この記事をまとめると
■中国政府は特定の車両から要件を満たした車両への乗り換えに補助金を交付している



■日本では中国経済停滞が報道されるが新車販売においてはその兆しは見えない



■中国政府としては補助金制度によってBEV普及率をさらに上げたいと考えている



現地ではスクラップインセンティブにより新車販売は好調の報道

中国政府は2024年4月より、いわゆる「スクラップインセンティブ」を実施していたが、「2024年12月31日までに対象車の廃車」を実施し、1月10日までにオンライン申請を行うという締め切りが近づいている。



情報によると、「国III」という「ユーロ3」に相当する排出ガス基準以下のICE(内燃機関)車(ガソリン車は2011年6月30日以前に登録、ディーゼル車は2013年6月30日以前に登録された車両)、または2018年4月30日以前に登録された新能源車(新エネルギー車・BEV[バッテリー電気自動車]/PHEV[プラグインハイブリッド車]/FCEV[燃料電池車])を廃車し、要件を満たす車両へ乗り換えた場合に補助金が交付されるというもの。



新しいエコカーに乗り換えれば「補助金」&「免税」! 中国が「...の画像はこちら >>



新能源車へ乗り換えた場合には1万元(約22万円)、排気量2リッター以下のICE車へ乗り換えた場合には7000元(約15.4万円)が補助金として交付されるとのこと。



ちなみにこのスクラップインセンティブ導入に先んじて、新能源車を対象に、自動車取得税の免除措置が実施されており、2027年末までこの措置が延長されている。



新しいエコカーに乗り換えれば「補助金」&「免税」! 中国が「新車販売が好調」と伝える裏にある「スクラップインセンティブ」とは
中国国内の充電設備



日本における中国関係の報道を見ると、中国経済全体が苦しい状況にあるとするものが目立つなか、中国メディアはことあるごとに発表する政府統計などでは、「新車販売が好調」としてきている。情報ではこの補助金で100万~200万台の新車販売台数押し上げ効果があるとしている。



年間新車販売台数が3000万台ほどなので、全体の1割弱の押し上げ効果をどう見るかは判断がわかれそうだが、いわれている経済悪化に比べれば、新車販売はそれほど大きなダメージを受けているようには見えないので、効果は確実にあるようだ。



中国政府は補助金制度による新能源車への切り替えを期待する

現状をみると、中国経済への「カツ入れ」のように見えがちなのだが、中国全土で見ればいまだに大気汚染も深刻な状況となっている。政府としては「一挙両得」というわけではないが、これを機に一気に可能な限り新能源車への切り替えを進めようとしているのかもしれない。



アメリカでは2009年にスクラップインセンティブを行っている。南カリフォルニアで当時の話を聞いたところでは、締め切り日は多くのディーラーにて補助金目当てで新車に乗り換えようとする人が大挙して押しかけたそうだ。



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アメリカのトヨタディーラーの外観



現金一括払いは資金洗浄の恐れもあり、当時から原則受け付けていなかった。その一方で、ローン審査には結構時間を要すこととなり、その日は多くのディーラーで店を閉めずに終夜営業を行ったのである。「なかなか商談もできないお客さままで出てきて、ピザなどの食事を用意してもてなすディーラーも出てきました」(当時を知る業界通)。



このときはリーマンショック直後でもあり、経済対策的色合いも強かったが、アメリカ政府としてはここで一気に大排気量で排ガス基準の緩いころの古い車両に乗っている人の一掃を行うという意味でも補助金制度を推し進めたとされている。

「最後まで古いクルマに乗っていたお隣さんが、このとき最新の日本車に乗り換えた」とは当時に聞いた話。



中国車といえば、最新のBEVが世界的にも注目されているが、中国国内では主要都市であっても、まだまだ年式の古いクルマがたくさん街なかを走っている。補助金対象車を見ても、ガソリン車で2011年6月30日以前の登録車、ディーゼル車で2013年6月30日以前の登録車なので、ガソリン車で13年落ち、ディーゼル車で10年落ち以上の低年式車が対象なことからも、政府も街なかで低年式車が目立っていることは承知していたようである。



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中国国内の道路の様子



新能源車への乗り換えのほうが補助金は手厚いことからも、政府としてもこれでさらにBEV普及率も上げたいと思っているのは否定することはできないだろう。



不思議なのは、自国メーカーが数多くあるし、中国という特殊な政治体制を考えれば、補助金交付を「中国メーカー車」に限定してもおかしくないように思えるのだが、そこは中国車が海外ブランド車かという単純な縛りを設けないところは意外だと思っている。

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