他メーカーは異なる名称で差別化することが多い
トヨタの新型クロスオーバーSUV「ヤリスクロス」が注目を集めている。選ばれたメディアやユーチューバーがヤリスクロス(プロトタイプ)の試乗レポートを一気に公開するといったPR戦略も、そうした注目度アップにつながっているが、なによりヤリスという評判のいいコンパクトカーのSUVバージョンということが注目される理由となっているのだろう。
その意味では、ヤリスクロスと名付け「ヤリス・ファミリー」であることを強調するという戦略は今のところ功を奏している。
とはいえ、BセグメントのクロスオーバーSUV市場を眺めてみると、他社はコンパクトカーとクロスオーバーSUVのプラットフォームやアーキテクチャが共通だとしても、異なる名称として差別化していることが多い。ホンダはコンパクトカーに「フィット」と、SUVには「ヴェゼル」と名付けた。日産にしてもコンパクトカーは「ノート」で、SUVは「キックス」としている。パワートレインなどを見ると関連性があるのは明らかだが、ベーシックなコンパクトカーに対して付加価値商品であるSUVを別の名前とするのは価格帯の違いなどから当然の判断といえる。
キックスのベースグレードであるXのメーカー希望小売価格は275万9900円。一方、ノートで同等パワートレインを積むe-POWER Xグレードの価格は205万9200円。同じファミリーとしてブランディングすると、どうしてもSUVの価格高が目立ってしまう。ならば、同じセグメントであっても異なる名称として別のブランディングをしたほうが得策といえるからだ。
しかし、違う見方もできる。冒頭でも書いたようにヤリスという車種の認知度が高ければ、新機種として名前を浸透させるよりもブランディングとしては有利に働く。実際、そうした戦略をとるブランドがないわけではない。たとえばBMW MINIはMINIという単一ブランドのもとにハッチバックからクロスオーバーSUV、ステーションワゴンまでを展開していたりするのだ。
意外にも同一車種名にすることで個性を強められる!
また、同一車種名で展開するメリットは、逆に個性を強められるところにある。まったく異なる車名で、同じセグメントのモデルをラインアップすると、どうしても間口を広くしがちだが、同一車名の中のバリエーションというキャラ立てをすれば、それぞれを特化させることが容易だ。
たとえば、ヤリスでいえば、ヤリスはベーシックなコンパクトカー、GRヤリスはWRC直系のスポーツカー、そしてヤリスクロスはコンパクトなSUVといった風に分けられるが、キャラクターと名前がリンクしているのでわかりやすい。もしヤリスクロスを別の名前にするとSUVであるということから認知させなければならないが、「ヤリス」という名前に「クロス」とつけたことで、クロスオーバーSUVなのだなぁと想像しやすくなる。
さらに、これはトヨタの社内的な都合といもいえるが、「ヤリス」ファミリーとして同じ開発チームが担当することのメリットも大きい。最初から同一プラットフォームでコンパクトカーとクロスオーバーSUVとスポーツカーを作るとわかっていれば、開発リソースの最適化もできるし、それぞれの車種がカバーする範囲やターゲットを明確にしやすい。
一般論だが、同じプラットフォームやアーキテクチャでも別チームで開発すると、自分の作っているクルマで結果を出したいばかりに、社内の同一セグメントのモデルをライバル視して情報共有ができなかったり、ターゲットユーザーがかぶってしまい結果的に市場の共食いをしてしまったりすることもある。ヤリス・ファミリーとして開発すれば、そうしたネガを解消することが期待できるというわけだ。
同じことはトヨタの主力モデル「カローラ」でもいえる。カローラという名前でセダン、ステーションワゴン、ハッチバック、クロスオーバーSUVと展開しているのは、強いブランド力を最大限に活用すること、開発リソースを最適化することを考えれば、メリットしかないといえる。
そもそもカローラ・ファミリーとしてのグローバル販売は150万台規模となっている。これはマツダのグローバル販売を超えるレベルだ。

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