オート化で部品点数が増加しても2タイプ作成するより安価
クルマの自動化は年々進んでいる。それは自動運転テクノロジー関連だけではない。空調では設定温度をしておけば、風量などを自動的に制御するオートエアコンはいまや当たり前の装備として、軽自動車でも標準装備されていることは珍しくない。
オートエアコンには液晶タイプの操作パネルや温度センサーが必要だ。つまり、マニュアルエアコンのほうがコスト的には有利なのは間違いない。ただし、必ずしもマニュアルエアコンを用意することがローコスト化につながるかといえば、そうとは限らない。
クルマというのはさまざまなグレードがあり、また国内仕様・輸出仕様とバリエーションは豊富だ。そしてバリエーションがたくさんあるということは生産ラインにおいて作り分ける手間がかかるということになる。多少部品を安くするよりも、全車で仕様を統一して共通部品を増やしたほうが生産性という意味ではローコストになる。つまり、最廉価グレードのためだけにマニュアルエアコンのパネルや電装系を用意するくらいであれば、全車オートエアコンで統一したほうがトータルでは安くなるといえるのだ。

ただし、エアコンパネルというのは意外に同一メーカーでは共有していることが多い。車種ごとの設定だけではなく、グローバルな仕様も含めて考えるとマニュアルエアコンとオートエアコンの両方を設定することが生産性において問題ないこともある。そういうケースであれば、マニュアルエアコンは低価格につながる要素として有効だ。
レバータイプや足踏み式の駐車ブレーキも少数派になるだろう
さて、かつての廉価モデルといえば、「クルクルウインドウ」や「ハンドパワーウインドウ」と呼ばれる、「レギュレーターハンドル」を使い手動によってサイドウインドウを上げ下げするタイプが主流だった。

エアコンで触れたのと同様、どちらのタイプも用意するとなると、ドアの内装材などのデザインを2パターン用意しないといけなくなる。さらにいえば、内部パーツについても別設計となる。軽量化のために全車でレギュレーターハンドルタイプとするならまだしも、両方用意するのはコストアップ要因になってしまうのだ。
というわけで、「クルクルウインドウ」はもはや見たことがないというドライバーのほうが多いのでは? といえるほど珍しい装備となっている。ロータスのモデルのような超軽量を目指すスポーツカーでは生き残っていることもあるが、通常の乗用車でローコストのために選ぶということはほとんど考えにくい状況だ。
同様に、近い将来見なくなるであろうと思われるのが、ハンドレバーで操作するパーキングブレーキだ。パーキングブレーキのかけ忘れやリリース忘れを防いでくれるEPB(電動パーキングブレーキ)は、いまや軽自動車でも標準装備されているモデルが増えてきた。

先進運転支援システムとの相性を考えても、EPBは必須といえる機能であり、標準装備化が進むことが予想されている。そうなったとき、廉価グレードにハンドレバーやフットペダルを使うパーキングブレーキを用意することは、設計や生産性からコストアップ要因となると考えられるからだ。

後輪の荷重を抜いた状態で、ハンドレバーでパーキングブレーキをかけて一気に向きを変える「サイドターン」は、スポーツドライビングのテクニックとして知られている。
