艇に試乗した



■ホンダの船外機はレギュラーガソリン仕様で常用負荷回転域でリーンバーンする



■騒音や振動レベルはこのクラスの船外機でベストな出来ばえだ



市販車にはないホンダのV8エンジン

何と! ホンダがカーボンニュートラルのため絶滅危惧種になりつつある5リッターのV8エンジンを新規開発した! Vバンク角60度。350馬力だという。レーシングエンジンなら12気筒だって作るホンダながら、市販車用になるとV6までしか存在しなかった。

排気量も3.7リッターまで。そんなことから、アメリカの売れ筋になっているフルサイズピックアップトラックやSUVを出せないでいる。



【試乗】ホンダが5リッターV8エンジンを新開発! 350馬力...の画像はこちら >>



今や350馬力以上がドル箱になっている船外機も(基本的に自動車用エンジンのブロックを使う)、3.6リッターV6の250馬力が上限だった。一方、アメリカに於ける船外機のニーズは、もはや世紀末的といっていい。350馬力なんか当たり前。というか、350馬力であれば4機掛けも普通。ここにきてヤマハは5.6リッターV8の450馬力を出し、マーキュリーが7.6リッターV12の600馬力を出してきた!



600馬力の4機掛けなんか2400馬力! フルパワーにしたらハイオクを1時間800リッター喰う! マイアミとかに行くと、4機掛けのパワーボートがトランプさんの旗を立てて走りまくっている。という市場にホンダは最大で250馬力までしかラインアップしていなかった。もう誰が考えたってジリ貧。フネ業界じゃ「ホンダもマリン事業を縮小するか、売却するしかないね」といわれていたほど。そんななか、突如の350馬力である!



【試乗】ホンダが5リッターV8エンジンを新開発! 350馬力ながらレギュラー仕様の船外機は「燃費」も「静かさ」も「さすがホンダ」だった!!
ホンダの船外機BF350



スペックを見たら興味深い! このクラス、当然のことながらハイオク仕様なんだけれど、ホンダはレギュラー。加えて常用負荷回転域でリーンバーンするという。

お金持ちだとハイオクだレギュラーだヘチマだナスだと言わないが、燃費重要。同じ4000リッタータンクなら(アメリカでも満タンで50万円!)、10%燃費よければ航続距離を10%伸ばせる。パワーボート、構造的に燃料タンク容量を増やせないのだった。



【試乗】ホンダが5リッターV8エンジンを新開発! 350馬力ながらレギュラー仕様の船外機は「燃費」も「静かさ」も「さすがホンダ」だった!!
ホンダNSXとBF350



燃料代まで含めれば20%程度運行コストも下がる。東南アジアなどでニーズの多い観光船(パタヤビーチなどでお馴染み)も350馬力級の船外機を多数搭載するため、20%の運行コスト削減は大きい。いずれにしろ350馬力船外機で世界一運行コストが低い船外機というストロングポイントをもたせたワケ。ホンダ、マリン事業を諦めず、むしろ攻めていこうということなんだと思う。となれば次は400馬力か!



BF350はバランスのよいクラスベストの船外機

長い前置きになった。試乗と行きましょう! 最初のフネは『NSB335』という日本製。今までホンダなら250馬力エンジンの2機掛けだった。正直なところ、船体(ハル)の剛性不足なのか巡航時~高速巡航時に振動を感じるなど、あまり印象よろしくなかったフネです。期待せず走り出すと、あらま! 不等間隔爆発の60度V8ということもあり、アイドリングで若干エンジンが揺れていたが、回転数上げていくと滑らかになっていく。



【試乗】ホンダが5リッターV8エンジンを新開発! 350馬力ながらレギュラー仕様の船外機は「燃費」も「静かさ」も「さすがホンダ」だった!!
ホンダBF350を2機がけしたNSB335



船外機も乗用車と同じく振動を低減させるエンジンマウントを使うけれど、基本的にハルから飛び出させて搭載する。しかも乗っている人から1mくらいの距離にあるため、振動&騒音が大きいと厳しいことになってしまう。350馬力は驚くほど滑らかで静か。フネがよくなったような気がする。いやいや船外機でこれほどフネのイメージ変わるとは思ってもいなかった。それだけ350馬力の設計が新しいということなんだと思う。



ちなみに全開すると50ノット出た! 凄いね! 時速にしたら95km/hながら、海の速度感って陸上の3倍といわれる。実際、50ノット出るフネは少ない。一番速い海上保安庁の高速特殊警備船で40ノット。自衛艦だと『はやぶさ』が最速の44ノット。海面から浮いて航行するジェット船ですら45ノットしか出ない。30ノットの巡航なら(それでも素晴らしく速い!)リーンバーンモードになり燃費を稼げる。



【試乗】ホンダが5リッターV8エンジンを新開発! 350馬力ながらレギュラー仕様の船外機は「燃費」も「静かさ」も「さすがホンダ」だった!!
ホンダBF350を2機がけしたNSB335



続いて乗ったのは『ロバロ305B』というアメリカのフィッシャー(西洋風の釣りをするためのフネ)。ハルが厚いためドッシリした乗り心地を持つ。アメリカンフィッシャーに350馬力2機掛けはマイアミあたりだと当たり前。一番多い組み合わせだと思う。もっといえばこういったフネ用に開発されたため、快適至極! フネが重いので40ノットくらいしか出ないけれど、多少の波をなど断ち切っていく。



【試乗】ホンダが5リッターV8エンジンを新開発! 350馬力ながらレギュラー仕様の船外機は「燃費」も「静かさ」も「さすがホンダ」だった!!
ホンダBF350を2機がけしたロバロ305B



25ノット程度の巡航も試したが、やはりリーンバーンモードに入り、騒音や振動レベルはこのクラスの船外機のベストといっていい。ヤマハやスズキの350馬力だとV6なのだった。静かさという点でライバルになるのはマーキュリーの5.7リッターV10ながら、価格と燃費と重量で優位。ホンダが新型350馬力のストロングポイントを積極的にアピールしていけば、なかなかいいビジネスになりそうです。



【試乗】ホンダが5リッターV8エンジンを新開発! 350馬力ながらレギュラー仕様の船外機は「燃費」も「静かさ」も「さすがホンダ」だった!!
ホンダ船外機BF350の諸元表

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