スズキが得意とするコンパクトカーで新たなアイデアを提示した
130万人もの来場者を集めたという東京モーターショー2019。思い返せば、スズキのブースでは2台のショーモデルがステージ上で注目を集めていた。1台はスイッチひとつでクーペからワゴンボディへ変身、フロントマスクやインパネ意匠を切り替えることもできる『WAKUスポ(ワクスポ)』。
いずれも全長4m未満のコンパクトカーで、いかにもスズキが得意としているカテゴリーへの提案といえる。とはいえ、小さなスライドドアを持つワクスポのボディや、ステアリングなどのないモバイルルーム、ハナレはすぐさま公道デビューをするタイプのコンセプトカーではないことは自明。アイディアの提示という段階だ。そのせいか、パワートレインについてはワクスポはPHEV、ハナレはインホイールモーターのEVと発表されているが、モーターショーでパワートレインについて積極的にアピールしていた印象はない。
それでも、最近のスズキとトヨタの協業関係が深まっていることを知っていると、トヨタの電動化技術を採用しているのではないか? と思うかもしれない。その協業は2016年10月、2017年2月に業務提携に向けた覚書を締結したことからスタートしている。
以来、2019年3月にはトヨタからTHS(トヨタハイブリッドシステム)の供給や、トヨタからスズキへの電動車OEMといった具体的項目が発表された。2019年8月には資本提携まで踏み込んだ合意書を締結している。また、スズキはこうした関係を受けて、トヨタがマツダやサプライヤーと立ち上げた電気自動車のコモンアーキテクチャー開発会社「EV CA Sprit」にも参画している。
本格的な技術交流は今後のモデルに期待!
そうした伏線を、これらコンセプトカーで回収したと考えるのは早計だ。
まずワクスポのPHEVシステムについて。
また、駆動系は前後にモーターを置いた四輪駆動を示していた。システム作動状況からするとリヤモーターは常時駆動に近い制御をしている模様で、トヨタの影響というよりもスズキ独自のシステムと考えるほうが妥当だ。もっとも、コンセプトカーのPHEVシステムについて明言していないというのは、将来的には量産効果の期待できるTHSを、トヨタから供給を受けることで採用するという含みを持たせるためという面も否定できない。
もう一台のハナレについても、前述のようにインホイールモーターを四輪に配することで“前後”という概念をなくした自在な移動を実現しているのが特徴。小型のインホイールモーターを使ったコミューターというアイディア自体は珍しいものではないが、だからといってトヨタから供給を受けるという種類のハードウェアでもない。こちらもスズキが独自に研究しているパワートレインと考えるべきだろう。
とはいえ、実際にこうした電動モビリティを量産するとなるとバッテリーの開発や安定供給といった課題が出てくる。その際に、トヨタの仲間(アライアンス)になっていることで解決できる部分も多いはずで、スズキの電動化プロジェクトがアライアンス効果を前提としていることは間違いないだろう。

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