過去は2気筒が主流で直4やV型も存在した
2019年現在、新車販売されている軽自動車のエンジンは3気筒しかありません。乗用車用エンジンをピックアップすると、ダイハツはKF型、スズキはR06A型と新型ハスラーに搭載するR06D型、ホンダはS07A型とS07B型、日産・三菱は3B20型とBR06型を採用しています。いずれも3気筒DOHCエンジンです。
かつて軽自動車の排気量は360ccだったり、550ccだったりしていたのですが、そのころのエンジンは2気筒が主流でした。360cc時代でいえば、スバル360は2ストローク2気筒、ホンダN360は4ストローク2気筒で、いずれも並列(直列)レイアウトの空冷でした。

しかし360ccの時代は2気筒しかなかったわけではありません。スズキはフロンテクーペなどに2ストローク3気筒エンジンを積んでいました。4ストローク6気筒エンジンに匹敵する滑らかさというのがウリのエンジンでした。またユニークなエンジンといえば当時はオリジナルの軽自動車を作っていたマツダです。R360クーペにはV型2気筒の4ストロークエンジンを、キャロルには直列4気筒の4ストロークエンジンを、どちらもリヤに搭載していたことも記憶に残ります。

軽自動車の規格が改正され、排気量が550ccに上げられた1980年代になっても2気筒が主力だったのは変わりません。環境対応から空冷・2ストロークは徐々に消えていき水冷・4ストロークにシフトしましたが、それでも主流は2気筒でした。スバル・レックス、ホンダ・トゥデイといったモデルは2気筒でしたし、軽自動車初のターボエンジンを積んだ三菱ミニカも2気筒でした(このモデルはFRレイアウト)。

そういう意味では軽自動車は3気筒にこだわってきたわけではありません。むしろ、3気筒はコスト高ながら振動面や性能面では2気筒より有利な高級なエンジンというイメージさえありました。
トータルバランスで考えると現状は3気筒がベストという結論に
その後、軽自動車の規格が変わり排気量が660ccまでアップされると3気筒が主流となっていきました。また、スバルはひと足飛びに4気筒へと進化しましたが、スズキ、ダイハツ、三菱の各社も4気筒エンジンをラインアップした時代があります。排気量拡大の噂もあり、次世代軽自動車のエンジンは4気筒が主流になるというムードが漂ったのです。
しかし、実際に4気筒エンジンが各社から出揃ってみると、いずれも回して楽しいエンジンながら、実用性を考えると660ccという排気量においては3気筒のほうがバランスに優れているという結論を市場は導き出したといえます。その結果、徐々に4気筒エンジンは消えていきました。ちなみに、最後まで4気筒エンジンを積んでいた軽自動車はダイハツ・コペン(初代)です。

このように軽自動車が進化していくなかで、さまざまなエンジンが市販車に搭載されてきました。
各社が3気筒エンジンを磨き上げてきたことで、排気量の制限というネガも徐々に解消されていきます。かつては660ccの排気量では車重に対してアンバランスなため、800ccくらいのほうが燃費に有利という声もありましたが、最新の軽自動車であればNAエンジンであっても十分に走ってくれますし、CVTとの組み合わせのおかげでエンジン回転数も抑えられているのでノイズも少なくなっています。パフォーマンス面でも、加速したとき極端に燃費が悪化するようなこともなくなっています。
最新世代のKF型、R06D型、S07B型、BR06型はいずれもロングストロークタイプで小径ボアの3気筒エンジンという点が共通しています。小径ボアは燃焼に有利ですし、ロングストロークは低回転域での乗りやすさを出すのに優位といわれています。こうした実用性の高いエンジンが揃うことで軽自動車は売れていると考えることもできます。いろいろなエンジンを各メーカーが試したうえで、ウェルバランスの3気筒エンジンを進化させてきたことが、軽自動車が国民車といえるほど売れる時代につながったといえそうです。