この記事をまとめると
■アウディ・スポーツ・クワトロはグループBやラリーで活躍した伝説的モデル■ドイツの「ELEGEND」が生んだ「EL1」はスポーツ・クワトロをオマージュしたEV
■816馬力のモーターを搭載した4WDマシンで約1億5000万円
アウディの伝説がレストモッドで蘇った
いま、クルマ好きなら誰もが憧れる往年の名車を、新たな解釈でEVとしてリリースするのがトレンドです。そんなタイミングで登場したのがラリーやグループBカテゴリーのファンにはお馴染みのレジェンドモデル、アウディ・スポーツ・クワトロを再解釈した「EL1」。じつはスポーツ・クワトロ大好きな親子による渾身の傑作でした!
ドイツのELEGENDは、デザイナー兼エンジニアのマーカス・ホルツィンガーによって創設された新興ファクトリー。

で、この父親は1980年代にフォルクスワーゲン/アウディのデザインスタジオに在籍していたそうで、なんとスポーツ・クワトロのチーフモデラーまで務めた人物。で、息子は息子で父親に連れられてスポーツ・クワトロのラリーをリアルに観戦していたという、じつに幸せなクワトロ・ファミリーというわけです(笑)。

自動車メーカーの試作車、すなわちクレイモデルから実際の素材を使ったリアルなハードモデルをじゃんじゃん作っていたホルツィンガー親子ですから、「そろそろスポーツ・クワトロ、再解釈してみようや」となったのもごく自然な流れに違いありません。
いうまでもなく、スポーツ・クワトロは直列5気筒ターボ(R5型)から450馬力を絞り出していたアウディきってのモンスターモデル。これを最先端の材料工学やEVテクノロジーを駆使して製作すれば、ずるいくらいカッコよくなること明らかです。

さて、実車はこれでもかというくらいスポーツ・クワトロのシルエットを再現しています。それどころか、特徴的なブリスターフェンダーはさらに強調され、より極端なコークボトルシェイプとなりました。

短めなボディとあいまって、パワーの塊かのような力感こそEL1最大のアイコンではないでしょうか。むろん、素材はカーボンで、これまたスポーツ・クワトロ同様にフロントフードがフェンダーごとガバっと開き、往年のラリーマシンをほうふつとさせてくれること間違いなし。

また、ボンネットに大きく開けられたインテークは、スタイルだけでなくEVコンポーネントを冷却するための機能も持たされています。一方で、ルーフには大胆なNACAダクト風グラスエリアが設けられており、アイキャッチとしても、また室内の明るさにも貢献。

さらに、フロント19インチ、リヤ20インチのホイールサイズとすることで、プロファイルをくさび型に見せることに成功。止まっているのに、あたかも前進しているかのような躍動感を見せてくれるのです。

細身のAピラーといい、台形のCピラーといい、スポーツ・クワトロのディテールを再現しながら、よりマッシブなボディを作り上げているのは、さすが当時のスタイルを知悉したホルツィンガーならではのセンスといえるでしょう。
走行性能もオリジナル以上をEVで再現
もちろん、EL1はスタイルだけでなく走りの装備も抜かりありません。前後にひとつずつモーターを搭載した4輪駆動で、搭載する80kWhのバッテリーは、400kmの航続距離を実現。最高出力816馬力を発揮して、100km/hまでの加速は2.8秒でクリア。また、最高速度は300km/h、0-200km/hは7.5秒とのことですから、アウトバーンでも無双状態で走れることは確かでしょう。

カーボンモノコックの仕上がりも美しく、高精度なこと疑いようもありませんが、EL1は前後ダブルウイッシュボーン(オリジナル同様です)と電子制御ダンパーを組み合わせています。
調節可能なアンチロールバーもカーボンで作成され、ホルツィンガー親子は「このままラリー競技に参戦できる」とまで豪語しています。たしかに、フル装備で1790kgという驚くべき車重も絶大なアドバンテージを生み出していることでしょう。

ちなみに、リヤスカットルの上にはヘルメットを載せるスペースが用意されたほか、トランクスペースは機内持ち込みサイズのケースを2個、加えてゴルフバッグも2個搭載できるとのこと。

なお、EL1の価格は89万ユーロ(約1億5000万円)とのことですが、なかなか戦略的な値付けかと。なんならオークションではロードバージョンのスポーツ・クワトロが50万~60万ユーロ(約8200万~1億円)で取引されており、またラリー仕様となれば100万ユーロ(約1億6000万円)を優に超えるものばかり。

パフォーマンスは明らかにEL1が勝っていると考えると、ビリオネアの方々が迷うのも致し方ないところかもしれません。