この記事をまとめると
■EVの回生機能はアクセルを離したときに発生した電気を車載バッテリーに戻すことを指す■傾斜角度の違いによって回生量は異なる
■下り坂を使うと急速充電を1回パスできるほど電力を回収できる場合がある
EVにおける回生は頻繁に行われている
電気自動車(EV)で最大の特徴といえるのが減速時の回生だろう。これは、ISG(モーター機能付き交流発電機)を装備しない一般的なエンジン車ではあり得ない機能である。
回生とは、生き返るという意味だ。
エンジン車で速度を落とす場合は、アクセルペダルを戻しただけのときは車体の空気抵抗やタイヤの抵抗(グリップ力が減速では抵抗になる)などにより速度が落ちる。さらにブレーキペダルを踏めば、パッドとローターの摩擦で熱が発生し、その熱を大気中へ逃がすことで、クルマが走るという運動エネルギーを消費している。速度が落ちて、停車することができる。
EVは、回生があるおかげで減速するときに、ただ走行中の運動エネルギーを熱にして大気に捨てるのではなく、電力としてバッテリーに貯めることができ、それは、使った電力の一部を回収することにつながる。

EVが回生を使える理由は、モーターと発電機が同じ機構であるからだ。
では、どれくらい回生(電力を回復)できるのか?
EVのエネルギーメーターを見ると、アクセルペダルを完全に戻さなくても、速度を下げるときに若干の回生が行われていることがわかる。エネルギーメーターの針が、出力側から回生側へ振れている表示がそれだ。ほぼ一定速度で走っているつもりでも頻繁に動いているのが特徴で、前を走るクルマの速度変化などによって頻繁に回生が行われている証となっている。

では、その電力はどれくらいかというと、瞬間燃費計と同じように一瞬の動きなので、正確に数値をとらえるのは難しいのが実情だ。
また、下り坂などでアクセルペダルを完全に戻した場合でも、傾斜角度の違いによって回生量は異なるし、法規上メーターをじっと見つめているわけにもいかないので、何kWh(キロ・ワット・アワー)と具体的な数字は答えにくい。
下り坂の効力は凄まじい
一例として、富士山の5合目からの下りで回生を多用し、下山した際、どれくらいの充電量を回復できたか、その電力量はどれくらいかを試した記事がネット上に出ている。
私も、初代リーフが発売されて間もなく、リーフの初期型(バッテリー容量24kWh)で箱根へ行き、下り坂で回生効果を実感したことがある。記憶をたどり、おおよその報告となるが、箱根湯本駅最寄りの箱根町役場の急速充電器で80%まで充電したあと、国道1号線で箱根の山を登り(正月の箱根駅伝のコースと同じ)、芦之湯の知人宅(海抜850メートル)まで行き、そこから芦ノ湖周辺を多少走って、再び箱根湯本へ戻った。

芦ノ湖からの帰宅時に、バッテリー充電量は半分以下に減っていたが、ずっと下り坂となる1号線で箱根湯本へ戻ったら、このときは回生効果によって80%まで回復していた。つまり、帰宅の際には、箱根町役場の急速充電器を使う必要はなかったのである。そのまま都内へ戻ることができた。
このとき、登り坂では電力消費が多くなるが、下り坂が続くと急速充電を1回省けるほどの充電が回生によって実現したことになる。
現在、初代リーフよりバッテリー容量の少ない日産サクラに乗っているが、たとえば、自宅から御殿場インターチェンジまで充電残量50%以内で到着できれば、帰りのための急速充電をせずに帰宅できることになる。御殿場から大井松田まで、ほぼ下り坂が続くためだ。

EVの一充電走行距離とは、単に平地での移動距離数だけでなく、登り坂と下り坂の有無で、想定より短くなる場合があれば、逆に長くなることもあり得る。それほど、回生の威力は大きい。
EVでワンペダル運転が有効といわれるのは、この回生を最大に活かした操作になるからだ。