商用車は空荷状態だと足がとても硬いのが特徴
高速道路で遭遇する意外と速いクルマ。その代表的な存在が商用車だ。とくにトヨタのハイエースやプロボックス、日産のNV系など、商用車のど定番モデルが高速道路をカッ飛ばすシーンを遭遇するのは珍しいことではない。
流石に、荷物を目一杯満載にした状態では走行車線をゆっくり走っている場合が多いが、空荷かそれに近い状態の商用車は、気持ちよく飛ばしているのをよく見かける。商用車が速い理由はどこにあるのか。
実際に運転してみると、商用車は空荷状態だと足がとても硬く感じられる。大量の荷物を積むなど大きな荷重がかかることを前提としているので、基本的にスプリングはかなり硬めだ。ハイエースではリヤサスに板バネを採用するなど、乗用車とはかなり異なるサスペンションセッティングがなされている場合が多い。

そのため、空荷状態の商用車はガタピシ系の突っ張った硬さが強調され、運転フィールとしては決して気持ちの良いものではないものの、単純に足の硬さによるキビキビ感は得られる。
また、商用車はタイヤも硬い。高荷重耐性や耐摩耗性を重視し、高強度のベルトやケース材料を採用。幅は細めで扁平率は高めのサイズとなるので、硬いわりにはエアボリュームが多く、粘り強いグリップ感を発揮する傾向が強いのだ。

足まわりもタイヤも、スポーツモデルのような限界の高さこそないが、運転慣れしたドライバーにとっては、意外と攻められるシャシーセッティングになっている側面がある。

安全装備が追加された最新モデルでも1100kg台と車重が軽い
さらに、商用車は車重がとても軽い。耐久性を高めるための補強はなされているものの、乗員のためのコンフォート性は軽視されているので室内装備は大幅に簡素化されている。

そして、パワートレインも特徴的。エンジンはピークパワーこそ低いものの、低速トルク重視型。さらにミッションのギヤ比は基本ローギヤードなので、軽い車重と相まって、空荷では活発な加速性能を発揮できるというわけである。

さらに言えば、商用車のドライバーは基本的に時間に追われていることが多いという事情も、高速道路をカッ飛ばす傾向が強まっているようだ。
2002年にデビュー直後のプロボックス(Fエクストラパッケージ/FF/5MT)を新車で購入し、18年間で約84万kmを走破。今もなお乗りつづけているカメラマンの古閑章郎氏によると、商用車は車重の軽さに加え、メカニズム的にシンプルであることが長年にわたり速めのペースで巡航できるポイントだと語る。空力特性はあまり良くないので、速度が高まるとフロント部分のリフト感が強まり、高速域での安定性が高いとは言えない状況に陥るも、ある程度荷物を積んでいれば荷重によりリヤの安定性は確保されるので、危険を感じさせる挙動にはならないのも美点だという。

タイヤ幅は細いので限界は低い反面、限界に近づきつつある状況でも極端なアンダー/オーバーステアは顔を出さないという。徹頭徹尾安定志向が破綻しないことも、長く乗り続けられるポイントになっているようだ。

ちなみに古閑氏のプロボックスは、サスペンションはTRD製に交換したものの、基本的にはノーマル状態。
年間の走行距離が極端に多く(年間4万km以上)、1台の車に長く乗り続けたい人は商用車をプライベートカーに選ぶのも悪くない。