日本人の「青」という表現は幅広い

信号機の色は、国際的に赤、黄、緑となっている。これは、国際照明委員会(CIE)によって、信号として使える色を、赤、黄、緑、青、白に定めているなかで、信号機に割り当てられているのが冒頭の3色であることによる。したがって、英語では青信号をグリーンライトと呼んで、ブルーライトとは言わない。



では、日本ではなぜ緑色の信号を青と呼ぶのか。調べると諸説あるが、日本人にとって青と表現した際の色の範囲が広く、いわゆる青色はもちろんのこと、藍や緑も青と表現する言い方が古くからあったとされる。たとえば葉物の野菜を青物と言う。あるいは、青々と茂る草、竹も緑色だが青竹という言い方をする。一方で、新緑の季節と言い、新青の季節とは言わない。



一つの色として目で区別はしていても、緑を青と言うことを日本ではあまり不自然に感じず、赤でも黄でもなく、青だと言ってもよしとする感性が日本人にはあるのだろう。



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日本に信号機がはじめて導入されたのは、1930年(昭和5年)とのことである。アメリカ製で、当然、赤、黄、緑の配色であった。それでも青信号という言い方が世間で定着したため、47年(昭和22年)から、法令でも青信号と呼ぶようになっている。



日本は欧米の信号機の使い方を見習う必要がある

話は変わるが、信号機に関する余談として、たとえば米国では、日本の右折に相当する左折の青信号が先に点灯し、のちに直進の青信号に切り替わる地域がある。こうすることで、左折(日本の右折)を待つクルマの列で直進するクルマを渋滞させないためだ。



欧州では、赤から青へ信号が変わる際、赤と黄が一時的に同時に点灯し、それから青信号になる。

こうすることで、交差点に近づいたクルマの運転者が、間もなく信号が青になることを事前に知ることができ、必要以上に減速せず、停車しないで再発進でき、クルマの流れを阻害しにくくなって、渋滞を起こしにくくなるのである。



緑色なのになぜ青信号と呼ぶのか



欧米の信号の使い方は、基本的にクルマの流れを停滞させず、なおかつ安全を守る考えがある。これに対し、日本はクルマの速度を落とし、停車させることが安全であるとの考えから、クルマの流れを阻害し、渋滞の要因になってあまり意識されない。それによって、交差点に来るたびに赤信号で止められたり、渋滞が生じたりして運転者が苛々することによって事故を誘発するかもしれないといった心理的逆効果についての検証や考慮が不十分のようだ。



さらに、交通の流れがよくなれば燃費も改善される。停車したときにアイドリングストップをすればいいと日本では考えるのかもしれないが、クルマの燃費は停止からの発進でもっとも悪化する。たとえ徐行するほどの低速でも、クルマが動いているうちに再発進できれば燃費の悪化を抑えられるのである。



緑色なのになぜ青信号と呼ぶのか



交通の流れを重視する欧州でも、交差点の赤信号で停車した際、最前列であるため真上の信号が見にくい場所では、運転者に近い歩道の支柱に小型の縦信号を補足的に設置し、運転席から必ず信号を確認できるようにしたり、米国では道幅が広いため鉄線で信号機を吊るし、車線ごとに信号を確認できるようにしたりするなど、信号の見落としを防ぐ対応がなされている。



信号機一つをとっても、日本はまだ欧米を見習う点があるようだ。

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