この記事をまとめると
■スーパーカブ50 Final Editionが1万台超の受注を記録■排ガス規制により50ccモデルは終了するが、新型が登場予定
■「スーパーカブ」の名称は、ホンダの補助エンジン「カブ」に由来するものだった
スーパーカブの50ccモデルがまもなく廃止
2024年11月に3週間足らずの期間限定で販売された「スーパーカブ50 Final Edition」が、なんと1万台を超える受注を集めたとニュースになったことを覚えているでしょうか。
これほどの人気となったのは、名前にもあるように、これをもってスーパーカブ50が生産終了になってしまうからでしょう。1958年に発売された初代モデル「スーパーカブC100」以来、デリバリーや営業のアシとして活躍してきたビジネスバイクのファイナルモデルを手に入れようと考えた人が多かったのでしょう。
もっとも、スーパーカブの歴史がファイナルになってしまうわけではありません。
ご存じのように、排ガス規制との関係で、これまで50cc以下とされていた原付一種のエンジンは排気量125ccを上限として、出力を制限したユニットになることが決まっています。そのため、“スーパーカブ50”はファイナルとなりますが、排気量を増やして排ガス規制をクリアした新しい原付一種のスーパーカブが登場することは既定路線といえます。
また、初代以来の伝統である、省燃費、信頼・耐久性に優れた4ストロークエンジンを搭載したスーパーカブの原付二種モデル「スーパーカブ110」は引き続き生産されることが公表されています。スーパーカブの歴史は途絶えることなく続いていくわけです。
ところで、スーパーカブといえば、乗降性に優れた低床バックボーンフレームを、フレンドリーでスタイリッシュなプラスチック製カウルでカバーしたカタチを思い浮かべますが、こうしたスタイルはなんと初代モデルですっかり確立されていたことはご存じでしょうか。

当時でいう「出前」のニーズに合わせて、片手運転できるようにという配慮で、左手でのクラッチ操作不要な自動遠心式クラッチの採用といった設計思想は、まさにユーザーフレンドリーなデザイン。
もっとも、片手運転を推奨するような表現は、令和のコンプライアンスには不適切な印象もあるでしょうし、なんなら出前は死語となっていて、いまではフードデリバリーと呼ぶべきなのかもしれませんが、いずれにしてもビジネスバイク界の大革命となったのがスーパーカブの誕生だったのです。
意外と知られていない「カブ」の系譜
そんな「はたらくバイク」のスタンダードとなったスーパーカブですが、超がつくほどの省燃費性能を評価して、ホビーユースをメインに楽しむユーザーも増えていきます。そうしたユーザーを投資用語になぞらえて「カブ主」などと呼ぶこともあります。
現在では、クロスカブやハンターカブなどホビーユースのバリエーションも増えたこともあり、スーパーカブではなく「カブ」と省略して呼ぶ人も多いでしょうし、そもそも「なぜに“スーパー”とついているんだろう?」と疑問に思っているかもしれません。

その答えは単純で、スーパーカブ以前にホンダには「Cub(カブ)」という商品が存在していたからなのです。
ホンダ・カブというのは自転車に取り付ける補助エンジンの製品名。「白いタンクに赤いエンジン」というキャッチコピーでスマッシュヒットとなり、ホンダの創成期を支えた製品でした。自転車を原付に進化させる「カブ」のネームバリューを活用しつつ、車体までホンダで設計製造した進化モデルであることをアピールするために“スーパーカブ”というネーミングになったといえます。

同じような例は、四輪でもあったりします。奇しくもスーパーカブが年間55万台以上も売れていた1960年に誕生したダイハツのボンネット型の軽トラック「ハイゼット」が、そのモデルです。
アルファベット表記では「Hijet」となりますから、ローマ字読みの感覚では「ハイジェット」とするのが自然ですが、ハイゼットという読み方になったのは、ダイハツの3輪トラック「ミゼット」があったから。ミゼットの兄貴分としての4輪トラックであるからミゼットの高級版ということでハイゼットという車名になったといわれています。

というわけで、自転車用補助エンジンとしての「カブ」があったからこそ、「スーパーカブ」という車名が生まれたのです。ついつい"カブ"と省略したくなりますが、ホンダの歴史に敬意を表して、正しく「スーパーカブ」と呼ぶべきなのかもしれませんね。