幅広いユーザー層に受け入れられやすいオシャレな内外装

日産独自のパワートレインとして注目されている「e-POWER」を搭載する初のコンパクトクラス(Sクラス)SUVとしてKICKS(キックス)は登場した。ホンダ・ヴェゼルやトヨタC-HRなどのハイブリッド勢をターゲットに、どんな走りと実用性を実現しているのか。さっそく試乗リポートしよう。



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キックスはじつは2016年にブラジルで発売を開始し、メキシコや中東地域、中国などの新興国マーケットを主に投入され実績を築いてきたモデルだ。アジア向けは主にタイの工場で生産される。今回、e-POWERをタイ工場でも生産できるようになり、世界に先駆けて日本に投入されることになったという。



【試乗】日産キックスは走りも実用性も十分! 進化したe-POWERのゆとりが生むクラスを超えた動力性能



つまり日本向けもタイ工場で生産され、輸入販売されるという生い立ちだ。SクラスSUV市場は世界的に超激戦クラスとなりつつあり、国内のSUVマーケットの伸びも大きく後押ししているという。



実車を前にすると、ヴェゼルはC-HRよりはひとまわり小さい印象を受ける。感覚的にはトヨタのライズやダイハツ・ロッキークラスかと思わされたが、寸法数値を見比べるとホンダ・ヴェゼルにもっとも近いようだ。



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大きなラジエターグリルが新生日産のアイデンティティを映し出し、SUVモデルらしい逞しさも象徴しているようだ。ポップでお洒落なツートーンカラーなど13の外装色をラインアップし幅広いユーザー層に訴求する魅力的なエクステリアを備えているといえそうだ。



室内はこれまたツートーンのお洒落なデザインで、ステッチ加工付きのソフトパッドで覆われたダッシュボード、9インチの見やすく操作性のよいタッチパネルモニターなどがすっきりと収められている。ルームミラーはデジタルルームミラーが採用され、ステアリングホイールには見慣れたプロパイロットのスイッチが配置されている。



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センターコンソールは細めでe-POWERのシフターは従来のトヨタ・ハイブリッド車のような電気式。

トヨタが物理レバー方式へと切り替えているのと相反し、電気的な操作性へのこだわりが表れている。



スタート/ストップボタンを押すと起動し、エンジンが始動する。バッテリーの充電状況にかかわらずコールドスタートではまずエンジンが始動するので、早朝にEVとして静かにお出かけしたい状況には向かない。しかもエンジン始動はアイドリングではなく最大効率の2000~2400回転で回ってしまうので、車外はそこそこに騒がしくなってしまう。



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e-POWERはエンジンを発電機としてしか使用しないため、稼働時は最大効率で回転してしまう。アクセル開度で回転数を調整することはできないのでエンジンは常に全開で発電用ジュネレーターの不可を受けて最大効率で回す。そのため3気筒特有のエンジン振動も発する。



今回、ノートe-POWERよりエンジン回転を若干低めに設定し、またエンジンマウントの改良を行うことで防振性は高まっているので室内は静かで快適なのだ。また遮音材を多く採用し、ロードノイズ以外の音と振動を可能な限り遮断するよう務めた。その効果は大きく走り出せばEV車的な静かさが得られている。



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SクラスSUVとは思えぬ動力性能が魅力

またノートe-POWERは常に充電を優先する制御だったが、キックスでは35km/h以下の低速走行時には可能な限りエンジンを始動させない制御に改められ、バッテリーの能力を最大限使うプログラムが採用された。市街地走行では多くの場面をEVモードで走行できることになる。

ドライビングモードスイッチにはEVモードという項目はないが、エンジンが停止しているケースをEVモードと定義して走行している。



デフォルトの標準モードからドライビングモード選択スイッチを切り替えてECO(エコ)、S(スマート)の2モードを選択できる。両モードともブレーキ回生が強まりワンペダル走行が可能となる。慣れないうちは標準モードで走行し、ワンペダルになれたらドライビングモードを選択するとよりe-POWERの能力を発揮できるわけだ。



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さらにチャージモード&マナーモードを備える。チャージモードは文字どおりエンジンを始動してバッテリーを常に充電しながら走行するモードで、マナーモードはなるべくエンジンの始動を抑える市街地走行モードとして区別している。これらはデフォルトモードでは作動せず、ドライブモードのECOかSを選択しておく必要があった。



さて走行フィールだが、ノートe-POWER同様に走り始めから力強いトルクが発揮され、Sクラスとは思えない動力性能が魅力だ。ノートe-POWERに比べ、バッテリーの出力制御とエンジンの出力アップで最大トルクは2%、50~100km/hの領域で19%出力アップし、高速道路の追い越し加速など高速走行性能が高まった。



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またタイヤサイズが205/55R17へと拡幅されるなどノートe-POWERから大きく強化された。それに伴いサスペンションは、アーム類を強化しウレタン製ブッシュを採用するなど走りの質感を大幅に高めている。走らせてみれば確かにヴェゼルやC-HRがライバルなのだなと実感できる。



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足もとの広い後席やゆとりあるラゲッジスペースの広さなど実用性も高いことがわかった。



今後はさらに本格的なSUV性能を求めて4WDモデルの追加も見当しているという。その時は現行ノートe-POWERのような発進アシスト用ではなく本格的な4WDシステムを目指すというので楽しみだ。



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